第13話 停電
『The itsy-bitsy spider climbed up the water spout』
図書館のデータスペースで来場者記録を確認していたら、突然の停電。そしてスピーカーからノイズが鳴ったかと思えば、今度は謎の音楽が流れ始めたのだった。
陽気すぎる音楽と、真っ暗な図書館。このアンバランスさが、なんかかえって怖い。もう早く家帰りたい。
でもこの謎音楽のおかげで喧嘩しそうになってた2人の頭が覚めたけど…
『Down came the rain and washed the……』
なんだ…この…なんなんだろう……とても陽気な音楽。
「何これ?」
「……さあ……」
「誰かの悪戯? にしては…よくわかんない悪戯ね」
「……電気が突然消えたことと関係ありそうね、放送室が誰かに乗っ取られたとか……」
「それ大事件じゃん、図書館占拠するなんて前代未聞だよ」
「どこの誰がこんな図書館に占拠して子供向け童謡流すのよ、やるなら…こう銀行とか役所とかじゃないの」
「……外の世界の人間の発想は違うわね……」
「それどう言う意味」
ラフェットさんの視線が、暗闇の奥を測るみたいに動いた。
「……死なない相手に、脅しは成立しないわ、そこが貴方と違う所ね……」
「だったら望み通りに…」
「やめなって2人とも、テロリストじゃないにしても異常事態なのには変わらないよ、早いところこんな事をした人を見つけないと」
「それよりも出る事が先じゃないの」
「え?でも私達以外にも人がいるかもだし…」
「いたとしても、こんな音楽流す奴が人に危害加えるとは思えないわ、やるなら銃とか使ってるだろうし、使ってもこの街の住人なんて死なないじゃない」
「確かに」
よくよく考えたらこの街でテロって意味ないのか、そもそも本当にテロってわけじゃないし、ただの子供のいたずらの可能性もあるしね。
「いや、でも…こんな迷惑行為してる人をほったらかしにできないよ、早くとっ捕まえて怒らないと」
「なんで捕まえる必要があるのよ」
「……放っておいて帰ったほうがいい……」
「……なんで2人してそんななの」
「そりゃ…私達警察でもヒーローでもないし、わざわざとっ捕まえる意味なんてどこにもないわ」
「……それに関しては同意ね……」
え、これ私がおかしいの。
「とりあえず、早いところ図書館から出ましょう、こんな謎歌ずっと聴いてたら頭おかしくなりそう」
「………………」
「何ラフェット」
「……何も言ってないじゃない、それとも言うべきかしら、元々頭おかしいって……」
「あぁ?」
「はいもう2人共、ステイステイ」
また喧嘩が始まりそうな2人を引き剥がし、懐中電灯とかなり大きめのペロペロキャンディーを作ると2人の口に放り込む。
「とりあえず落ち着いて、そのキャンディ舐めてて」
バリ
「舐めろよ!! 2人して噛み砕かないでよ、大人しく舐めててよもう。まず誰も犯人探しに興味無いみたいだしみんなで図書館から出よう」
「あのね、興味無いとかじゃ無いの、意味がないの」
「……私は出ないわよ……」
「意味がないって酷いこと言うなぁ…とりあえずここを出て…」
「……出ないわよ……」
「にしてもその懐中電灯そんなに明るくないわね」
「とりあえずで作った奴だからね、少し待って3つ作るから」
「……ここから出るつもりはないわ……」
「とりあえず地下室出たら渡すから照らしながら……ってえ? ラフェットさん今なんて」
「……私はこの地下室から出るつもりはないわよ……」
「………」
「………」
「…………………」
「え?何で」
「バカなの」
「……理由は色々よ、これはただの停電の可能性があるし………」
た、だの停電?
「あんた…この街で停電なんて一度も起こったことないって言ってたでしょ、それに…」
『And the itsy-bitsy spider climbed……』
「ただの停電でこんな音楽流れると思う」
「……もう一つは……」
言い返さないんだ。
「……貴方と一緒に行動したくないからよ……」
それが1番の理由じゃん。と言うか色々言っといて2つだけなんだ。
「あっそ、ならここに居たら私達は出るから」
「……勝手にしなさい……」
「え?ちょっと2人とも」
「もういい、行くよライリー」
猿渡さんは私の手を強く握り階段の方に足を向ける。
「待って待って猿渡さん、一旦待って。ラフェットさん一緒に出ようよ」
「……行かないし、そこのが謝るまで一緒に行く気はない……」
「はぁー気い悪いわ、ほんまこのちんちくりん、もう出てってやるわほんま」
「猿渡さんも落ち着いてよ、2人とも落ち着いて謝っ…」
「「……私は悪くない……」」
ほんまこいつら。なんでこうなるんや。
「そもそも、そこのちんちくりんが 私の叔父さんを侮辱した」
「……真実の確証もしないままあちこち連れ回した挙句、親のいない私達の前で親がいない事を侮辱した……」
「先はあんたでしょ…」
「……私は事実を羅列しただけよ、別に私は親がいないとかどうでもいいけど、ライリーの前で普通その話する……」
「いや、私はそんなに気にしてないよ」
「……私が気にするの、そもそも手伝ってもらっておいて何その態度、気に食わないの……」
「態度に関しては謝るけど、他のに関しては謝る気は一切ない」
「……なら私もないわ、そもそも子供相手に大人気ないのよ、私達まだ小学生よ……」
「学校ないから小学生もクソもないよラフェットさん」
「……大人気ないとは思わないの……」
「私はまだ学生で大人じゃない」
「……年齢差考えなさいや……」
「知らんがなクソガキ」
「……黙っとれやデカブツ……」
何なんだ…この2人……
停電より、暗闇より今はこの2人が1番怖いよ
「もういい加減にしてよ2人共」
「一緒くたにしないで」
「……そうね、こんなのと一緒にされたくないわね……」
「一緒だよもう」
「「……どこか……」」
はぁ…。もうやだ、この2人と一緒にいると寿命が縮む気がする、もう死んでるから寿命とかないけど。
『The itsy-bitsy spider……』
「もうこのよくわからん曲3周目だよ、後何周まで喧嘩してるつもり」
「………」
「…………………」
2人は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら互いに睨み合う。
「ラフェットさんここを動くつもりはないんだよね」
「……ないわ……」
「わかった、とりあえず私と猿渡さんでブレーカーがある(多分)事務所に行って電気つけてくるから」
「え?なんでわざわざ事務所に行かないと…」
「い く の!!」
「わかったよ」
「電気をつけたら私達図書館出て行くから、落ち着いたらここから動いてね」
「……わかったわ……」
念の為に懐中電灯と拳銃を作ってラフェットさんに手渡す。
「物騒なもん渡すわね」
「え?一般的なサイレンサーの拳銃だよ、マルチミサイルの方が良かった?」
「うわ、忘れてたこの街の治安終わってたんだ」
「……なんでサイレンサーなの……」
「いきなり銃声聞こえたら私がびっくりするから、とりあえずもう行くから頭冷やしてて」
「……冷やすのはそこのでか……」
「もういいから、頭冷やして!!」
これ以上2人が喧嘩しないよう、手を握って急いで猿渡さんとラフェットさんを引き剥がす。




