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第10話 墓地

 私の家から遠くとーく離れた山の中、そこには地平線が見えそうなほど、果てしなく広がる墓地があった。


 私達3人はその墓地の大体中央ぐらいの場所に集まっていた。


 昼間まで爆睡していた猿渡さんは今だに眠そうに目をこすり、ラフェットさんが呆れた表情を浮かべながらそれを見つめる。


「眠い」


「………うるさいわねさっきから、夜更かしなんてしてるからよ………」


「してないって」


「………まったく、この私がわざわざ付き合ってあげてるっていうのにあくびだなんて、一体何時に寝たのよ………」


「猿渡さんはそこまで遅くて寝ないよ、私と一緒にお風呂に入ってすぐに寝たし…寝たの9時ぐらいかな」


「……よくて寝てるじゃないの……いや、待ちなさいライリー、今…一緒にお風呂って………」


「うん、一緒に入ったよ」


「……なんで出会って1日も経ってないじゃない……」


「だって猿渡さん1週間以上お風呂入ってないんだよ、流石にそんな人が使ったベッド永遠に使いたくないじゃん」


「……彼女が汚らしいのは認めますが……」


「おいこら待て汚らしいってなんだ汚らしいって」


「……これと お風呂を 一緒に 入ったの……」


「うん、一緒に入って髪洗いっこしたもんね」


「やめて恥ずかしい」


 猿渡さんはわかりやすく顔をあからませ目を逸らす。


「えー恥ずかしいの」


「………待って…ライリーと同じお風呂、しかもスベスベの髪に触れて同じシャンプー使って、同じ湯に入ったの………」


 猿渡さんにも可愛いとこはあるんだな、と思っていると、元々細い突然ラフェットさんの目が細くなる。


 隙間からのぞく瞳が、まるで毒を含んだ蛇みたいに鋭く、そんな表情を浮かべながら猿渡さんにジリジリとにじり寄る。


「な、なによ…その顔…」


「………いいや…別に、入ったんだ ライリーと……ふーん…………」


「え?ラフェットさんも一緒に入る」


「………え?いいのほんと、本気で…いくらで………」


「別にお金なんて取らないって」


 ラフェットさんが無言でガッツポーズをした、そんなにお風呂入るの好きなのかな。


「何なのよこの子」


 そんな騒がしいやりとりの中、ふと猿渡さんが周囲を見回す。


「それよりなんで墓なの、と言うか何で死者の街で墓?」


「………私の提案よ、気に入らなかった………」


「別にそうじゃないって、ただ…なんで死者の街に墓があるのか気になっただけよ、だって貴方達幽霊でしょ、幽霊の街なのに墓は変じゃない?」


「そうかな、ゲゲゲの鬼太郎とかナイトメアー・ビフォア・クリスマスとかの街にも墓なかった?」


「た、確かに言われてみれば…そうだけどさ」


「………言ったでしょ、魂には限界があるのよ、死の先は何もない、こうやって消滅の限界を迎えた魂の名をここに刻んでいるのよ…………」


 そう言いながらしゃがんで目の前の墓に手を合わせる。


「なるほどね、で…なんで墓に来てんの、両親を探すの手伝ってくれるんじゃないの」


「………探してないってことは消滅してる可能性があるからよ、消滅していたら必ずこの墓に刻まれる…………」


「消滅してたら会うことはできないけど、消滅してるのを知らないで探し続けるよりはいいよねって事」


 ラフェットさんと同じようにしゃがみ墓の前で手を合わせる、墓には神城 凛と書かれている、誰かは知らないけど、お悔やみ申すナンマイダブツ


「まぁ…そうね、無駄に探し回るよりはいいわね、会えないなら仕方ないで納得するわ」


「………どんなものにも限界はあるものよ、限界に挑んでも訪れるものは虚無感よ………」


「そうね……で、なんで墓全部ゴシック体なの」


 そう言いながら猿渡さんは墓の文字を指差す、別に文字に変なところはない、ちゃんとしたゴシック体で書かれてる。


 うん…いつも通りだね。


「何か変?」


「いやいやいや 何か変?じゃなくて、なんでお墓の文字がゴシック体なのよ、手抜きの漫画じゃないんだからさ」


「………」


「…………………」


「なんか言いなさいよ、2人揃って黙り込んで」


「いや…墓って…普通ゴシック体でしょ」


「そんなわけないでしょ、こう言うのは一個一個彫って…」


「……… 彫り師がいなかったんでしょ………」


「彫り師って…」


 猿渡さんはジト目にして墓をジロジロ見つめる。


「うわ、これよく見たらこれ彫られてない、ペンキみたいなので名前塗装されてる」


「そうそう、そういう機械があるんだっけ、確か…えーっと名前忘れちゃったけど」


「なんか…こう……極めてなにか生命に対する侮辱を感じるんだけど」


「………別にここには生命も何も存在しないわ、みんな死んでるのだから………」


 ラフェットちゃんはゆっくりと立ち上がると近くの看板まで歩いて行く。


「で、こんな中からどうやって探すのこれ…軽く10000個は超えてるわよね、一つ一つ調べてたら1週間ぐらいかかるんじゃないの」


「えーっと…地上で15000個だっけな」


「ずいぶんキリのいい数字ね……待って今地上って言った」


「うん、地下のも合わせたら5万があると思うよ」


「5万!てか待って地下もあるの?」


「うん」


 さっきから一体何をそんな慌ててるんだろう、普通のこと話してるだけなのに。


「いや、「そんな普通のことなのに」みたいな顔すんじゃないわよ」


「て…言われても」


「そもそもどうやって地下に行くのよ、階段なんてぱっと見無かったわよ」


「………行かないわよ………」


「なら地下の墓はなんなのよ」


「………このパネルで呼び出すの………」


「は?」


 ラフェットさんがそう言いながらパネルを操作していると目の前の墓が地下に収納され、別の墓が地下から現れる。


「…て、てくのーろじあ」


「どうしたのいきなり」


「何この…倫理観ガチで終わってるやつ、なんか色々ヤバくないこれ、大丈夫なの」


「なにが?」


「いや何がじゃなくて、こんなトライガーG7みたいな昔のロボット出撃シーンみたく墓が出てきたらダメでしょ、墓だよ墓」


「………うるさいわね、私達に文句言わないでちょうだい、そう言うものなんだからそう言うもんだと納得しなさいよ…………」


「いや…って言われても」


 首を傾げる猿渡さんを横目にラフェットちゃんがパネルを操作して名前を入力する。


「………あれ、おかしいな…うーん……もう一度………あれ?…………」


「どうしたの」


「………名前を入力しても出てこないわね………」


「そう言うことは消滅してないって事?」


「………その可能性が高いわね、貴方の親はまだ街にいるわ…はぁ………」


「ちょっと何ため息ついてんのよ」


「……ここで終わってれば後はライリーと………」


「何する気なのよ」


「どうしよう、お墓にないなら手の内ようないね、遊園地行く?」


「………え?遊園地行きたい行きたい………」


「待ちなさい、本当にもう手の内ようがないの」


「うーん…あと市役所に行くぐらい?」


「………バレたらこの街の住人ね、けど…まぁ…まだ手のうちようはあるわ…………」


「え?なんかあんの」


「……図書館の地下よ。施設の地下には来場記録をまとめるデータスペースがあるの……」


「そのデータに私の両親の情報があるかもって事」


「……ええ、博物館にも同じやつがあるけど、来場記録にはご両親の名前はなかった……図書館に来場してるかどうかわからないけど、確認する価値はあると思うわ………」


「全然知らなかった、そんなのあるの。映画館とかの施設もあるのかな」


「……あるらいしわね……」


「らしい?」


「……映画館は記憶を保管してるから、図書館と違って警備が厳重なの……」


 映画館は一般公開するかしないか選べるけど、それとは関係なく前住人の記憶が保管されているから厳重なのかな。


「それなら図書館に行くしかないね、でも図書館の来場者記録なんて見ていいの? 怒られない?」


「……一般公開されてるから大丈夫よ、それに図書館のデータスペースはこれと言って何もないから………」


「なら今から行く」


「そうね、天野が居なければいいけど」


「……どなた?……」


「昨日猿渡さんが喧嘩した人、まぁとりあえず図書館に向かおうか」

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