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第7話 フードコート

 その少女はバケツをそっと地面に置くと、彩香さんに向かって小さくお辞儀をした。


「………どうも。本日はイベントなどありませんが……ごゆっくり、お楽しみくださいませ………」


「おはようラフェットさん」


 私が両手を振ると、ラフェットさんはいつも通り静かに微笑み、片手だけ小さく上げて応えた。


「この子があんたの言ってた、今日会う予定だった人」


「うん、この博物館の管理人さんのラフェットさん」


「管理人?こんなに…若いのに」


「……管理人というのは少々大袈裟ね、客はほぼ居ないし、業務は機械がしてくれる、私がすることはほぼないわ………」


「そ、そんなんだ。それよりさっき言ってたのって本当」


「……さっきと言うのは……」


「死の先がうんぬんかんぬん」


「………死んだ先がこの場所よ、死の先は何もないわ………」


「輪廻転生とかじゃないの」


「………かもしれないわね、正直な所誰もわかってないのよ死を超えた先に何があるのか………」


 猿渡さんは顔を顰めながら顔を近づけ耳元で呟いてきた。


「ねえ、この子本当にあんたの友達?」


「そうですよ、友達の中の友達です」


「あまり貴方とソリが合わなそうに見えるけど」


「………かもしれないわね、でも私とライリーには共通点があるの、記憶がないという共通点が………」


「記憶がない?」


「そう私とラフェットさんは死ぬ前の記憶がないんだ、だからほら苗字もないでしょ」


「なに?記憶喪失の人は苗字がないの?」


「………ええ、無いわよ私は興味がないからどうでもいいけど、それよりその女誰………」


 ラフェットさんはじりじりと私に近づき、猿渡さんをまっすぐ見つめ蛇みたいに睨みつける。


「………1人で来るって言ってたのに…なんで知らない女がいるの………」


「この人は猿渡さんご両親を探してるんだけど…なんでさっきから睨むの?」


「………別に、何も、そう言えばライリーあなた猫女と遊んでから来る予定だったらしいじゃ無い、私は貴方からしたら第2の女か何か………」


「その顔怖いよ、もう少し笑ってよ」


「………なら私が何番目の女か教えてよ………」


「その番号ってなに?友達になった順番ならラフェットさんが1番目だよ。それより猿渡さんの両親を探してるんだけど知らない?えーっと名前なんだっけ」


「十野 と知鶴だけど知らない」


「そうそうご両親を探してこの町まで来たんだって」


「………バカなの、両親を探すためにわざわざ死んだの………」


「私は死んでないわ、歩いてここまで来たの」


「………歩いて死者の街まで来るなんて驚きね、いろいろ話を聞かせてもらってもいい………」


 ラフェットさんの表情が暗いものから明るいものに変わった、なんで怒ってたかわからないけど機嫌治ってよかった。


「そこまで話すこともないわよ」


「………別に辿り着くまでの話だけじゃなくても、今の現世の話とか聞かせて、私ライリー一筋で外の話が全く入ってこないの………」


「一筋って私以外の友達を作ろうとしないだけでしょ、今度友達紹介するよ」


「………遠慮するわ、それより食堂で話さない興味が湧いてきたわ………」


「そう言えばお昼ご飯食べてないわね」


「なら一緒に食べよっか」


 グゥゥゥウ と、コレクソーがタイミングを見計らったように大きな腹の音を鳴らし、ヨダレをだらだら垂らす。


「コレクソーもお腹すいたって」


「………さっきもらったでしょ、そこで大人しくしてなさい………」


 まるで子犬の様な目を浮かべるもラフェットさんには効かず、私達の手を握ってフードコートへと向かう。


 フードコートは博物館の展示にちなんだ料理の他にも様々な国の料理が楽しめる、かなりの広さだけど誰も居ない。


「……なんか人がいきなり消えたみたい、全然いないすっからかん」


「………誰も興味ないのよ博物館なんて…………」


 椅子に座ると机をトントンと叩き、空間転写型ディスプレイを出すとメニュー表を操作する。


「…………」


「何にしようかな…あれ?猿渡さんは選ばないの」


「なんか、次から次へととんでも技術が出てくるわね、万博余裕で超えてるな」


「………その万博ってなに?…………」


「やるって決まったばかりだからあまり知らないわよ、人工島で開かれる…老人どもしか興味のないイベント?」


「なんか変な言い方してない」


「どうせ次のオリンピックみたいに裏金とかで盛り上がらないんだろうし、正直そんなに興味ないのよね」


「でも人工島なんて聞いたことないし、凄い楽しそう行ってみたいなぁ」


 どんな感じなんだろう、人工的に作った島…友達が言ってたハワイみたいな感じなのかな、まぁ…でもここにいる限りは人工島にもハワイにも行けないかな。


 どのみちこの街から出ることはできないし、気分だけでもハワイ気分にしよう。


「ハワイっぽい料理…ハワイぽい料理」


「なんでハワイ?」


「………外の話は他にはないの………」


「他って言われても…ああ、フリーサイズって言う70歳を超えるヒーローが居るんだけど、その人の誕生日パーティが凄くてさ」


「ヒーローなんているんですね」


「能力を悪用する奴は多い、この街にもいるでしょう。なんだかんがでヒーローも結構死んでるし」


「見たことないかも」


「うそ、この間死んでたよ。えーっと…誰だっけゴブ…ゴブ……ゴブリン………」


「………この街じゃヒーローなんて必要ないし、わざわざヒーローとして活動する必要もないわ………」


 そう言いながら超デカ盛りパフェを注文し、猿渡さんは戸惑いながらもラーメンとチャーハンと唐揚げを注文する。

 

 とりあえず…ハワイぽい食べ物を探してるけど、そもそもハワイってどう言うところなんだろう、よくわからないけど多分カレーとかがハワイだよね。


「…なんでカレー?ハワイぽいカレーかと思ったらバチバチにインドカレーだし」


「これハワイじゃないの」


「インドって書いてあるでしょインドって」


「インドって何?」


「……あんた、現世の記憶がないと言うか純粋に頭が悪いわね」


「………貴方の話を聞いてると少し暗い話題が多いけど、現実の世界じゃ、何かテロとか事件とかあったの………」


「テロって言うほどの事件はないけど、なんか最近は人間消失事件みたいなのがよくテレビ出てるかな」


《おもちしました〜》


 配膳ロボットが頼んだ料理を運んできて机に並べる。


「は、はや…しかもちゃんと注文通りだし、どうなってんのこれ」


「いただきまーす」


「………その事件ってどんなのなの…………」


「都市伝説みたいな物よ、目の前にいた人間が突然消えて服と泡だけが残るって事件」


「何それ怖」


「まぁただの都市伝説よ、ネットで調べたら映像とかも出てくるけど、なんか嘘くさいのよね」


「………でも楽しそうじゃない、ここじゃそう言うのあっても楽しめないから………」


「だよね、人が消えるなんてことあってもこの街じゃそこまでインパクトないし、幽霊が出る!!なんて話も聞くけど私達が幽霊だしね」


「え?幽霊が出るの」


「目の前にいるじゃん」


「そうだけどさ」


「………幽霊を見たなんて単なる幻覚よ、自分達が幽霊なのに幽霊を見るわけがないじゃない………」


「だよね」


「………そう言えばご両親を探してるらしいわね、ご両親はどう言う人………」


「私が物心着く前に死んだの、写真は残ってるけど…この目で見たいし感謝を伝えたいの」


「………あてはあるの………」


「それが…今のところ外れてるんだよね、はあああ…映画館にもないし図書館にもなかったし、これ以上どこ探せばいいのやら」


「………なら、私も手伝ってもいいけど………」


「いいの、あんたここの管理人じゃないの」


「………どうせ誰もこないし、いいわよ明日から手伝ってあげる………」


「ラフェットさんが手伝ってくれるなら心強いよ、明日からなら…この先どうする、とりあえず博物館巡る」


「私は貴方に任せるわ、右も左もわからないし」


「………なら、久しぶりに管理人として案内するわね………」

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