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至上の無名光術師の苦難  作者: 八指犬
8/18

8章 雨季の終わりに

余計な情報を排除する為に殊更場面転換を明示する事は致しません。会話の間の表現を重視し、詰まりの無い会話はそれに応じて発言が連続します。発話者が分かりにくい事も多々ありますがご容赦下さい。その代わりに「」の鍵括弧を一纏めとして同一人物の発話が描写を挟まずに連続する事はほぼ排除しております。

また、多少前後している事もありますが描写は時間順となっております。


1節 足音


「メシャ?大丈夫か?」

 「うん、でもかなり近づいてると思う」

 「心配だね」

 「何言ってるの?ユッミルは嫌かもしれないけど私は嬉しいよ」

 「僕も嬉しくない訳じゃないけどネメッカと違って僕に男としての魅力が無いと知ってるのに自分から襲うメシャの気持ちが分からないから困惑してるだけだからね」

 「ユッミルは優しいよ」

 「うん、でもそれは同居人としてなんだ。メシャーナを女性として熱心に口説く男が出てきたらきっと太刀打ちできない。そんな日の事を考えるとメシャとそういう関係にはなれない。ネメッカは大人だしこういう男でも我慢できるしお互いそれなりに信頼もあると思ってる。成り行きでできた信頼だけどね。特にメシャは若いからいずれついていけなくなる」

 「ユッミル、何故メシャちゃんにだけ私を呼び捨てなのですか?」

 「そうですね、あなたに追い回された時は本当に立腹していましたのでネメッカと呼んでいました。その流れですね」

 「なるほど、ネメッカと呼ばれたい気持ちが少し揺らぎましたがそれでもお願いします」

 「ネメッカ、用は特に無いのですが」

 「私の体に戻らないのですか?」

 「そうですね。妻は立てなければなりませんね」

 「そういう事にしておきます」

 「ですけど十分に寝たらメシャの傍に付きますからね。別にネメッカやテーファに飽きた訳ではないですから。寝ますよ」

 ユッミルは素早く眠りにつく。ユッミルは早めに起きるとメシャの横に添い寝する。しばらくするとメシャーナはユッミルに気付き手を取る。

 「そろそろお腹すいた」

 ユッミルは朝食を用意しようと立つ。

 「ユッミル、私達がしますから」

 テーファとネメッカが朝食を用意していく。メシャーナは起きるが非常に短い距離ながら足取りは重い。ユッミルは立ったり、座ったりさせない方が良いか迷ったがメシャーナはもう席についてしまう。

 「ユッミル、少ししんどいから膝に乗せて食べさせて」

 メシャーナは肩をユッミルに預けてかなり上向きでユッミルに食事を口に運んでもらうがその量も少なく短時間で寝床に戻る。ユッミルは心配だったがあまりにも朝食が残っていたので食べに戻る。ネメッカとユッミルやテーファにシウやミーハやソヨッハが代わる代わる見守るが変化は無い。ただ、メシャーナは昼食を食べない事にした。昼過ぎ、ソヨッハが傍にいる時にメシャーナは再び苦しそうにする。

 「ユッミル、もう来ますから布団は除けて下さい」

 ユッミルは布団を捲る。メシャーナは腰が少し浮いている。ユッミルは腰を支えようとする。

 「ユッミル、大丈夫。そこに居てくれればいい」

 ユッミルはメシャーナの足元に陣取って様子を伺う。しばらくするとメシャーナの苦しそうな表情から想起された苦戦は無く新しい女の子はユッミルの肩を弱弱しく蹴飛ばし、ユッミルの頬に声のついでに唾を飛ばす。ネメッカが緩く布を巻く。その後、ユッミルは何も考えずにメシャーナの胸元にその女児を丁寧に置く。

 「良かった。ところでユッミルのその目線は乳を吸ってる赤子が羨ましいんですか?それなら私のは自由ですよ。早くしないとあの乳の様に赤子に取られますよ」

 「ネメッカ様、確かにそれは魅力的ですが私は弱そうに見えてきちんと歯があります。ネメッカ様の大事な体に歯は立てられません」

 「確かに噛まれたら困りますが歯を立てずに吸う事は可能でしょう」

 「それはそうですが何かの拍子に体勢が崩れれば歯も食いしばってしまいます。ですからできません」

 「でしたらベッドに寝ている私に抱きながら密着して顔を私の体に沈めて吸えばいい」

 「あの、そんなに吸われたいのですか?」

 「ええ、ユッミルを虜にする事に大きく貢献すると思ってますよ」

 「分かりました、そこまで言われてそうした魅力的な提案は断りません」

 「でしたらお風呂に入りませんか?」

 「良いですよ」

 ユッミルとネメッカは赤子に興味を持つソヨッハにミーハやフェノを中心とした女子達をよそにさっさと風呂を沸かす。

 「行きますね」

 「はい。ユッミルは良い子ですね」

 「もう片方も」

 「ええ。ん、ユッミル」

 ユッミルはネメッカを抱く。

 「ちょっと、そこで何してるの?私の心配をしてよね?」

 「メシャ、元気そうで良かったよ。ネメッカ様、どうですか?」

 「やはり赤子と同じでは無いですね」

 「当たり前です」

 「やはりユッミルでないと駄目ですね」

 ネメッカはユッミルを抱く。

 「この後はどうするんですか?」

 テーファの問いかけでユッミルとネメッカはようやく冷静になる。示し合わせて風呂から上がって服を着ると二人は赤子に笑いかける。

 「ネメッカ様、どうする予定なのですか?」

 「こちらの都合は色々ありますが基本的にはユッミルの意思を尊重しますよ」

 「メシャはどうしたい?」

 「ユッミルが決めてくれて良いけどもう少し待って欲しいかな」

 「待て。メシャーナとその子を引き離す気は無いよ。ネメッカは見込みが甘い。塔にいる方が余計な噂が流れやすい。」

 「ただ、確定的な話には発展しませんけど私との婚約前の子供の噂は流れてしまいそうですね」

 「まあ現実ですからそれ自体を全面的に隠すのは中々」

 「ほう。ユッミル、この事を流されたくなければ私を襲うとよい」

 「は?いい加減にして下さい」

 「いい加減にするのは君の方だ。目の前で他の女と次々と。まるで私が醜い女みたいではないか」

 「構いません、好きに吹聴すればいい」

 「申し訳無い。怒らないでくれ、性的なお仕置きをしてくれて構わないから許してくれ。だが手を出されないのは嬉しくない」

 「あの、先程は虜になってるネメッカ様に誘惑されましたが初めて子供を授かった上に女性も十人近いのです」

 「虜という割には直接的な触れ合いを繰り返し断られてますけどね」

 「今回は即決したじゃないですか」

 「そうですが断られる回数も多い」

 「とにかく話の腰を折らないで下さい」

 「心配しなくても言い分は理解した。納得はしていないし不満は言い連ねるだろうが数日は我慢しよう」

 ユッミルはとりあえず娘の世話をシウ達に依存しない様に娘に好かれようと近づいていく。

 「ユッミル、抱きたいの?お父さんが来たよ」

 「そうだね。僕も面倒を見るよ」

 しばらくすると赤子は泣き始める。

 「やはり僕では駄目なのか…」

 「ユッミル、来て。私と一緒なら安心するかも」

 「そうか」

 ユッミルは赤子を抱えてメシャーナの隣に腰を据える。

 「ユッミル、私が率先して甘えればこの子も甘えられると思うし良い?」

 「そうだな」

 メシャーナは赤子に乳を吸わせながらユッミルにもたれかかる。赤子が眠そうにするとメシャーナはユッミルに引き渡す。赤子は安らかに眠る。赤子をそっと布団に移す。

 「フェノさん、この子を見てて下さい。何かあれば放音でお願いします。メシャちゃんとユッミルは話したい事がありますから赤子を起こさないよう来て下さい」

 「ネメッカ様、どうしました?」

 「その子の面倒は私達も手伝いますよ」

 「それはありがたいですがうまく行くかは分かりません」

 「ただ、普段はいれません。かと言ってメシャちゃんがずっとというのも望ましいとは言えない。他の子達も全く手伝いたく無い訳では無いでしょう」

 「ええまあそうかもしれませんが」

 「私はともかく他の方の責務に含まれます」

 「形上はそうですね」

 「という訳でユッミルも積極的にお願いするんですよ」

 「そうね、私もいずれ産むからお互い様。異論は無いわ」

 「シウさん?」

 「えっと、意味が分からない?」

 「いえ、お願いします」

 ネメッカはこうした事態に備えていた様で赤子用の食事を用意していく。

 「ユッミル君、この子の名前はどうするの?」

 「僕が付けるのか」

 「うん」

 ユッミルはしばらく考え込む。

 「シウという名前でも良いのよ」

 「それは絶対にしません。それならまだソヨッハにします。考えているので横から口を挟まないで下さい」

 「えっと、二人の名前から合わせてユッミーナとかはどうでしょう」

 「ソヨッハ、ありがとう。それにはしないけど名前から取るのは良い考えだね」

 ユッミルはさらに考える。

 「うん、シャーユにしよう。メシャはどう思う?」

 「まあユッミルは女の子でも不自然ではないと思うからユーミラとかでも良いと思うけど」

 「でも女の子だしメシャに近い名前が良いと思うよ」

 「そうだね。シャーユにしよう」

 「けどシャーユって呼び掛けて泣き出されたら変えた方が良いか」

 「ユッミルさん、心配し過ぎですよ」

 しばらくして乳児食を抱えたネメッカがやってくる。

「ユッミル、その子を起こしてくれる?」

 「シャーユ、起きようか」

 シャーユは薄ら目を開ける。ユッミルは抱きかかえる。

 「シャーユ、お腹すいてない?」

 「ん?」

 シャーユは短い声を出している。

 「まあよく分からないけど食べよっか」

 「ヨー、カー?」

 「ん?シャーユ?」

 「ヤー?」

 ユッミルはとりあえずネメッカに渡された食事を口の前に運ぶ。シャーユはある程度食べると口を開けなくなる。

 「じゃあお母さんの所で寝よっか」

 「やはり色々先を越されて恨めしいですね」

 「ネメッカ様、ありがとうございます」

 ユッミルはメシャーナにシャーユを預ける。

 「ユッミル、シャーユちゃんが羨ましいです」

 「えっと、メシャじゃなくて?」

 「それはそうですが来たのは私が後なので仕方ないです」

 「えっと食事を食べさせればいいんですか?ネメッカ様が膝に乗って甘えてくれるのは嬉しいので全然構いませんよ」

 「それはそれでお願いしますがそれよりもユッミル、私に名前を下さい」

 「いえ、ネメッカ様はネメッカ様ですよ」

 「本当はネメッカが呼びにくいなら改名したい所ですが対外的にまずいので愛称が欲しいです。様とか言う敬称は無しでお願いします」

 「えっと、ネメッカは十分短いので愛称を付けるのは難しいですね。ネメですかね?ですけど僕はネメッカ様と呼んでしまうでしょうから無用な期待をさせたくないのでお断りします」

 「ユッミル、ネーちゃんでも良いですよ」

 「いえ、ネメッカ様と呼んでる相手に短い言い方を提案しても無駄だと思いますよ」

 「ユッミル、頑固ですね」

 「いえ、癖というものは中々抜けません。せっかくネメッカ様が良い妻として敬意を持てる振る舞いをして頂いているのですからどうしてもネメッカ様と呼んでしまうだけですから距離を感じている訳では無いのですよ。」

 「分かりましたよ、そういう事にしておきます」

 ユッミルがネメッカやテーファと触れ合っていると傍ではシャーユが泣き始める。ユッミルはシャーユの様子を気にする。

 「テーファ、ユッミルはこの程度だと魅力が無い様です。今回はあなたに譲りますからもっと引き寄せて構いませんよ」

 「はい、ネメッカ様」

 テーファはユッミルを抱き寄せる。

 「テーファさん、ネメッカも見捨てないで」

 「ユッミル君、ネメッカ様は後でだよ」

 「テーファさん、こんな事をしなくてもあなたが魅力的なのは十分分かってますから」

 「そうですか?その割には手を後ろについて抱き返してくれないのですね?がっかりです」

 ユッミルはテーファを抱く。しばらくしてユッミルは我慢し切れなくなりそうになる。

 「ちょっとシャーユの様子を見てきます」

 ユッミルはメシャーナとシャーユの方に逃げていく。シャーユはユッミルに手を伸ばしたのでユッミルはシャーユをしばらく抱く。

 「あらっ。まさかあなた達が負けちゃうなんてね。子供は凄いわね。けど体としてはあなた達の方が魅力的。とはいえユッミルは今は体に関しては満腹じゃないかしら?一度引いた方が良いと思うわよ?」

 「そうしたいのはやまやまですがそれだと小腹が空いた途端にあなたに取られるだけです」

 「そうかもね。でもそれにしてももう少し待った方が良い気がするけど」

 「まあそれはそうですね」

 翌朝、ネメッカは小雨だったが塔に戻っていく。

 「ユッミル君、ネメッカ様がいなくなったから私しかないと思うよ」

 「あの、隣に居てくれるだけで十分ですから」

 ユッミルはやはりシャーユを気に掛けている。

 「ユッミル君、やっぱりシャーユちゃんの方が可愛いの?」

 「どちらの方がとかは無いですけどシャーユの面倒はできる限り、メシャと僕で見た方が良いかなと」

 「ああ、そういう事か。でも私は雨が止んだら帰るからそれまで位私の面倒を見て欲しいかな」

 「じゃあけどもう止んでませんか?」

 「そうだとしてももう少し居たら駄目なの?」

 「いえ、大丈夫ですよ」

 テーファはユッミルを抱きしめて満足した様子で帰っていく。

 「ユッミル様、テーファもネメッカもいなくなったから遂に売れ残りのシウの出番よね?」

 「たまには私で良いんじゃないか、ユッミルよ」

 「フーニャさん、学びませんね。自分から名乗り出るのをやめたらどうですか?」

 「売れないのに宣伝をやめたら店なら潰れる。そんな馬鹿はしない」

 「客の言い分を無視する店はもっと潰れると思いますが?」

 「おかしな客の言い分を聞く店もどうかと思うが?」

 「ではおかしくない客がいるんですか?」

 「くっ。降参だ。好きに襲うと良い」

 「しませんよ。寝てて下さい」

 「私がいつまでも気を変えないと思ったら大間違いだぞ」

 「で、私とはしないの?」

 「お互いにその気が無いのですから可能性は零です」

 「そうね、私の事を理解してくれているのは嬉しいわ」

 「ただ、少し疲れたので迷惑を承知で膝を貸してもらえますか?」

 「良いわよ」

 ユッミルはシウの膝に頭を乗せる。

 「ありがとうございました、これ以上は迷惑なので昼の用意をしますね」

 ユッミルはソヨッハと昼食を用意する。

 「ユッミル、椅子を少し引いて」

 「まさか」

 メシャーナは子供を抱いたままユッミルの膝に陣取る。メシャーナは片手で子供を抱いてもう一方でユッミルを抱く。ユッミルは驚きつつもメシャーナが揺れる様子も無いので文句を付けられず自分も食べながら二人の口に食事を運んでいく。

 「ユッミル、まだ眠そうだよね?三人で寝ようよ」

 「メシャ、眠そうな相手の膝の上で子供をあやすのはやめてくれ」

 「ユッミルに子供の面倒を見れない子供と思われたくないからしっかりするよ」

 ユッミルは昼食を食べるとメシャーナの提案通りに三人並んで昼寝を始める。ユッミルはぐっすり夕方まで寝てしまう。目を覚ますといつの間にかネメッカとリュッサにロコッサもいる。

 「塔の部屋はフェノさんに任せてきましたよ」

 「ロコッサ、久々だね」

 「はい、子供が生まれておめでとうございます。メシャちゃん、良かったね」

 「うん」

 「本当に良かったですし三人仲良く寝てる姿は羨ましい位です」

 「ネメッカ様、もう少し待てばそうなりますしあなたの場合、私を小指の先で動かせば数人の子供は作らせられますし」

 「だと良いですがまあそれは良いですから夕食はもうできますよ」

 ユッミルは夕食を食べていく。

 「明日は午後から指揮所ですけどネメッカ様はこちらですか?」

 「ええ」

 「私は塔に行きますけどね」

 「それはお誘いですか?」

 「いえ、朝には家に戻ります。イーサさんに私からも報告するだけですから。そもそもこれからお相手頂くのに連夜は控えたいですし」

 「そうですか、そうですよね、指揮所で疲れた日よりも今日が良いですよね」

 翌朝、ユッミルの上には小さい何かが乗っている。ユッミルがとりあえず目を開けるとそこにはシャーユがいて隣にはメシャーナがいる。

 「メシャ、シャーユをこういう風に扱ったら駄目だろ」

 シャーユはユッミルの上に被さっている。

 「嫌がっては無いよ」

 「僕が寝返りを打ったらどうする?」

 「ネメッカか私がシャーユに蹴られるだけでシャーユは怪我しないよ」

 「分かった。起きるからシャーユを宜しく」

 ユッミルは服を着る。

 「メシャちゃん、娘という強力な武器を使って私の邪魔をするんですね。ですがユッミルはいずれ正常化して塔に通う様に戻ります。下手に期待する様な事はやめた方が良いですよ」

 「それはそうだけど」

 「ネメッカ、そういう事は」

 「そうだよね。ネメッカ、悪かったね」

 「えっと、その、そういうつもりではなくて」

 「ネメッカ、もう良いから。朝食を食べよう」

 「ユッミル、優しく手を取ってくれてますが嬉しくありません」

 「ネメッカ、やってしまったわね?」

 「シウさん、ネメッカ様も悪気は無かったのですから。それにそういう事を言ってるとあなたにも憂鬱がやってくるかもしれませんよ」

 「それは困るわね。そうなったらユッミルに襲わせて解消しようかしら?」

 「シウさんには安心しますね」

 ユッミルはネメッカやリュッサと早めの昼をとって指揮所に向かう。

 「ああ、そう言えば次は光だったわね。よろしくユッミルさん」

 「シーリュノ様、ご苦労様です」

 「あらっ。一応、側室なのだから他人行儀の言い草はやめて下さいね」

 「ご冗談を」

 「まああなたがそういうならそうしますけど。ではまた」

 幹部はイーナと火の女性であった。特に目立った会話も無く無事に過ぎるとユッミルはさっさと塔に向かう。塔に着くとユッミルは遅めの夕食を取ろうとするが食堂は既に稼働を終えていた。そもそも食堂の運営は団がしているのでイーサは今回はユッミルに配慮しなかった訳だ。

 ユッミルが宿舎や主宰部屋のある上層階に上がろうとすると数人の女性団員が待っている。

 「ユッミルさん、指揮所でしたよね?夕食をお作りしましょうか?お礼は一緒に宿舎で寝てくれるだけで良いですよ」

 「寝ないと夕食は無いのですか?まあイーサさんに頼んで食材だけ使わせてもらえないか交渉ですかね」

 「冗談ですよ。私達は専業ではないので少し不出来かもしれませんが食べて行って下さい」

 少し待つと夕食が配膳され、作っていた子達も卓に着く。普段と違ってメニューは選べなかったがユッミルが選びそうな内容を押さえてあり、普段から食事を共にする機会の多いイーサの差し金をユッミルに確信させた。夕食を終えると宿舎前で女性達と別れ、イーサにシャーユの報告をして主宰部屋に行く。イーサが隣の部屋に居て下の階には口先ではユッミルと寝たいと言う女性が何人かはいる。とは言え主宰部屋は一人だ。結婚式後は横に常に女性がいたのでかなり久々でくつろいでいる。翌朝、イーサと朝食を食べながら軽く話すと家に帰る事にする。まあ予定通りだが迷いは無かった。何故ならもたもたしていると主宰部屋にはミヨーナがやってくる。家にいるシウやネメッカよりユッミル的には厄介な存在だ。家に戻るとロコッサがいなくなっただけで後の女性は残っている。

 「あの、今から森の状況を偵察に行くのでミーハは同行願えますか?」

 「それは良いわよ。でもあの子は良いの?」

 「永遠に付きっきりという訳には行きませんよ。それに今はネメッカ様がいますし」

 「つまり、今回もユッミルと森で一緒は無いんですね」

 「はい。シウさんも来ますか?きちんと守りますし狩りはしないので術はそこまで不要です」

 「そうね、行きましょうかね」

 「ソヨッハは?」

 「もちろん、行きますよ」

 「では行きますか」

 「待て。私を置いていくな」

 「えっと、外に出たくないのでは?」

 「何を勘違いしている?君と外で行動するのが嫌なのにこんな立場に志願する訳がないだろう。そこの氷の小娘と一緒にするな。外で術を撃つのはむしろ好きな方だし君の術を近くで拝める機会を逃す手は無い」

 「そうですか、でしたらお願いします」

 ユッミルは四人の女性術師を連れて森に向かう。シウを連れている事もあって目立っている。ただ、森に向かう冒険者は疎らなので森の入り口に近づくと人は減る。人の減り具合で事前に分かってはいたが地面はそれなりにぬかるんでいる。

 「これでは土の術は使えないぞ。ユッミルに襲われても抵抗できない。獣の危険から身を守るにはユッミルの言う事に従うしかない」

 「フーニャさん、あなた方の武器は金属でしょう」

 「そうだね。でも獣もいないし何も無い所に撃つのは虚しい」

 「分かりましたよ。ですがこの五人なら問題は無いのでゆっくり少し奥に向かいますよ」

 ユッミル達は少し奥に進む。泥濘は幾分ましな場所もあるが獣はいない。

 「フーニャさん、あれ落とせます?」

 「鳥を落とすのは割に合わないから趣味ではないが君の願いとあらばやるだけやってみよう」

 フーニャは弱弱しく大きめの金属片を上に投げ上げる。その後、金属片はフーニャの術で急加速して鳥に向かっていく。途中で鳥は気づくが金属片は途中で曲がり、鳥は背を貫かれ地に落ちていく。

 「ミーハ、水分をちょっと抜いてくれない?」

 「仕方ないわね」

 「シウさん、火の術を撃ったら泥は乾いたりしませんかね?」

 「その代わり、森が燃えるけど」

 「そこはミーハが消火するのでご心配なく、それに元々じめじめしているので延焼の心配も少ないかと」

 「まあ一度見てもらう方が良さそうね」

ユッミルは前方にそれなりの魔力の集積を感じる。次の瞬間、地面に分かりやすい焦げ跡が付き、木は表面が焼け落ちる。

 「フーニャ、表面の土を前面側方に打ち出してくれ」

 「そうだな」

 表層の土はえぐれて少し熱い地面をさっさと歩く

 「シウさん、力を落とせないんですか?」

 「可能だけど狙いが定まらないのよね」

 「えっ」

 シウが術を使うと前方に火炎が飛んでいくが五個の火炎は辛うじて前方だが斜めや上に飛んだものばかりで確かにこれをもう数度繰り返せば雨季以外は森林火災を引き起こしそうな感じであった。ミーハはさっさと消火し、吸水していき、最終的にはソヨッハの持ってきた植物が吸水して程なく鳥の墜落現場に辿り着く。ユッミルは鳥を切り落とし、鳥の羽を剥いでいく。

 「はあ、困った」

 「ユッミル、別に羽が片方傷ついていようが狩りはついでだしね」

 「違います。そこのふざけた事ばかり言ってるフーニャさんが術師としては優秀と認めざる得ないのですから困惑ですよ。はあネメッカ様を変な人なんて少しでも思った事を反省しないと。帰りますよ、流石にこの状況で長居は良くないです」

 ユッミル達は森から出る。

 「ユッミル殿、これで私の有用性が理解できたようだな。観念してご機嫌を取りたまえ。そうすれば狩りも捗るぞ」

 「フーニャさん、曲駆は何度変えて仕留めますか?」

 「基本は三度や四度だな。今回は確かに出来過ぎた」

 「はい、でしょうね。それは私が鳥の動きを攪乱しましたので。そういう訳でしてあなたの術は優秀ですが普通の土術師がいれば鳥は狩れますよ」

 「なっ。またぬか喜びさせてもてあそぶのか。本当に性格が悪いな」

 「まさか、そもそもあなたが下らない企みを仄めかすからですよ。それにあなたの能力に用が無いとは言っていない」

 「ほう。話を聞こうではないか」

 「はい、うちのメシャに術を教えて欲しい」

 「構わないと言いたいが術を教えたら用済みという事ではないだろうね?」

 「本当はそうしたい気もありますがそのつもりはないですよ。ですがフーニャさんは信用しない。という訳で例の件を受ける事にしました。ただ、メシャの訓練はシャーユが落ち着くまで無理なのでしばらくはフーニャさんを本気で追い出す事はしないので安心して下さい」

 「まあ良いよ」

 ユッミル達は帰宅すると昼食を取る。

 「ネメッカ様、どうも全員と夜遊びするのは避けれそうに無い。氷の子は当面大丈夫ですが」

 「分かっていますよ。ユッホさんとの事以外は怒っていません」

 「ユッホさんにはネメッカ様程では無いですが魅力を感じているのは否定しきれない事です。もし不満ならば」

 「ユッミル、怒っているのは未報告だったからですよ」

 「いえ、私も記憶が曖昧な上にユッホ様が私を誘ったというのが夢と区別し切れなかったので夢と思い込もうとしてしまったのです」

 「ええ、怒ってはいますがもう罰は済みましたから。それに私にはユッミルしかいないのでその程度では別れられませんよ」

 「本当に申し訳ないです」

 「ユッミルよ、何だその奥ゆかしい態度は」

 「私には随分不遜ではないか」

 「そうですか、何度も言いますが不満なら塔に帰って頂いて結構ですよ。あなたをここに留め置くのは非常に迷惑かもしれませんし」

 「なっ」

 「フーニャさんが気持ち良く居れるように努力はしますが限界はあるのでその場合はお帰り頂く方が良いかと。まあ仕方ないですよね。相性というものはどうしてもあります」

 「良いのか、教えてやれなくなるぞ」

 「そうですね。ですけどフーニャさんが気分の悪いままご滞在頂くのは心苦しいので不快であれば遠慮なく塔にお帰り下さい」

 「私の意見を聞いて改善しようと言う気は無いのか?」

 「いえ、可能な限り聞きますよ」

 「では今夜、一緒に寝たいと言ったら?」

 「構いませんが今夜だとこちらは疲れている上にまだフーニャ様の好みを解していないので退屈なお相手しかできないのでフーニャさんは不満を抱えるので帰ってしまう気がするのですが」

 「ほう。良いだろう。しばらく待とう。期待しているぞ」

 ユッミルは昼食後はネメッカとシャーユの面倒を見ている。シャーユはようやくネメッカにも慣れてきている。メシャーナはソヨッハと散歩に出ている。

 「ネメッカ様、懐かれてますね」

 「まだまだですよ。ユッミル程では無いですけど手強いと思いますよ」

 「あの、僕は初日で懐に入られた気がするんですけど」

 「カエを通して口説いてからは五日以上掛かりましたし結婚を承諾頂くまではどれ程掛かったか」

 「ネメッカ様が僕をはかっていただけでしょう」

 「なんですか、それは?いえ、ユッミルが私を受け入れる気があるかは確かに気にしていました。それで勘違いさせてしまいましたね」

 「まあそういう事にしておきますね。それにしてもシャーユは良い子だね。このお姉さんが大きな声を出しても泣かなくて偉い」

 「ユッミルお兄さん、シャーユとネメッカおばさん、どっちが好き?もちろん、シャーユだよね?」

 「ネメッカ様、答えに困る事は聞かないで下さい」

 「シャーユはシャーユだよ。ネメッカおば様じゃないよ」

 「そうですか、でしたらシャーユちゃんの方が好きだよ。ネメッカ婆さんには内緒ね」

 「シャーユに比べたらネメッカ婆さんは大して可愛くないよね。ユッミルちゃんが面倒を見てあげないと誰も相手にしないよ」

 「それとは関係なくネメッカのお姉さんの面倒は見たいから見るよ。それにあのお姉さんは可愛くは無いけど綺麗だよ」

 「そうなんだ、シャーユには分からない」

 シャーユ本人はユッミルに手を伸ばす。ネメッカはユッミルにシャーユを渡す。

 「ユッミルの番ですよ」

 「いえ、誠に勝手な話ですが同じ質問をしてシャーユに負けたら困りますし何か催促をしているみたいで嫌なのですけど」

 「そうですね、聞くまでも無くユッミルの方が好きですよ」

 「シャーユと比べて勝っても全く嬉しくないのですけど」

 「そうですよね。ユッミルには私を巡る競争相手はいません」

 「強いて言えばイーサさんですか?」

 「何を言ってるんですか。ユッミルに愛を囁きたかっただけなのに分かってませんね」

 「そうですね」

 メシャーナが帰宅するとネメッカは台所に向かう。夕食を終えるとユッミルはネメッカの肩を胸元に抱き寄せる。

 「ユッミル?」

 「今日ばかりはただただ休んで下さい。どうせ止めても早起きするんでしょ?」

 「まあそうですね」

 しばらくするとユッミルはネメッカの服を緩める。

 「お風呂沸かしますね。待ってて下さい」

 ユッミルは風呂が沸くとネメッカの服を脱がせていく。ユッミルはネメッカを終始後ろから抱き留めて体を拭く事も含めて面倒を見てそのまま添い寝する。翌朝、さっさと朝食を済ませたネメッカは穏やかに眠るシャーユを見守って塔に戻る。ユッミルも遅れて塔に向かい、イーサからいくつか報告を受けていると昼の時間になる。イーサと食堂に向かうと宿舎に良く泊まる数人の他にモヌーユとサッネハがいる。

「ユッミルさん、ネメッカ様居ないし隣良いよね?」

 サッネハが隣にその隣にモヌーユが座って並んで昼を食べる。

 「えっと、今の時期は誰にも教えて無いの?」

 「イーサさん、予定は無いですよね?」

 「ええ、年少者への教育はかなりやってくれましたので」

 「でしたら少し奥がどんな所か知りたいです。行くにしても行かないにしても知りたいです。ユッミルさんは光の団員が減ったら困るでしょうから危ない所を教えて下さい」

 「えっと、サッネハも知ってると思うけど僕は今、いくつかの団の優秀な術師と組んでて昨日も土術師の人が変だけど優秀だと分かったばかりで他にもシウさんもいて強い人と行くし僕も君らを危険に合わせたくないから早めに対処するから危険性は分かりにくいよ」

 「そうですね。けど行ってみたいです。雰囲気だけでも知っておきたい」

 「分かった。モヌーユも行くの?」

 「良いの?守ってもらう事になるけど」

 「それは構わないよ」

 「じゃあ行く」

 「ただ、二人以上いなくなったらモヌーユは連れていけない。まあフェノ次第でもあるけど」

 

 

 

 

 


 2節 半端な泥濘


 ユッミルは昼前に塔を引き上げて帰宅し、昼食を用意する。

 「明日また行こうかと思うけど来れる?それとネメッカ様も今日は流石に塔へ帰ってお休み下さい」

 「ユッミル、それは私を追い出そうと言う意味?」

 「疲れてますからここにいるとどうしてもシャーユを気に掛けてしまいますよね?」

 「ですが明日は狩りに行くのでしょう?人手は不足します。」

 「それはそうですね。イーサさんもそう言うとは思いますがリュッサさんにお願いしてロコッサも一応帰ってもらいましょう」

 「そうしますが私は疲れてはいませんよ」

 「まあ感じてからでは遅いですから」

 「けどユッミル、まだ地面はぬかるんでると思うけど」

 「そうね。それにまた雨が降らないとも限らないし」

 「シウは行きたくないのか?」

 「そうね。泥濘は好きではないわ」

 「甘いな、炎のは。ユッミル殿は我々を泥塗れにして風呂に引き込んでそのまま体で遊ぶ作戦だろう」

 「フーニャさんは本当に好きですね、そういうの。そうですね、明日は少数精鋭で向かいましょう。流石にシウさんは留守番ですね。フーニャとミーハでまた偵察に行く事にしよう」

 夕方、ネメッカは塔に帰っていく。シャーユの子守はいつの間にかシウが手伝っていく。ユッミルは珍しく実質的に一人で寝る。翌日は朝食を終えるとミーハとフーニャと森へ出かける。泥濘は残ってはいるものの状況は改善しており、場所によってはほとんどぬかるんでいない。

 「雨が無ければ明後日辺りにも狩りを再開できそうだな」

 「獣がいればだが」

 「それはいるわよ。まあ雨季と寒季の間の貴重な時期だから動くよ。」

 「しかし、ユッミル殿。どうしてこの二人を?か弱そうな二人を森で同時にという事か。」

 「フーニャさん、そんな事を言ってると置いていきますよ」

 「ユッミル殿、申し訳ない。それだけはおやめ下さい。言う事を聞きますので」

 「であれば危険を察知した時以外は黙って下さい」

 「おい、そこは家に帰ったら遊ぶ約束を取り付ける所だろう」

 「約束しないと遊んでくれない女は嫌かもしれませんね」

 「そうか、なら仕方ないな」

 ユッミル達は昼前に森から出ると出口で別れてユッミルは塔に向かう。ユッミルが昼食後に主宰部屋に戻るとミヨーナがいる。

 「ユッミルさん、こんにちは」

 「はい、こんにちは」

 ユッミルは剣をベッドの脇に置いてベッドに寝転がる。ミヨーナは部屋の中央奥寄りで立っている。

 「ソファーに座ったら?」

 「はい」

 ミヨーナはソファーに腰掛ける。

 ユッミルはしばらくして部屋を出て主導部屋に向かうと無人であった。執務室に向かうとイーサとネメッカがいる。

 「イーサさん、団の状況はどうですか?」

 「特に変わりはありません。魔石の売れ行きは低調ですがこの時期は毎年なので問題はありません」

 「在庫は?」

 「はい、十分ありますね」

 「ならネメッカ様は何を?」

 「確認作業ですね。大した量ではないのでほぼ何もしていません」

 「ごめんなさい、ユッミル。実は私は本当はここが好きなの。まあ見晴らしが良いから。もちろん、ユッミルと寝る方が良いけどユッミルは相手してくれないし」

 「そうですか。今日の夜はこちらに泊まりますので適当にして下さい」

 「ユッミル、それって行って良いと言う事ですか?」

 「一緒に寝るだけですけどね」

 翌朝、ユッミルは帰宅する。

 シウがシャーユを抱いているがよく見ると上半身の服を崩している様だ。

 「ただいま」

 「ユッミル、お帰りなさい」

 「シウさん、何をやっているんですか?」

 「やはり乳は出ないわね」

 「やめて下さい」

 「そうね、ユッミルに脱がせてもらうには着ておかないと」

 昼前、ユッミルの耳に雨音が聞こえてくる。

 「まあそうなりますよね」

 「ああ、雨が降り出したわね」

 「明日には止むだろうけど流石に明日は狩りは中止よね。明日は家を空けると思う。様子見は明後日にしましょう」

 「そうだね」

 「つまり、今日の夜は明日に用事が無い状況で迎えるのか。」

 「いえ、午後からは指揮所ですよ」

 「私を側近として連れて行っては如何かね?私もいよいよ暇になって来たしむしろ歓迎だ」

 「怠慢なオーネさんですらやっているというのにフーニャさんはどうして自分の団の塔に戻らないのですか?」

 「何も報告する事等無いだろう。それとも誘惑しても冷たく断られてると報告すればいいのか?」

 「そうですね、不要ですね」

 「指揮所には?」

 「連れていけませんよ」

 「で、話を戻すが私は待っているから今日の夜辺りは歓迎だぞ」

 「一応、聞き届けましたよ」

 翌日、一度塔に寄ってから昼頃に指揮所に向かうと水と土の幹部がいて主導担当は月のリッネであった。

 「ユッミル、久しぶりだね。調査はそろそろ終えれそうだよ。正式に終わり次第、また機会を設けて話をしよう。もう少し話したいが場所と状況からしてこれで失礼する」

 水の幹部はリッネが立ち去るのを見計らって近づいてくる。

「ユッミル様、例の件でラーハ様がお呼びです。数日以内に水の塔へお越し下さい」

 「そうですね」

 水の幹部も立ち去る。

 「ユッミル様、こんにちは」

 「エコか。まさか幹部枠?」

「いえ、違いますよ。今の幹部枠は火では無いです」

 「何か用事?」

 「いえ、ただシウさんがいるからと言って私達の枠が消えたと思われていないかは心配ですけど」

 「それは大丈夫ですよ」

 「ユッミルさん」

 「キッシャノさんか」

 「はい、今回は月の幹部扱いですよ」

 「珍しいですね」

 「ええ、昨今の月は実力主義なので私では駄目なのですがユッミル様の担当なので構わないとの事です」

 「そうですか、買い被りですが魔族はようやく立て直しかけている程度ですから今回は構わないでしょう」

 「はい、リッネ様からは調査は継続中ながらもう目途がついたのでユッミル様に報告して意見を聞きたいから月の塔に来て欲しいとの事ですね」

 「そうしたいのはやまやまですが前回の出来事もありますので月の塔への来訪に関して月の団員の光の主宰への反発を懸念しているとお伝え下さい。その回答をとりあえず待ちます」

 「分かりました」

 夜、指揮所の任務が終わるとキッシャノは急いで塔に向かう。ちなみに昼以外は指揮所下の草原と指揮所の交代時間が異なるので夜の集会所への道は昼と違って人は疎らである。集会所に向かう道の途中、ユッミルの前にムヒューエが現れる。

 「ユッミルさん、少しお時間良いですか?」

 「えっと夜に塔へ行くと事が大きくなるのでは?」

 「はい、ですからそこにおられます」

 「えっと」

 ユッミルは歪曲視野で路地を見ると確かにラーハの姿がある。

 「そういう事ですので私とユッミル様の姿を消しながら来ていただけますか?」

 「エコさん、ここまでの様ですね」

 「はい、さようなら」

 ユッミルはムヒューエの姿を消させて少し狭い路地に入っていく。

 「ラーハ様、本当にご苦労様ですが良いんですか?」

 「ええ、少し急ぎますから。もう聞いたと思いますがやはりリッネの調査は進展して終えつつあります」

 「その様ですね」

 「という訳でとりあえず水の団が他の調査を担いましてリッネ様の調査は完了させざる得ません。ですのでリッネ様とあなたの接触機会は避けられない」

 「良いのですか?」

 「ええ、ですがあまりに事態が急進行しそうな場合はご報告下さい。夜でしたらムヒューエの家に報告して下さい。それとは別にして泊まってやっても良いのですよ」

 「それは魅力的な提案ですが水ばかりと交流する訳にもいかない事はご理解下さい」

 「ええ、知っているわ。用件は済みましたけど私の事も水の塔の近くまで消して送ってくれないかしら?」

 「ええ、構いませんけど」

 ユッミルはラーハを水の塔の近くのムヒューエの家の近くまで送る。ラーハはそのまま帰っていく。

 「ユッミル様、どうしますか?」

 「確かに今日は用事は無いのですが明日は朝から森に行くので急に家に帰る予定を取りやめてしまうと明日の予定にも悪影響ですので今回はやめておきます」

 ユッミルは家に帰る。

 「ユッミル様」

 「ああ、フェノか」

 「夕食はもう用意できています」

 「そうか、ありがとう」

 「後はネメッカ様からの伝言で夕食を食べ次第、テーファ様の家に行く様にとの事です」

 「えっと、どういう事?」

 「えっと、もうユッミル様が行きたがっている事は伝えた様ですので基本的には行ってほしい様です」

 「誰も止めなかったの?」

 「そうね、一日だけだしね」

 「まあ最近はどっちにしても私の相手はしてくれないし」

 「私は立場が弱いから言える訳もない。逆に遊び相手になれと言う要求も拒めない」

 「でしたら遠慮なく行きますね」

 ユッミルは少し急いで夕食を食べるとシャーユに声掛けをしてからテーファの家に向かう。テーファは待っていた様でユッミルは円滑に出迎えられる。

 「ユッミル君、こんばんは。夕食は食べて来たと聞いているよ。指揮所に詰めてて疲れたよね?風呂が沸いてるから入ってて」

 「そうですか。ありがとう、テーファさん」

 ユッミルは風呂に入る。テーファはしばらくして当然の様に入って斜め後ろに陣取ってゆっくり抱き込む。ユッミルは思わずテーファに体を預ける。

 「テーファさん、そう言えば今日の昼は何をしていたんですか?」

 「今日は家に居ましたよ。月の場合、雨季の前後は塔へは数日に一回が基本なので昨日は休みました」

 「そうですか」

 「ユッミル君は?」

 「午後から指揮所でしたよ」

 「それはネメッカさんから聞いてたね」

 ユッミルはテーファに抱かれているせいか徐々に暑くなっていく。

 「そろそろ上がりますね」

 「そうですね」

 ユッミルは服を着ようとその方向に歩き始める。

 「どこ行くの?ベッドはこっちだよ」

 テーファは全身でユッミルを抱き留める。

 「テーファさん?あの、今日は疲れてますので普通に寝たいかなと」

 「そうなの?でも私はこのまま寝たいかな」

 「えっと、途中で寝てしまうかも」

 「良いよ」

 「けどテーファに少し嫌な感じをさせたくないし」

 「寝かさないよ。けど私も満足したら寝るし」

 「困ったね」

 「まずは今、少し遊んでから考えようよ」

 ユッミルはいつの間にか肩を緩く押されてベッドの前に動かされていく。

 「じゃあ座ろうか」

 「ああ、うん」

 「ネメッカ様、よく分かりませんね。ユッミル様が本気になる可能性があるのにそう平然と夜のお膳立てをするんですね」

 「多少本気でも構いませんよ。重要な事は私を好きでいてもらう事です」

 「甘いと思いますけどね」

 「かもしれませんがそうであれば私の負けです」

 「テーファさん、もう眠いです」

 ユッミルはテーファに覆いかぶさりながら眠っていく。

 ユッミルが目を覚ますとテーファはそのままの位置でユッミルを抱いている。ユッミルは慌てて起きようとするがテーファは離そうとしない。

 「ユッミル君、まだ早いですよ」

 「えっと、ちゃんと寝たんですか?」

 「一度寝ましたよ。ユッミル君が寝てしまったのに起きてても仕方ないですから」

 「昨日はごめんなさい。実はお風呂に入ってる時に熱くなってて体調は崩さなかったですけど少し危なかったので」

 「そっか、ユッミル君と寝れて嬉しかったから気づけなくてごめんね」

 「いえ、少し悪くなりかけただけですから。もう大丈夫ですよ」

 「それは良かったわ」

 「あの、元気になったのでお付き合いいただけますか?」

 「ユッミル君、ユッミル君は誰に頼んでるの?それにそういう丁寧な言い方は本当にそう思ってるか疑いたくなるわね」

 「えっと、テーファ。付き合ってくれ」

 「良いよ。ユッミル君がそうしたいなら」

 ユッミルとテーファはそのまま一頻り触れ合うと服を着た後も密着して朝食の用意に向かう。

 「料理するにはユッミル君を離さないといけないね。けどユッミル君もお腹は空いていそうだし座って待ってて良いよ」

 「いえ、暇なので手伝いますよ。触れ合っていなくてもテーファ様の姿だけでも十分ですよ」

 「あ、それ。ネメッカ様にも言ってるでしょ?」

 テーファは朝食の作業を始める。

 「そんな事は無いですよ。ネメッカ様は隙あらばさっさと抱き込んでしまうのでそういうゆったりとした言葉を言う隙を与えてくれません」

 「そっか、ネメッカさんは遠慮いらないよね」

 「テーファさんも遠慮はいらないですよ」

 「ううん、ユッミル君は本当は遠慮して欲しいよね。ネメッカさんは誘惑するのが上手だからついつい乗せられてるみたいだけど」

 「そうかもしれません。ですからテーファさんには対応も含めて良い時間を過ごさせてもらっていますよ」

 「ありがとう、ユッミル君」

 朝食を終える

 「テーファさん、今日空いてます?」

 「一応、塔に行く予定だけどどうしたの?」

 「森に行こうと思ったのですが仕方ないですね」

 「一緒に行きますよ」

 「塔は大丈夫なのですか?」

 「ええ、大した用事はありません。今の月で私には大した役割は無いですから」

 ユッミルとテーファは家に向かう。ユッミルはミーハやソヨッハに声を掛けると先にテーファと塔に向かう。

 「ユッミル、テーファに嫌な事はされませんでしたか?」

 「ネメッカ様、酷いですよ」

 「冗談ですよ」

 「そうですね。テーファさんのせいでネメッカ様の美しさが霞んだかもしれませんね」

 「ああ、ユッミル。そうやって私の気を引く作戦ですね。そんな事しなくてもユッミルがいれば抱いてしまいます」

 ネメッカは宣言通りユッミルを抱く。

 「冗談ですから。ただ、テーファさんは魅力的ですから惹かれていくのは間違いないでしょうね」

 「ユッミル、私はユッミルが私を好きで信じてくれていれば今はそれで良いですよ」

 「えっと、ごめんなさい。ネメッカ様が気負わない様にしているだけでネメッカ様のその心にもう少しきちんと応じたいとは思っていますよ。ところでサッネハ達は?」

 「そこに居ますよ」

 「ユッミルさん、私達を探しに来たのに結局、ネメッカ目当てなのね」

 「モヌーユ、答えに困る様な事は言わないでね。けどまあ君は可愛いよ。今日から来る土術師は腕は確かなのに大人の癖して君より遥かに軽口なんだ。大袈裟に吹聴する癖もあるから真に受けないでね。本当に優秀でなければ土に一刻も早く追い返したい。幹部でもないから驚かされた」

 「そうなんですか、取りあえず行きましょう」

 「分かったけどサッネハは嫌な思いをするかもしれないから予め謝っておくよ」

 「そんな事を言われても困ります」

 「そうだね」

 ユッミルはいつの間にかついてきたフェノと少女二人にテーファで集会所から森に向かう道でソヨッハやミーハにフーニャと合流する。歩き始めると先頭は意気揚々と歩くモヌーユとそれに続くミーハにサッネハとなってユッミルはソヨッハとテーファに挟まれ、フーニャとフェノはその斜め後ろを歩いていく。

 「フェノ、悪いな。戦闘的には守れるんだがこれだけ元気な子供が多いとテーファと僕だけでは心配だ。まあサッネハやソヨッハは良い子だから大丈夫だが他はな」

 「いえ、ですがモヌーユ以外はそこまででは無いでしょう。実力もあります」

 「そうなんだけどね。というかフーニャさんは大人しいね」

 「そんな事は無い。だがそういう心配は無用だ。君に一生懸命術を使う姿を見せていればその何かの動きが君を誘惑するかもしれないから君の視界からは外れないよ」

 「それはありがたいですね」

 「まあミーハ君はそこまで森で好奇心を発揮する少女でも無いだろう。やはり心配すべきは本物の子供だと思うよ」

 「それは分かっているよ。けど子供達には近くにいるようにお願いしてある」

 「そうか、私にもお願いしても良いのだよ」

 「大人は言う事を聞きませんから無駄なのでしませんよ」

 「まあ良い。さっきも言った様に頼まれなくてもそうする」

 森に着くと泥濘はかなり解消しており、ユッミルが探知範囲を広げると足音も聞こえる。サッネハは周囲を警戒する。歪曲視野を活用している様だ。フーニャは宣言通り何か色々な仕草をしている。ミーハは普通に歩いており、フェノは後ろを警戒しつつも静かに歩いている。ソヨッハはユッミルの様子を伺っている。

 ユッミルが進んでいくものの獣の気配は弱まっていく。少し奥に進むがユッミルが歪曲視野で確認すると獣は逃げている様だ。

 「フーニャさん、あなたの魔力に恐れをなして獣が逃げてますよ」

 「ユッミル殿の方が魔力は強いだろう」

 「両方ですね。普段なら必要に応じて追いかけますが子供達がいるので走れない。誰か二人で獣をここに追い込んでくれないか?いや、もう少し移動してからにするが」

 「一人は私ね。ソヨッハは厳しいと思うわよ」

 「私がやります」

 「フェノか。分かった、丁度いい。フーニャさん、私が手本として援護しますのであまり早く倒さないで下さいね。ソヨッハはフーニャが危なそうなら援護してやって」

 「はい」

 ユッミルは探知範囲を広げて獣を探す。ユッミルの目の前にはソヨッハ、後ろにはテーファ、左右にモヌーユとサッネハがいる。少し前方にはフーニャ、側方にフェノとミーハがいる。

 「あちらの方にいる。右から外に回り込んで僕らの進行方向に誘導してくれ。ミーハは逆側から僕らの正面へ回り込みながら逃げ場を塞いでくれ」

 「ユッミル、一応私の方を見張って危なければ援護してね」

 「そうだね」

 フェノは走り始め、ミーハは小走りしていく。ユッミル達も移動速度を速める。しばらくするとフェノは一人で戻ってくる。

 「逃げられてしまいました、申し訳ない。」

 「だろうね、けど問題は無い。フェノ、来るよ」

 ミーハの声が遠くからする。雷光が軽く走る。

 「外したか。サッネハ、剣を抜きたいんだが」

 「駄目です。術で何とかして下さい」

 「フェノ、接近戦は任せたよ。フーニャさん、あなたも準備してミーハさんを援護して下さい」

 「仕方ないね。とりあえず備えておくよ。ただ、怪我をしたら責任を取って子供を作ってもらうよ」

 「はいはい、そんな事はさせませんよ」

 フェノは剣を光らせて待ち構える。フーニャは走って逃げながらのミーハの術と違って獣を上手く牽制するように打って足止めさせる。その隙にミーハは辛うじてユッミルの元に帰る。

 「ミーハ、珍しいね。優秀な水術師が逃げ帰って」

 「7体だし仕方ないでしょ。まあ一体はあなたの雷撃で速度が遅くなったから実質6体だけど」

 「猪系だね」

 「えっ。猪系獣が6体ですか?」

 サッネハのユッミルの腕を掴む力が強まる。

 「私も援護しますね」

 「はい、お願いします。ミーハもね」

 「分かってるわよ」

相変わらずフーニャは術を撃っているが避けながら近づいてくる。フェノは切り掛かる。

 「はあ、射線に入るなっての」

 「問題は無い」

 「いえ、私の方も問題は無いんですけどね。サッネハ、悪いけどもう少し近づくよ。フーニャさんも距離を少し詰めて下さい。」

 ユッミルの上からの雷撃と横からの曲軌が獣を襲う。フェノは上手く下がりながら切り掛かっていた。しばらくして自然と射線が空いたのでミーハが打ち始めるが獣の一部はフーニャに向かう。

 ユッミルは雷射と強力な光点を打ち込む。獣は一気に混乱して四匹はフェノに切り伏せられ、二匹はミーハの水系術でいよいよ倒れてしまったのでユッミルが気絶させる。四匹はフェノとユッミルによって捌かれ、二匹はソヨッハの治療後に森に帰される。

 「ユッミルさん、ありがとうございました。光点って役に立つんですね」

 「そうだね。けど…」

 「はい、漠然とは分かってましたけど強力な術だとより分かりやすかったです。けどユッミルさん、本当はあの程度なら一人で片づけますよね?」

 「まあそうだね。フーニャさんも不可能ではないと思うけど」

 「そうだな。だが私の場合、先に攻撃を受けるとやられる。だからユッミル殿位の護衛がいないと行かないがね」

 「フェノ、さっきの剣捌きだと単なる剣士だ。光らせるだけが光剣ではない」

「分かってはいますよ。少し私にお教えいただけますか?」

 「それは無理ではないが得意ではない雷装剣は光剣と違って切り伏せに支障は無い。雷装するから獣に深く剣を入れてもそこまで戻すのが遅くならない上に元々深く入れなくても入る。深く入れなくて良いのは光剣も同じだが最後には仕留めないといけない」

 「浅く入れようとすると外してしまうのです」

 「分かった。それはまた考えておく」

 ユッミルはフェノと子供達を連れて塔に戻ろうとする。

 「ユッミルさん、ミーハとお昼食べたい。家に行こうよ」

 「モヌーユ、あそこはもう大人の女性しか行ってはいけないよ」

 「ミーハもそこまで大きくないし土の子もいるでしょ」

 「失礼な。私は子供では無い。体を触って理解すると良い」

 「サッネハは嫌だよね?ユッミルと一緒に寝させられる呪いが掛かるかもしれないよ」

 「呪いなんて信じませんけど」

 「呪いじゃなくてそうさせようとする人が多いかもしれない」

 「構いません。ネメッカに密告しますから」

 「いや、いるよ。分かった、知らないよ」

 ユッミルが大所帯のまま家に帰ると昼食は用意されていた。

 「ユッミル、まさかまた妻を増やす気ですか?」

 「しません、しませんから。この子達が一緒に昼を食べたいそうなので」

 「テーファさん、二人でユッミルを挟んで子供と離しますよ」

 ユッミルは辛うじてメシャーナとシャーユを膝に取り込んでネメッカとテーファに挟まれながら昼食を食べる。その奇妙な光景の傍でミーハとサッネハやフーニャとモヌーユが会話をしている。シウはユッミルの動きが鈍いのを良い事に後ろからからかう。

 「ユッミル、私がこうやっても襲わないなんて私に魅力が無いんですね。でしたら別の女を団に要請すればいいです」

 「本当にそうして良いんですか?」

 「いえ、今日の夜辺りに最後の機会を下さいますか?」

 「あの、シウさん。フーニャの真似は程々に願います」

 「たまにはこういうのも良いでしょ?」

 「良くないです。それにこの二人には逆らえませんからそちらの許可を取る方が賢明ですよ」

 「それは諦めろと言う意味ね。けど気が変わったらいつでも私の寝床に来なさい」

 「分かりました」

 「ユッミル、子供の前でそういう話は駄目ですよ」

 「ネメッカ様、それを言うなら子供の前で食事中にこうした触れ合いも駄目だと思いますよ」

 「シャーユちゃんは男とか女とか関係無く人同士が仲良くしているとしか思わないですから大丈夫ですよ」

 「食事中は駄目でしょう」

 「分かりましたけどシャーユちゃんとメシャーナちゃん以外の子供の肩より下に触ったらユッミルを縛って二人で襲いますからね」

 「それだと罰になりませんね。テーファ様と遊べるのですから」

 「でしたら罰では無くしますか?」

 「いえ、それはやめておきます」

 「そういう事ですね」

 「心配しなくても触りませんよ」

 「ユッミルさん、皿を寄せてくれませんか?」

 モヌーユはユッミルの手を取る。

 「ユッミルさん、罰ですね」

 「ネメッカ様?」

 「いえ、手は問題ありません。子供を連れ出すのに手を繋ぐのは有効ですから」

 モヌーユは服を緩めてユッミルの手を腹に引き込む。

 「ユッミル?」

 「モヌーユがやっただけですよ」

 「えー、ユッミルも大人しく引き込まれたし今も自分で撫でてるよね。私は側室じゃないから駄目だよ」

 「ユッミル、罰が必要ですね」

 「フェノ、とりあえずモヌを引き剥がして」

 「はい」

 ユッミルはようやくモヌーユから解放され手を戻すが今度はネメッカに掴まれる。

 「ユッミル、逃げませんでしたね」

 「逃げれなかっただけですよ」

 「駄目な言い訳ですね」

 「つまり、信じないんですね?」

 「子供のいたずらを甘く見たと思いますね。直前で約束したのに」

 「テーファさんはどう思います?」

 「私はユッミル君がこの場で私の体で少し遊べば許すと思う」

 ユッミルはテーファの体に手を伸ばして軽く触っていく。

 「ユッミル君、やっぱり子供の体だと物足りないよね?」

 「テーファ、そうだけどそういう事は言ったら駄目だよ」

 「ユッミルさん、それはどういう意味ですか?」

 「サッネハ、君は僕に好かれても困るだろう。落ち着け。」

 「ユッミル、まさかとは思うけど私も含んでない?最近、すっかり無いけど」

 「ユッミル、私は?」

 「メシャ、子供は子供を産めないし後にして。ミーハもだよ」

 「やっぱり私とモヌーユの事ですよね?」

 「サッネハはミーハよりは大人かもしれないけどミーハは仕事だからね。わざわざ嫌な仕事をやっているだけ」

 「ユッミル、それは聞き捨てならないわね」

 「シウ様は私が頼んでもいないので先程お誘い頂きましたからシウ様は含まないのは理解していますよ」

 「なら良いわ」

 「ユッミルさん、私はどうなんですか?」

 「えっと、可愛い女の子だね」

 「ユッミル、やっぱり」

 「ネメッカ、君との婚約を考え直した方が良いのか?」

 「ああ、冗談ですよ。私と触れ合ってる時とさっきの感じは違いましたね。けど今ももう少し触れ合ってくれても良いんですよ」

 「ふーん、そうやって私を使って仲良くするんですね」

 「それはネメッカ様であって僕にその気は無い」

 「ユッミル様は可愛い女の子を妻にしたいと思わないんですか?」

 「うーん、そうだけど向こうにその気が無いのに誘ったりはしないよ」

 「言い訳ですね。本当は魅力なんて無いと思ってるんでしょ」

 「そうかな?で、誘ったら側室にでもなるの?」

 「いえ、お断りします。五人以上の中の一人は無理なので」

 「残念、可愛いサッネハちゃんに振られてしまいました」

 「ユッミル、何してるんですか?」

 「ネメッカ様、側近への誘いを断られた上に根も葉もない悪口で罵られたのに慰めてくれないんですか?」

 「仕方ないです。メシャーナさん、シャーユちゃんを連れてどいて下さい」

 ネメッカはユッミルを抱き込む。

 「やっぱり私を使って仲良くするだけじゃないの、まあ良いわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3節 土術師


 ユッミルはリュッサと子供達を塔に帰すとネメッカとシャーユの世話をしていた。ただ、シャーユはいつの間にか寝てしまう。

 「ネメッカ様、ここは騒がしいですから遮音した方が良いんですかね?」

 「そうですね。ですが無理はしなくていい」

 「けどユッミルがいないとこの家も静かだよ」

 「そうね、そもそも私含めあなた目当てだもの」

 「それはネメッカ様とあなただけですよ」

 「ありがとう、信頼してくれて」

 「ユッミル、そういう事?」

 「いや、シウさんは暇人という事だよ」

 「そういう事にしておくわね。けどフーニャちゃんもオーネちゃんも暇人だと思うけど」

 「いえ、フーニャさんは読書、オーネさんは睡眠に忙しいですから。その点、仕事もあるのに合間を縫って来てくれるネメッカ様は素晴らしいです」

 「ユッミル」

 「ユッミル君、私は」

 「分かりませんけど誘ったら応じてくれるので甘えたいです」

 「そっか、それで良いよ」

 シャーユはネメッカが作った軽食を食べるとまた寝てしまう。

 「ユッミル、今度はユッミルが私に抱かれて寝ますか?」

 「小さいシャーユと一緒とはいきませんよ」

 「それなら私とテーファの二人で抱えたらどうでしょう?」

 「えっ」

 「分かりました」

 ネメッカがユッミルの肩を胸元に抱き寄せるとテーファは膝を抱き寄せる。ユッミルはネメッカの背中を抱く。

 「困ります、少し怖いです。寝れません」

 「落としませんよ」

 「そういう問題では無いです」

 「ユッミル、もっと強く抱いて手を回せば掴めますよ」

 「ごめんなさい。本当はネメッカ様と二人でしたいです」

 テーファはそっと足を下ろす。

 「そうですか、なら来て下さい」

 「ネメッカ、こうしているだけで今は十分だから気を回し過ぎなくて良いんですよ」

 シャーユ以外で夕食を食べ終えるとテーファは帰宅する。

 「メシャ、フーニャさん。少し来てくれますか?」

 「おっ。遂に今日の夜の相手として呼び出しか?」

 「違います。メシャ、シャーユをネメッカ様かシウ様に預けて出かける気はあるか?」

 「うーん、大丈夫かな?ユッミルがいるなら安心だけどそういう事じゃないよね?」

 「そうだね。でもそういう機会も良い…」

 「今のは忘れて。折角出かけてもユッミルいないと寂しい。とにかくそうね、それも必要かもしれない。けどネメッカさんが無理そうなら一度きりになってしまうかもだけど」

 「じゃあ、その時に森でこの変な土術師に術を教わろう。フーニャさん、お願いします。そうですね、お礼に一緒に寝ますから」

 「ユッミル殿、いい加減にしないか」

 フーニャは服を脱いでいく。

 「先払いですか。良いですよ」

 「ユッミル殿、どうして私だけが取引でしないといけないのか」

 「えっと」

 「私はユッミル殿の相手の手間を惜しんで等いない」

 「そうですか」

 ユッミルはフーニャを抱く。

 「ですが今日は抱くだけですよ。最初からそういう行為をするのはそこに転がっている悪い大人だけですからフーニャちゃんはああなっては駄目ですよ」

 「分かったよ、そこで勝負しても勝ち目は無い」

 「ユッミル、あなたは悪女を手籠めにするやり手ですからたくさんの女を抱けるんですね」

 「やり手ならシェンハ様でも口説いて魔族領の定期掃討で今回の事態を収めますよ」

 「そんな気は無いでしょう。シェンハ様を口説いたらいよいよ男の敵ですよ。あなたはエッヒネ様とのうわさがある上にシーリュノ様やリッネ様の口付けを受けましたしね。あなたはもう指折りの美しい女性術師の半分を嫁にしています。」

 「そうですね。まあ心配は無用ですが最も人気のあるシェンハ様と噂が立つのは問題でしょうね」

 「ユッミル殿、できれば黙って抱いて欲しい」

 「そうだね」

 ユッミルが目を覚ますと横にはネメッカが寝ている。

 「メシャとシウは起きていそうだね」

 「うん。おはよう、ユッミル」

 「シウ様、起きないと服を脱がせて色々遊びますよ」

 「ユッミル、そいつはそんなのじゃ起きないわよ」

 「起きてたら遊んでもらおうと思ったんですが残念です」

 「起きてるわよ。土の小さいのの口直しかしら?」

 「少し良いですか?」

 「少しなの?」

 「少ししかないので」

 「まあ良いわ」

 「ユッミル、私でも良いでしょ?」

 「すぐ終わるから待ってて」

 ユッミルはシウを横から抱いて少し遊ぶ。

 「ユッミル、私のは駄目なの?」

 メシャーナはユッミルの手を取って体を触らせる。

 「メシャ、駄目だよ」

 「魅力無い?」

 「そんな事は無いけどそれには代わりがいる。けど今のメシャに代わりはいないから今のメシャをやめて欲しくないかも」

 「シャーユは?」

 「まだ無理だね。けど確かな代わりにはならない」

 「メシャちゃん、シャーユちゃんで気を引けるのは今のうちよ。これから子供は増えそうだからね」

 「シウさん。そもそもネメッカ様の子供以外を特別扱いはできませんよ」

 「けど子供が五人になっても今のシャーユちゃん位に相手できるのかしらね。しかもネメッカ様の子供はそれ以上なのよね?」

 「そうですね。シャーユを構い過ぎていたかもしれませんが今後の事もあるので続けます」

 「いつまで持つかしらね」

 「まあ約束は約束だがあれは酷かったね。私は君と一夜を共にしてどうなるかと気になったのに君はあっさりシウ君と楽しそうに話しているではないか、やはり私では物足りないのか?」

 「いえ、多分シウさんと寝た後でも特に対応は変わらないかと」

 「だと良いのだが怪しいものだ」

 「そうですね、テーファさんなら変わると思いますよ」

 「それは私への不満かな?」

 「いえいえ、ネメッカ様やテーファさん以外は大して変わりませんよ。ただ、シウさんやソヨッハは優しいですから魅力が違います」

 「私の魅力は何かね?」

 「会ったばかりなので分かりません」

 「十日は経ってるが?君は季節が一つ巡ってもまだそう言いそうだね」

 「かもしれませんね。あなたが隠すのは勝手ですし暴く気も無いので分からないままですね」

 「全く隠さないのは見苦しいだろう」

 「そうですね。適度に隠して適度に見せるのも女性としての魅力でしょうからね。フーニャさんはどうなんでしょうね」

 「口が上手いな。だからたくさんの女を飽きさせないのか」

 「もうそれで良いです。ただ、ミーハちゃんに飽きられないのは難しいのでいよいよ愛想をつかされそうですけどね」

 「ふーん、ユッミルそれって私が甘えて良いって事?」

 「今からは森に行くから駄目だけどね。でも忘れられそうだし期待しないで待ってるよ。それに今回はこの二人が重要だからね」

 ユッミルはメシャーナとフーニャと手を繋ぐ。

 「なっ」

 「フーニャさん、嫌ならはっきり言えばいいですよ」

 「嫌ではない。が、恥ずかしいな。あまり人と交流しない私には慣れない事だ。それと背丈込みで子ども扱いをされている気がするが服装はきちんと熟練の術師なのだが?ユッミル君は少々この世界の常識から外れすぎてはいないか」

 「フーニャさん、やはりあなたは中々難しい人ですね」

 「えっ。何故、機嫌が悪い?」

 「そんな事は無いですよ。ただ、服装で人は判断しませんけどね」

 「だがネメッカとテーファの共通点の一つは服装だと思うが似合う服装が似ているという事かもしれないが」

 「フーニャさん、その話をまだ続けるんですか?」

 「ユッミル、私は良いよ。いくら術を上手くなる為とはいえユッミルが嫌な相手と付き合う事は無いよ」

 「失礼だぞ、メシャ君」

 「でもあなたはユッミルが嫌がってても良いの?」

 「それは困るが」

 「ならその話はやめてあげれば?」

 「仕方ない」

 ユッミル達は森に入っていく。ただ、入り口付近には獣は少ない。

 「ぬかるんでるね」

 「これでもましになった方だよ」

 「他の冒険者はほとんどいないね」

 「まあ訓練で森に来るのは珍しい」

 ユッミル達はゆっくり奥に進む。

 「やはり誰かが追い掛けないと駄目だな」

 「けどメシャから目を離すのは心配だ。メシャ、背負うよ」

 ユッミルはメシャーナを背負いながら獣を探す。

 「いない訳では無いが遠い。獣での練習は諦めるか」

 ユッミルは少し入口の方に向かう。

 「フーニャさん、幻覚の的を作るので攻撃の手本を」

 「無駄撃ちは趣味ではないがユッミル殿に抱いてもらう為なら仕方ない」

 フーニャは控えめながら曲軌や土射を見せる。

 「まあ帰りましょうか」

 「うん、無理しても仕方ないし」

 「私は無駄足だったけどまあ仕方ないね」

 「ユッミル君、暇になったから寄らせてもらうね」

 テーファはユッミルの肩を抱く。

 「テーファ君はずるいな。一人だけ小さくないからと我々にはできない感じでユッミル殿と触れ合うとは」

 「けどその人だとユッミルに抱っこしてもらうのは無理だよ」

 「抱っこされても嬉しくは無い」

 「けどフーニャちゃん、ユッミルが小さい子が好きだった場合は抱っこされた方が好かれるかもね」

 「そうか、ユッミル殿。私を抱えてくれ」

 「そうですね。面白そうですね」

 ユッミルはフーニャを抱きかかえる。

 「逃げ場が…」

 「まあ重くは無いですが確かにメシャよりは大きいので少しきついですね」

 「なっ。小さな子供路線も大人路線も駄目。そうか、だから私は売れ残る。ユッミル殿、私は売れ残りだ。安く繰り返し使ってくれ。遠慮はいらない」

 「まあ適当にしますからとっとと帰りますよ」

 「早かったですね」

「ええ、少し状況が悪いので早めに切り上げました」

 「そうですか。ユッミルも寝ますか?私を抱いて寝てくれて良いんですよ」

 「ユッミル、人も多いけどネメッカもいるけどこの状況は変わらないし私の場合、夜はもう無理。丁度衣装が汚れた気がするから洗うわね」

 ミーハはさっさと衣装を脱いで洗う。ミーハは肩紐で膝までの丈の薄い布だけを纏っている。

 「ミーハ、水系の術で脱水できないの?」

 「無理にやると服が傷むの。あっ、丁度薄着になったし、ユッミルとお風呂に入ろうかそれとも横で甘えて良い?」

 「えっと」

 「うん、横にいるからユッミルの好きにしてね」

 ミーハはユッミルの横に寄り掛かって肩に手を掛ける。

 「ミーハ、今は駄目だよ」

 「ユッミル君はお風呂よりも軽く抱く方が良いのかな?」

 「そういう日もありますけどネメッカ様にシャーユの面倒を見させておいて横でこういう事はできませんよ」

 「別に良いですよ。私がその気になれば独占できますし」

 「それに私も夜は帰ってしまいますし」

 テーファはミーハと逆の横に座る。ユッミルはテーファの方に体を向ける。

 「ミーハ、やはりテーファさんに誘われると断れない」

 「ユッミル、言っておくけどこういう感じは頻繁にはしないわよ」

 「一緒は嫌か?」

 「ううん、構わないよ」

 ユッミルはミーハと触れ合う。テーファにも気遣ってはいたが基本的にミーハを抱き寄せていく。

 「ユッミル、おいで」

 声の方に目をやるとシウは裸で手招きしている。ユッミルは少し考えた後、シウの方に行って抱く。

 「シウさんには敵いませんね。やはり同時は少し無謀でした。テーファさん、実は最近、ミーハさんとは遊べていないんです。本当はテーファさんと遊びたいのですが少しお待ちいただけますか」

 「分かりました、ミーハさんは団の意向で引く可能性もありますしある程度は譲るべきですね」

 「まあ良いわ。テーファさん、ありがとう」

 ミーハの肩紐はしばらくして肩から落ちていく。

 「そろそろ交代して下さい。待たされると余計に恋しくなりますね」

 ユッミルはテーファに正面から抱きつく。テーファも抱き返す。

 「テーファさんで安らぐのでネメッカ様は不要ですね」

 「側室扱いなら積極的に誘惑しようかしら?二番手の誘いは断れるし躊躇はしない方が良いわよね?」

 「冗談ですよ。ネメッカ様の口説き文句にはシウさんの様な情熱は無いですが信頼はしていますから」

 「ユッミル、別にその軽口は気にしていませんが私より他への影響からしてやめた方が良いわよ」

 「無駄だと思いますが?」

 「けどやりすぎは駄目よ」

 「なら僕はシャーユに助けを求めますから」

 「それが続いたら黙ってないわね」

 ユッミルとシウとネメッカは昼食の準備を進めている。

 「シャーユを見ておくから昼食は後にするよ」

 「それはやめた方が良いわね。というか逃げようとしてない?」

 「そんな事はありませんよ。シウさん、隣で食べますか?」

 「そうね。ネメッカさん、たまには譲って下さるかしら?」

 「構いませんよ、決めるのはユッミルですから」

 「そうですね。でしたらテーファさんではなく一番大人しいソヨッハにもう片方の隣はお願いしますね」

 「そうですよね。魅力的なテーファさんだと落ち着いて食べれないわよね。けど私みたいに慣れて欲しいわね」

 「急には無理ですよ」

 昼食の席に着くとシウは早速足を絡ませていく。

 「シウさんはお上手ですね」

 「ありがとう。けど夜に会いたいわね」

 ユッミルは昼食を早めに終えるとシャーユの所に行ってメシャーナに昼食を食べる様に促す。

 「ユッミル君、私も抱かせてもらっていいかな?」

 「気を遣わなくて良いですよ」

 「気は遣ってないわ」

 テーファはゆっくりシャーユを抱く。

 「ユッミル、私との子もそれ位面倒を見てくれるのかしら?」

 「えっと、向こうにはイーサさんにリュッサ、昼間はミヨーナもいて賑やかですしネメッカ様も常駐するでしょうから私は必要無いかと」

 「つまり、シャーユちゃんを可愛がると?」

 「いえ、イーサさんを差し置いて子守とはならないかと。まあネメッカ様が指揮所復帰となればその間は私が独占するかもしれませんけどね」

 「そうですね。強要しても実現しませんし負担ですよね」

 「はい、立場が違う以上平等にはできません。ですがネメッカ様にずっと抱かれて世話をしてもらえる子供は幸せですね」

 「ユッミル、あなたはそうなりたいのですか?」

 「赤子に返れるならそうかもしれません」

 「まあユッミルはそういう人ですものね」

 「えっと」

 「まあ良いですよ」

 翌朝は指揮所の担当であり、家の前にはフェノがいて合流して指揮所に向かう。

 「どうした?」

 「イーサにユッミルの横なら気を張らなくても良いから指揮所に同行して休むよう言われた」

 「まあでも寝てた方が休める気もするが」

 「ああ、だからイーサはユッミルに私が体を預けるから幻術で監視する私を作るよう頼めと言われた」

 「フェノ、君もそれが良いの?」

 「私はそれで構わない。ベッドで寝るならいつでもできるがユッミル様の横という安心は中々無い」

 ユッミルは指揮所に着くと魔族領を見る。前線はそれなりに回復している。万全ではないが襲撃に動く事は不可能ではない様子だ。

 「レミーカさん、魔族領は元に戻りましたね」

 「そうですか、雨季は草原を駆け抜けられないだけで活動はあるんですね。草原は傾斜が少ないので排水はまだ掛かりますがそれも例年通り」

 「そうですね」

 「そうなると寒季の活発さも変わらないか」

 「そうですね」

 「それよりそんなにあなたは忙しいのか?」

 「そうですね。暇になる見込みはあまり無いですね。家にいる時は一時的に暇になる事もありますがそういう時は買い物に向かいたいしどうしても買い物なら出かけられますが誰かは付いてきます」

 「自由は無いのか?」

 「いえ、まあ狩りは私が仕切ってます。要するにネメッカ様に塔に会いに行く以外だと出かける時は他の団の使いが同行しますね。もちろん、不可能ではないですが木の塔や月の塔にもほぼ行けない状況で誰かの家は中々難しいかと」

 「すまない、気にしなくてよい」

 「いえ、土の団とは中々接点が持てないもので」

 「私が取り次いでも良いぞ」

 「いえ、誤解を招く言い方でしたね。木や月とは実態のある交流ができていますが土とはありませんのでね。レミーカさんに問題がある訳では無いのです。」

 「そうか、確かに土は人数が多くて纏まりとしても緩い。他の団との積極的な交流という雰囲気は無い。しかし、我々幹部はそうでもない。ただ、どの団と交流するとかいう話に纏まりが無いのは認めざる得ない。そうだな、こちらの問題だった。ただ、要望は聞いてきて欲しい。個人でも団向けでもね。団に正式に言うかは君と相談してからになるが気軽に話してくれ。」

 フェノは大半の時間をユッミルに体を預けて休む事に成功した。

 「ユッミル様、ありがとうございます」

 「うん、フェノが元気になったなら良かったよ」

 「それではユッミル様、また」

 「ええ、また」

 レミーカが先に指揮所を後にする姿を見ていると奥の階段から誰かが上がってくる。ユッミルは何の気も無く見ている。

 「あっ」

 「ユッミル様、ご苦労様です」

 「エッヒネさん、お久しぶりです」

 「そう、あまり久しぶりの気はしないけどね」

 「では」

 エッヒネはユッミルの肩を持って顔を近づける。

 「ユッミルさん、忙しいの?」

 「いえ」

 「なら付き合ってね」

 「はい」

 「ユッミルさん、おめでとうね。何がとは言わないけど」

 「それはどういう?」

 「困るわね、疑われるのは。けど私も似た様な事になるからその疑いは不要になるわね」

 「えっ、まああり得た話ではありますが」

 「嫌なのかしら?」

 「そちらはどうなのですか?」

 「この機嫌の良さは何故なのでしょうね?」

 「こういう話は互いの立場上良くないのでは?」

 「そうね、誰のかを断言はしないから問題は無いでしょう」

 「この状況で言うべきではないでしょう」

 「そうね、けど私は一層ユッミルさんに加担する材料が増えたわね」

 「だから言わないで下さい」

 「ねえ、記念に抱擁して良いかしら?」

 「駄目に決まってるでしょう」

 「残念。なら交代ね」

 ユッミルは指揮所から出ると塔に向かう。主宰部屋にはフェノとリュッサとミヨーナがいる。

 「フェノ、ミヨーナと塔内を見回って来てくれ」

 「はい」

 「えっ」

 フェノとミヨーナは部屋から出る。

 「リュッサさん」

 「はい」

 「少し寝るので横にいて頂けますか?」

 「ああ、はい」

 ユッミルとリュッサは並んで寝転がる。

 「最近、塔はどうですか?」

 「そうですね。全般的に人は少なく、子供はもっと少ないですが例年通りですね。むしろ例年よりは減っていません」

 「イーサさんとは話してますか?」

 「はい、ユッミル様への魔石取引を差し引いても短期的には財政が良くないようですね。魔石を売れば大丈夫だから寒季や雨季は我慢の時と言い聞かせておられました」

 「えっと原因については?」

 「ああ、主に食費や私達の人件費の様ですね。ただ、私達に関しては本来これ位必要なので問題は無いと言われました。それに雨季の前の魔石売り上げの分は食い潰していないから当面は心配ないとも言っていましたので寒季が明ける頃が焦点と言い聞かせている風ですね」

 「術師協会は?」

 「はい、私達の取り分はユッミル様の活躍で改善したのですがそれに負けず劣らずアークの支給が全体として減った様です。光は微増でしたが他はかなり減らされた様です。月や氷に火はましですが他は軒並み減りました。噂ですが水がかなり減ったのではないかと言われてます」

 「まあ水や木は他の収入もそれなり。痛いのは土か」

 「ですが蓄えの少ないここが一番予断を許さない事に変わりはありません。原因としては革製品の補修業者が規模を拡大して無性地区での革製品業者の売れ行きの悪化で術師協会への買い入れ量が低下している様ですね」

 「そうですか、術師協会は革の買い取り価格を下げそうですね」

 「まあそれはまだ控えるようですが一定程度の下げは決定的ですね」

 「寒季が明けないとどうしようもないですね」

 夕方、帰宅するとキッシャノがいる。ネメッカはユッミルを一度抱くと塔に帰っていく。

 「ユッミル様、リッネ様が報告したい事があるらしいので塔に来て下さいませんか?おそらく今後の事も話すので意見も欲しいそうです」

 「そうですか、リッネ様の次の指揮所は?」

 「明後日午後ですね」

 「分かりましたがとりあえず夕食にします」

 「申し訳ない」

 ユッミルは夕食後、メシャーナとシウにミーハとソヨッハと五人で風呂に入る。

 「フーニャさんは大人しくしていて下さい」

 「五人が六人に増えても同じだろう」

 「この小さめの体はこういう時にこそ生きる」

 「流石に限界です」

 「何処がだ。随分余裕があるではないか」

 「見えないでしょうが足元はもう一杯なのです」

 「まあ良い、機会は今後もある」

 「だと良いですね」

 「なっ。私を追い出す気か?」

 「いえ、明日行くのは月の塔ですよ。生きて帰れる保障はありません。ですからこういう日位安らげる人達と過ごしたいのですよ」

 「ふん。私は黙らないよ。勝手にすればいい」

 「ユッミル、段々フーニャと仲良くなってきて困るわね」

 「シウ様、あの女は術師として優秀なだけです。警戒した方が良いのは術が優秀な上に気遣いもできるソヨッハだと思いますけど」

 フーニャは何か言っているがユッミルには聞こえていない。

 「ちょっと、私はどうなのよ?」

 「ミーハがここに居てくれると嬉しいよ」

 「何それ?誤魔化してない?」

 「メシャ、居てくれてありがとう」

 「うん、こちらこそ」

 「メシャ、誤魔化されたら駄目よ」

 「うーん、けど私は術も優秀じゃないし気遣いは褒めて欲しくてやってないしね」

 「えっ」

 翌朝、キッシャノと共に月の塔に向かう。途中でテーファが合流し、横に密着していく。

 「近いね」

 「はい」

 「私の家はどちらの塔とも距離に差は無いですよ」

 ユッミルが塔に入る。

 「ユッミル様、リッネ様を呼びますので少々お待ちを」

 月の術師は階段を上がっていく。

 「そこの応接室で待っていていいと言われているんですが」

 「どうしますかね。テーファさんはどう思います?」

 テーファは周りを見回す。声は潜めているが騒がしい。

 「ユッミル君、いつもみたいに甘えて良い?」

 「良くないですよ。リッネ様が来るんですよ?」

 「来るまでは?」

 「きっとすぐ来ますから」

 「なら先に入りましょうよ」

 「分かりました」

 「キッシャノさん、良いですか?」

 「はあ、あまりテーファさんを甘やかさないで下さいね」

 三人は応接室に入る。程なくして月の主導に加え、主宰もやってくる。

 「ユッミル様、お越し頂きありがとうございます」

 「はい」

 「本来は未だ自省させるべきかとも思いましたが今後の両団の交流を考えれば表面上でも解消すべきと思っております。ユッミル様、とりあえず謝罪の機会を頂きたい」

 「それは構いませんがそもそもその人自身に謝罪の意思はあるんですか?」

 「ユッミル君、月の主宰に襲われたって噂ではなく事実なの?」

 「ええ、そうですね」

 「えっ。ヌガーフ、あなたがそんな事をするなんて。この主宰様はシェンハ様と同格よ。無礼もそうだけど冷静さを欠いてるわね」

 「申し訳無い、月の主宰として。ユッミル様の実力を見誤っていた。いや、本当は理解していたが認められなかった。反省しているのは偽りの無い真実だし切り掛かったのは抗弁のしようもない」

 「ですがその言い分だと私が弱ければ切っていたと?それは問題でしょう」

 「いえ、組み伏せてしまおうかと」

 「幾分ましですが主宰や主導は何も術師としての実力だけで選ばれる訳ではありません。そんな理由で主宰の地位を否定するのは問題でしょう。」

 「いえ、私が不満に思ったのは光の主宰就任ではありません。それは光の問題」

 「えっと」

 「お聞きではないのですか?リッネ様が魔族領へ攻め込む際にあなたを連れていくという話を。私は実力不足だと拒まれたのでああなってしまいました。本当に申し訳無い」

 「リッネ様、私は月の団の結束を歪めてまであなたと組もうとは思わないのですが?」

 「それは申し訳ないが彼が私では駄目かと強弁するものでつい口走ってしまった。それに連れていくと断言もしていない。実力を見てからと言った。だがもう不要だ。この主宰の攻撃への対処を見て強さは分かったからね」

 「なっ」

 「は?」

 ユッミルとヌガーフは表情が変わる。

 「ユッミル君は強いから大丈夫だよ」

 「テーファさん、勘違いしないで下さい。魔族領と言ってもこの人の言う魔族領は森の近くではなく奥ですよ。森の近くなら慎重にやれば単独でも狩れると思いますがこの人は少数精鋭で奥深くに入る気です。全く大丈夫ではありません。」

 「ユッミル様、聞こえる様に言ってますよね?」

 「そうですね。奥はあなたしかいけませんから駄目ですよ。事前に言っておきます」

 「ええ、最初から奥に行く気はありません。それに魔族から身を守るだけなら魔族領内で中級以上の魔族を多数相手にする必要はありません。それは理解しています」

 「含みのある言い方ですね」

 「はい、ユッミル様は魔族について知れば気が変わる事を期待しています。ですからあなたの意思に反して危険な魔族領の奥には誘いません。現状は森の近くの魔族を狩って牽制しようと言う話ですね」

 「それは個人的には構いませんがそうした行動に懸念を抱く団がいてもおかしくは無いので大規模な行動をお控え頂けるなら協力はします」

 「ヌガーフ、良いか?」

 「はい」

 「では明後日、集会所にて二人で向かう」

 「えっと、何か作戦は?」

 「私は範囲内の敵の減退だ。君の周辺を中心に弱らせるから私から離れすぎない事だけを気を付けて狩ってくれ。私も少しずつ君に追従しながら狩っていく」

 「分かりました。中級魔族を殊更狩るという無謀な作戦でなければ協力しましょう」

 「今はそれで良い。感謝する」

 ユッミルは昼前に光の塔に戻る。昼食を食べようとするとネメッカと出くわす。

 「月の塔に浮気しに行ったのですか?」

 「リッネ様は熱心ですからね」

 「はあ、無茶な要求は拒まないと駄目ですよ。月の団との交流は良い事ですがユッミルの安全を犠牲にする程の事では無い」

 「分かっていますよ」

 ユッミルは昼食後も少し塔に残り、イーサに事情を説明する。

 「ユッミル、時間稼いでって言ったでしょ?」

 「どうやって?そもそもシェンハ様やエッヒネ様同伴とはいえ魔族領で狩りをしている上に魔族襲来時には正式戦果を上げてリッネ様と魔族と戦ったんだぞ。言い訳には限界がある」

 「それはそうだけど急すぎない?」

 「今回は少なくとも奥には進まないし奥はしばらく断る」

 「奥じゃなくても困るの」

 「それはラーハ様の事情だろう。こちらが慮るのにも限界はある」

 「そうね。けどもう少し慎重に進めて欲しかったわ。それよりまたテーファなのね。まあネメッカは良いんだけど」

 「私も不本意ですがユッミルは行くんですから準備に協力しないといけません」

 「そんなに大層な事では無いですよ」

 「魔族領が大層な事では無い。ユッミルの強さには困ったものね」

 「僕の強さではなくリッネ様の強さが困るんですよ」

 「それはそうだけど」

 「けど魔族領には違いないし心配だから世話をしに来たの。少し待っててね」

 ネメッカとテーファは服を脱いでいく。

 「まあ良いよ。風呂位」

 「まずは食事でしょうが。服を脱ぐのは後にしなさい」

 「もう脱いでしまったしやめておくわ」

 ネメッカとテーファはユッミルにくっついて机に向かう。

 「ネメッカ様、私は別にあなたに飽きた訳では無いですから気を付けないとこういう目に遭いますよ」

 「ユッミル、私もあなたに飽きてはいませんから欲塗れの反応をしてしまいますけど下品な女だと思わないで下さいね」

 「ユッミル殿、まあそれと同じとは言わないが私にもそういう事をして良いのだよ?」

 「ネメッカ、そうは言っても慎みが足りないわね」

 「シウさんがそれを言います?」

 「流石に食事をその姿は無いわね」

 「ユッミル、シウさんが自分より緩いと認めましたよ。遠慮なく来て下さい」

 「これ以上ですか?」

 「そうでした。その調子で願います。ただ、私ばかりは困るかもしれません」

 「言い分は分かりますがテーファ様はまだまだ日が浅い。そう簡単では無いです。それにそもそも行くのは明日ではありません」

 「あっ。そう言えばリッネ様は明日は指揮所でした。忘れてました」

 「ちょっと、テーファさん」

 「けどね、もうユッミル君を抱く気になったから抱くね」

 「ユッミル、その二人の体を何でもいいから夕食の席に着かせて」

 「ミーハ、悪かったよ。けどリッネは僕が断っても一人で行ったと思う」

 「分かってる。もう怒ってない」

 「それで服を着てくれませんか?食事をしていると色々問題も起きそうですし」

 「食事を落とすとかですか?そうですよね、私の体は汚いですよね。だから触ってくれないんですね」

 「手で触ったら食事できないでしょう」

 「やはり汚いから」

 「手が塞がるからですよ」

 ネメッカとテーファは体を寄せていく。

 「ユッミルがネメッカを抱いてる。良いの、メシャ?」

 「良くは無いけど私には覆せない」

 「ユッミル、食事できてるわよ」

 「ミーハ、ネメッカ様の水での評判は悪いが僕には関係が無い。それにテーファさんがいるから逃げ場も無い」

 「分かってるなら机の下にもぐって別の膝に突っ込みなさいよ」

 「ミーハ、一応僕もネメッカ様の事は魅力的に思っているからそれは難しい」

 「それは良いのよ。けど今は食事しなさいよ」

 「そうね。ユッミル、どうぞ」

 ネメッカとユッミルはかなり顔が近いのでネメッカはさっさとユッミルの口の前に食事を持ち込む。ネメッカはユッミルにゆっくり食事を食べさせる。ネメッカはユッミルの肩に手を回して抱き寄せて食事を進めていく。そして、時折肩を強く抱き寄せて口づけを促す。ユッミルは素直に従う。

 「ネメッカ様、私と代わって下さいませんか?」

 「仕方ないですね。ユッミル次第ですが」

 ユッミルは黙って一度ネメッカを抱くとテーファの方を向く。ユッミルは一度飲み物を飲んで口を拭くとテーファの胸に顔を倒す。

 「満腹が近いしあと少しだけ食べたらやはりここは狭いので食べ終えてからお願いできますか?」

 ユッミルとテーファは夕食を終えるとずっとくっついて程なくして風呂にも入る。

 「ちょっと、ネメッカもあれで良いの?」

 「やはり脱いだのは失敗でした。やはり膨れた腹だとテーファが有利」

 「ユッミルがそんな事で判断してると思うなら別れなさいよ」

 「冗談ですよ。ユッミルはただ妊婦に無駄な体力を使わせたくないだけなんですよ。まあ分かっていても恨めしいですが」

 「そういう事…まあそうか。私もかな?というか分かってるならとっとと服を着たら?」

 「そうですね」

 ネメッカはその後風呂に割り込んでいく。風呂から出るとユッミルとネメッカは服を着たがテーファは先にそのまま布団に入っていた。ユッミルは驚いたがテーファの体に引き寄せられていく。ただ、しばらくして最終的にはネメッカを抱いて眠りについていく。

 翌朝、ユッミルは早く目覚めたのでメシャーナの寝床でシャーユを可愛がっている。

 「あれ?ユッミル君?」

 テーファは辺りを見回す。ユッミルは静かに寝床を抜ける。

 「ん?きゃっ。あっ、ユッミル君か。姿消していないで普通に遊ぼうよ」

 「あまりに平然とされると子ども扱いされてる気もするんですけど」

 「そんな事ないよ。子供とこういう姿で遊ぼうとは思わないよ」

 「分かりましたけどそろそろ服を着て下さい」

 「じゃあ着せて」

 ユッミルはテーファに服を着せると足早に朝食の準備に向かう。朝食を終えるとテーファとネメッカとミーハにソヨッハは出かけていく。

 「邪魔者はかなり減ったな」

 ユッミルはまたもやメシャーナとシャーユの面倒を見ている。シャーユは既に起きて器用に両親に交互に甘えている。

 「ユッミル殿」

 「お断りします、忙しいので」

 「用件位聞いてくれ」

 「今日は狩りに行かずに休む以上あなたに用は無いと思うが」

 「まあ良いだがこちらは勝手にするぞ。私達は今日の昼間は脱いだままでいる。ユッミル殿には意外とそれが効くようだからな」

 「好きにすればいい」

 「私も乗るわね」

 「シウさん、はあ残念ですね」

 二人は服を脱ぎ始める。ユッミルはシャーユの世話を続行している。しばらくするとフーニャとオーネの話し声も聞こえる。ユッミルがその方に目をやると既にオーネも脱ぎ終えている。

 「そうですか、分かりましたよ。フーニャさんは今日死への門出を祝おうとしているのですね」

 「なっ、酷い言い掛かりだ」

 「オーネさんまで巻き込んで…メシャーナは脱ぐなよ」

 「ええ、私だけ」

 「シャーユに変な姿を見せたら駄目」

 「分かった」

 「じゃあ、ちょっと行ってくる」

 「遂に観念するか」

 ユッミルは部屋の中央にシウがいてソファーの近くにフーニャとオーネがいるのを確認するとソファーの方に向かう。

 「オーネさん、良いんですか?」

 ユッミルはオーネの手を取って体を寄せる。

 「構いません、私も女ですから」

 「そうですか、でしたら普段から仲良くお願いします。それでフーニャさんですが子供では無いらしいですね。」

 「そんな事は当たり前だろう」

 「でしたら今から子供扱いしますので後で何処が不満か教えて下さいね」

 ユッミルはフーニャを抱き込む。膝裏と脇を抱き込んで抱え込む。

 「フーニャちゃんは可愛いね」

 「月並みだな。それに私は実際は大人だからそれなりに重い」

 「フーニャちゃんは服が邪魔なのかな。けど良いよ、風邪を引かない様に今は抱っこしてあげるから後で着ようね。着せてあげようか?」

 「それは良いな」

 しばらくしてユッミルはフーニャに服を着せるとシウの方に向かう。

 「私は着ないわよ」

 ユッミルはシウの体を色々触っていく。

 「シウさん、服を着ないとやられ放題ですよ」

 「それが本来の私の仕事だし構わないわよ」

 扉を叩く音がする。

 「フェノか」

 ユッミルが扉を開けるとフェノがいる。ユッミルはとりあえず招き入れる。

 「フェノさん、今日はユッミルをこういう姿で相手する日にしたわ。明日は大仕事だし」

 「なるほど」

 「フェノ、脱ぐな」

 「ユッミル様、私を女として認めないという事ですか?」

 「それ以前に君は戦闘員扱いだ。そういうのは仕事の範囲外だ。一人だけ突出してたくさんやらせるのは間違いだ」

 「私はユッミル様の側近筆頭ですからその指摘は当たりません」

 フェノはさっさと服を脱ぐとユッミルに抱きつく。程なくシウと服を脱ぎ直したフーニャやオーネにも囲まれていく。しばらくするとテーファとネメッカがやって来てテーファも加わる。ネメッカはユッミルが辛うじて説得してシャーユの世話をさせる事にした。昼食中もメシャーナ母子とネメッカとユッミル以外は服を着ない。

 「ユッミルさん、どうして部屋の中央に幻術を?」

 「流石に分かるか。それで用事は?」

 「はい、魔族領に向かうと言う噂の事情を聞きに来ました。できればそちらから出向いて頂きたかったですけど」

 「そうですね、シウ様は伝令としては機能していませんからね。魔族領には向かいますよ。流石に断るのは限界ですから」

 「本当という事ですね。私からはお気をつけてとしか言えませんが火の主導様は出来れば手控える様に言っていますよ」

 「それは理解します。ってシウ様?」

 「ああ、隠してたのはそういう事ですか。エコには悪いですけどいい機会ですね」

 マッラは扉を閉める。ユッミルはマッラの腕を掴む。

 「やめて下さい」

 「どうして?何をする気ですか?」

 「ユッミル様が私の体で遊んでくれたら帰ります」

 「分かりました。もう諦めます」

 ユッミルはマッラの服を脱がせて部屋の中央に戻る。ユッミルは部屋の中央に追い込まれながらテーファの体にしがみつく。しばらくするとマッラは帰っていく。

 「そろそろ終えませんか?ミーハやソヨッハが帰ってきます」

 「そんなのは理由にならないわね。そもそも他を無視してテーファさんに寄っておきながら身勝手ね」

 「いえ、シウさんには寄れなくはないですがそうするとフーニャさんが不満を抱きます。フーニャさんって微妙に調和を乱すんですよね」

 「酷い。今回に関しては本当に酷い言い掛かりだ」

 「では今からシウさんと遊びますけど一切文句を言わないで下さいね」

 「なっ。他の奴は良いのか?」

 「ええ、構いません」

 「では他は代わりにユッミルを糾弾してくれ」

 ユッミルはシウの体に抱きついていく。しばらくするとソヨッハとミーハが帰宅する。

 「はあ」

 「そうですね。口実が消えてしまいました」

 ユッミルはシウを普通に抱き寄せる。

 「ちょっと、ユッミル。何をしてるの?」

 「僕が主導する訳無いだろ」

 「それにしても止めなさいよ」

 「もうミーハも脱げば?」

 「いや、夕食でしょ」

 そうだね。全員そのまま夕食を食べる。その後、全員風呂に入った結果脱いでいき、誰も服を着ないまま寝床につく。ユッミルの両脇は相変わらずテーファとネメッカがいる。ユッミルは耐え切れずにネメッカやテーファを強く抱いていく。

 翌朝、フーニャとオーネ以外は連鎖的にほぼ同時刻に目覚める。

 「ネメッカ、もっと抱いてていい?」

 「良いですよ。けどこの後は用事なんですから仕事が終わったらすぐに帰ってきてください。そしたらまた抱いていいですから」

 「あっ。ユッミルさん、治します」

 「待ちなさい。どうして治すんですか?」

 「そんな浮ついた心では危険です」

 「分かってるけど」

 「じゃあ治しますね」

 「少し待って」

 「駄目です。私はユッミルさんが死んだら困るので治します」

 ソヨッハは術を使う。

 「ネメッカ様、もう少し抱かせて頂きますが仕事がありますので程々にしますね」

 「あの、今日は?」

 「流石に連夜でネメッカ様でしたしゆっくりメシャーナやシャーユと寝たいかなと」

 「やはりですか」

 「ネメッカ様に飽きられないかも考えた結果ですからね」

 「もう良いですよ。分かってますから」

 ユッミルは集会所近くで待ちつつ歪曲視野を最大限展開してリッネを待ち構えている。

 「ユッミル君、おはよう」

 「おはようございます、では行きましょうか」

 ユッミルはさっさと大通りを歩き始める。

 「そちらからなのか?」

 「ええ、何か問題でも?」

 「魔族領に草原から入ったりはしないだろうね?」

 「ええ、それは今回の趣旨に反します」

 「なら良いのだよ」

 「今度はリッネ様か。あいつ、強いのだろうけど直接見た訳では無いしな」

 「力をひけらかさないってのは良い事よ」

 「まあ実際、魔族襲撃の際に死人が出にくくなっているし認めざる得ないよ」

 ユッミル達は微かな喧騒を背に寄せ付けず大通りを北進してさっさと指揮所付近に向かう。指揮所担当はエッヒネだったが堂々と草原を抜けていく。森に入っても獣は寄り付かない。森に入り込んだ下級魔族をさっさと狩って魔石を回収する。

 「さて、リッネ様。帰りますか?」

 「何を言っている?そもそもその手慣れた下級魔族狩りを見せておいて魔族領の端すら入らないなんて言う話を受け付ける気は起きないだろう」

 「分かっていますよ。ですが今回は奥には行きませんのでお願いしますね」

 「ああ、だが君が気が変わって奥に行きたくなった場合には備えておくから安心してくれ」

 ユッミルはリッネの姿も覆い隠して魔族領に近づかせる。リッネは機を見て注月を使い広範囲の魔族の能力を下げると多数の月射を撃ち始める。ユッミルも雷射を乱射し、雷花を振り回す。一帯はさっさと魔族が一掃され、魔石が疎らに転がっていく。

 「リッネさんも魔石は拾って下さいね」

 「まあ確かに全て放置は無駄か」

 ユッミルとリッネは攻撃速度を落として魔石を回収しつつ、少し奥に向かう。

 「魔族来ませんし、急いで撤退しますか。十分でしょう」

 「ユッミルさん、よく分かりませんが大きな魔力が向かってきてます。確認して頂けますか?」

 「そうですね。そろそろ射程圏ですね」

 炎が弧を描いてユッミルの方へ向かう。雷面と多数の雷射に雷花で火を振り払う。

 「中級魔石を確保次第帰ると言うお約束であの魔族を狩るという事で宜しいですか?」

 「構わない。君が望まない状況で奥に進む気は無い」

 ユッミルは中級魔族に付和雷同する下級魔族に雷射を撃って頭数を減らしながら横移動しつつ散雷で打撃を加えていく。下級魔族の末端がユッミルに近づいたので切り伏せる。同時にリッネの注月や月射の射程圏に入り、中級魔族は動きが鈍る。ユッミルはさっさと切り伏せて中級魔石や多数の下級魔石を確保するとリッネと共に撤収していく。

 「ユッミル様がお望みの様ですのでしばらく時を空けますがやはり塔にはお越しいただきたい。後はこちらから出向く事も許して欲しい」

 「その辺りはネメッカ様にお話し下さい」

 ユッミルは帰宅する。軽い昼食を取ると昼寝する。少し寝て目を覚ますとシャーユにメシャーナにフーニャにオーネまで横で寝ている。シウは出かけており、形上は全員で並んで寝ている形だ。ユッミルが寝床から出て4人を眺めながらどうしようか悩んでいるとネメッカがやってくる。

 「ユッミル、無事で良かった」

 「ネメッカ様、大袈裟ですよ」

 「ところで今日は来てくれますよね?迎えに来ました」

 「シャーユは?」

 「外にリュッサが待ってます。行きますよ」

 外にはリュッサがいってユッミルと入れ替わりで家に入る。ユッミルはネメッカを軽く抱き寄せながら塔に向かう。塔に着いて食堂に向かうとフェノにイーサ、ルーエとロコッサもいる。

 「今日は主宰部屋にはロコッサ様が泊まります。ユッミル様がロコッサ様を襲わない様にネメッカ様が身代りになるのでユッミル様は主導部屋にお泊まり下さい」

 「イーサさんが身代りでも良いんですよ?」

 「ネメッカ様の機嫌を損ねますよ」

 「それならロコッサを狙う方が損ねるでしょう」

 「そうですね。私は添え物ですね」

 「ユッミル、私がいれば他はいりませんよね?」

 「そうですがイーサ様はそれだと困る様ですよ」

 「今は困らないので気にしないで下さい」

 ユッミルとネメッカは夕食を終えると主導部屋に帰る。

 「待てません」

 ユッミルは服を脱ごうとするネメッカをベッドに押し倒す。

 「ユッミル、そんな言い方してますけど止めてますよね?」

 「ネメッカ様は服を着ていても気を起こさせるんですよ」

 「なるほど寒くなった時の予行演習ですか。ユッミルは意外と熱心ですね。」

 しばらくするとユッミルはネメッカを抱いたまま眠る。ネメッカはユッミルの手を服に取り込み、体をさらに寄せる。

 「ネメッカ様、朝起きたら寝ぼけてあなたの服の中に手を入れてましたよ。少々寝つきを悪くさせたかもしれませんがやはりあなたは魅力的ですね」

 「いえ、それは私がやりました。お蔭でよく眠れました。ただ、少し迷惑を掛けたかもしれませんね。私は大人しい女では無いですから」

 「ユッミルは塔か。シウ、あなたは好かれてるんだから何とか引き留めなさいよ」

 「昨日は出かけてていつの間にかいなくなってたわ。それにメシャちゃんが無理なら無理よ」

 「私だと強くは言えない。それよりミーハが甘えたら一番効くと思うけど」

 「まあ良いわ。メシャが寝てる時だったし仕方ないわね。シャーユの世話で疲れてただろうし」

 ユッミルは話し声がするが気にせず家に入る。

 「ユッミル、お帰り」

 「ユッミル殿、早く締めてくれ。恥ずかしい」

 「フーニャさん、またですか。私が入ってから服を脱ぎましたよね?」

 「何を言っている。脱ぎ始めたのは扉の空く音がした時だ」

 「僕じゃなかったらどうするんですか?」

 「脱ぐのをやめただけだ。それにしてもユッミル殿は、そのまま襲えばいいのに」

 「そうですね。フーニャさん、意外と綺麗な体をしてますね」

 「ほう、ユッミル殿は意欲的な様だな」

 「あの、フーニャさん。本当に嫌では無いんですか?」

 「大人だからな。顔が幼いだけで身長はそこまで小さくないだろう」

 「身長は小さいですがこちらは普通ですね」

 「ユッミル殿はやっと注文通りの行為に及んでくれたね」

 「ところで今日は狩りにご同行頂きたいのですが」

 「分かったよ」

 フーニャはため息をつきながら服を着直す。

 「メシャ、久々に出かけよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4節 すれ違い


 ユッミルはメシャとフーニャとミーハで森に向かう。

 「珍しい組み合わせだな。この三人なら力を合わせても君には勝てない。人気の無い森で私達を制圧してどうする気だ?」

 「フーニャさん、今日の仕事を終えればしばらく用済みなので森の奥にあなたを捨てましょうか?」

 「申し訳ありません。裸であなたの抱き枕を務めますからお許し下さい」

 「本当に静かに願いますか?」

 「仕方ないね」

 「ユッミル、さっさとそいつを枕にしちゃえば?襲ってもこないだろうし文句も言えなくなる」

 「いや、ミーハもだけど中途半端なんだよ。抱き込むには大きいけど抱き合うには小さい。メシャは抱き込みやすい。ネメッカ様は抱き合いやすい」

 「ユッミル、それはどういう意味?」

 「ミーハ?僕は君とかなりじっくりしたと思うけどあれが不満なの?抱きにくくてもしたのに」

 「そうね、忘れてたわ。それにあの事もあるしユッミルは軽口だった」

 「やはり、私とオーネ君だけが相手されていない」

 「分かりましたよ、正直に言いますとネメッカ様は口では側室を認めているとは言っていますがテーファさん以外だと機嫌は良くない。そして、最近はシャーユの事もあっている頻度が高い。ですからしないようにしています」

 「今日も来るんだったね」

 「ええ、午後から来ますね」

 「そうか、まあいい」

 フーニャはユッミルに見守られながら獣を数体狩る。獣の数は多くない様でユッミルは獣の捜索と誘き出しに苦慮している。狩ったのは数体だったっが帰ったのは昼過ぎであった。

 「お帰りなさい、ユッミル」

 ネメッカはユッミルに抱きつく。

 「ネメッカ様、私も良いかしら?」

 「まあ」

 「おかえり、ユッミル」

 「では私も。おかえり、ユッミル殿」

 「いや、あなたは一緒に出かけてたでしょう」

 シャーユはメシャーナの方に手を伸ばすのでメシャーナはシャーユを抱きかかえる。

 オーネは昼寝しているが他は昼食はユッミルを待っていたらしく席について昼食を食べる。

 「どうでしたか?」

 「獣が少なく少々苦労しましたけど問題は無いですよ。それよりも塔を空ける時間が長くなっていますが大丈夫ですか?ここには人がたくさんいますからネメッカ様がわざわざ塔から出向かなくても良い」

 「それだとユッミルが来ないですよね?」

 「そんな事は無いですよ」

 「そうですね。そろそろお任せすべきですね。ただ、塔の仕事は少ないんですけどね」

 「でしたらネメッカ様目当てで塔に通いましょうかね」

 「ユッミル、なら今、私にくっ付いて来ないのは何ですか?」

 「食事の邪魔をしたくは無いので」

 「はあ、まあ良いです」

 ユッミルは昼食を終えるとメシャーナの横でシャーユを抱きながらメシャーナと話をしている。

 「あの、ついついユッミルに甘えていると気が緩むので忘れがちですがリッネ様との事について話したいので塔へ来てもらえますか?」

 「そうですね。明日は忙しくありませんから」

 「ねえ、ユッミルさん。この集団はあなたが強いせいで緩み切ってるし森で夜営訓練でもしてみるのはどう?私も協力するわよ」

 「シウさん?シャーユはどうするんですか?」

 「一晩位誰かに任せても大丈夫でしょう」

 「そうですね。けど四人程度では駄目ですよ。ネメッカ様も駄目ですからね」

 「私は構わない。むしろ望むところだ」

 「私は条件に反するから駄目ね」

 「いや、まだ行くとは決まってないよ」

 「私は行けますよ」

 「メシャちゃんは行くわよね?」

 「うん」

 「それは構わないけど実力不足だから数には入らない」

 「後、一人という事ね」

 「分かりました。テーファさんに頼みます。それで駄目なら中止です」

 「良いわよ。だったら私と二人でテーファの家に行く。それで良いわよね?」

 「ええ、まあ。そんな事をしなくてもテーファさんの意向はきちんと聞きますよ。まあ断るでしょうけど」

 「なら行きましょう」

 夕食後にネメッカは帰宅する。シウはさっさとユッミルを誘い込んで風呂に入る。

 「シウさん、さっきの事はこうやって頼めば良かったのでは?」

 「無理な頼み事はしないわよ。それに今は休んでもらいたいし」

 「綺麗な女性が横でそうした姿でいると休めないと思いますが」

 「私の事はもう少し気ままに扱っていいのよ?」

 翌朝、ユッミルは塔に向かう。

 「ユッミル、おはよう」

 「おはようございます、ネメッカ様」

 「ええ」

 ネメッカは括っていた髪留めを取る。

 「えっと、急にどうしたのですか?」

 「そうですね。ユッミルがネメッカ様と私を呼ぶ度に身に着けているものを外していこうかと」

 「ネメッカ様、それだとすぐに身に着けるものがなくなりますよ」

 ネメッカは服の紐を緩める。

 「ユッミルがそうしたいならそれで構いません。私の次はイーサを脱がせますよ」

 「ネメッカ様、何を言っているんですか?まあ構いませんが趣旨がずれてしまいますよ」

 「イーサさん、ネメッカ様は話をする気が無いのですか?」

 ユッミルはネメッカを抱き寄せて服を脱げない様にする。

 「そんな事は無いと思いますが」

 「そうですね。ユッミルがこんな風に私を抱き寄せてくれるなら脱がなくても良いですね」

 「ですから話をお願いします」

 「分かりました。結論から言いますと私が月の塔に出向きます。すぐにではありませんがそれで時間を稼ぐのでユッミルは何も話を進めないで欲しいです」

 「そうですか。私も極力そうしますが約束はできません」

 「リッネさんがそんなに怖いのですか?」

 「それも無いとは言えませんが前にも言いましたけど説得されてしまいそうな気がします。けどそれはネメッカ様には良くない事。ですから逃げるのが上策だと思います」

 「分かりました。とにかく私が話をつけます」

 「お願いします」

 「ところで離さないのですか?」

 「ネメッカ様を抱いていたいのは駄目ですか?」

 「いえ、けど罰の執行を誤魔化そうとしていませんか?まあユッミルに抱かれるのは嬉しいので騙されておきますけど」

 ユッミルとネメッカは昼食後に月の塔に向かう。ユッミルはテーファとキッシャノを呼び出すと家に帰る。一方で月と光の主導が対面している。ユッミル達は帰宅する。

 「テーファさんにお願いがあるのですけど私はそこまで乗り気では無いですし無理に受けるのはやめて欲しいのですが夜営も含めて泊まりで森に行きたいのですが参加できますか?」

 「ユッミルさんと夜営ですか?」

 「えっと、3人程付き添いがいますしメシャーナも付いていくのですけど」

 「二人でないのは残念ですが構いませんよ」

 「テーファさん、一人で夜の森で眠った私を守れるんですか?」

 「そうですね、無理ですね。リッネさんの方針が少しだけわかりましたね」

 「分かりました。では当日はフェノも連れて行きます」

 「あの、私は?」

 「どちらでも構いません。人が少ないので夜に留守番して頂いても夜営に来ていただいてもどちらにしてもそれなりにありがたいですから」

 「では留守番しますね」

 「話はこれで終わりですか?」

 「ええ、行くのは明日なので帰ってもらっても」

 「ユッミル君、もう良いよね?」

 「ええ、もちろん帰って」

 テーファはユッミルを抱き留める。

 「待てない、ユッミル君最近来てなかったし」

 「えっと、忙しかっただけですからリッネ様にも呼び出されましたし」

 「いえ、責めている訳では無いです」

 ユッミルはテーファを抱き返す。しばらくして手は緩むが二人はゆったり会話している。シウやフーニャは露骨に不満そうに見つめてメシャーナはシャーユと一緒に見ている。結局、ミーハとキッシャノが昼食を用意していく。ユッミル達はゆったり席に着く。メシャーナが痺れを切らしてシャーユをユッミルの膝に乗せる。ユッミルは慌ててシャーユを深く抱く。

 「今日のお昼は何かな?」

 ユッミルはメシャーナの方を向く。メシャーナはシャーユ用の皿を二人の目の前に置く。ユッミルはシャーユの昼食を手伝いつつ昼食を終える。

 「メシャ、後は任せるね」

ユッミルはシャーユをメシャーナに預けると再びテーファに寄っていく。

 しばらくするとネメッカがやってくる。

 「ユッミル、あなたの要求にもっと応えますからあなたが断って下さい」

 「どうしたんですか?」

 「ユッミル、何かして欲しい事は無いんですか?」

 「ネメッカ様」

 「リッネ様は私からの返事を受けてくれません。私がユッミルに背けない事を見透かされています」

 「それはそう見えてもおかしくは無いでしょう」

 「ユッミル」

 ネメッカはユッミルに寄っていく。

 「成果は何も無かったのですか?」

 「月と光の交流内容を整理したわよ。リッネはきっと私をユッミルの手下と思ってる。まあ正しいしそれは良いけどそう思われたせいでユッミルを守れなかったわ。」

 「私の方針は変わりません。リッネ様と積極的な接触はしませんがリッネ様の計画に致命的な欠陥が見つかるまでは真摯に対応します」

 「ユッミル、お願いですからもっと要求して良いですから」

 「ネメッカ様、今でも十分ですよ。ですから一度私の要求を断って再請求した方が良いですよ」

 「そうですね。まあユッミルにそうやって見透かされても悔しくはありませんが駄目なんですね」

 「見透かして等いませんよ」

 「まあですができませんから。そもそも私が困ります」

 「とにかく僕から積極的にリッネ様に会いには行きませんから」

 「分かりました。ところで私は落胆して隙だらけですからさっさと服を脱がせて抱きしめればいいと思いますよ」

 「言ったら駄目でしょう」

 「言わないとしないでしょ?」

 「昼間から他にもたくさんの人がいるのでしないだけです」

 「まあ良いですけど私は寂しいです」

 「えっと、僕とは抱き合ってる訳ですから僕では駄目という事ですか?」

 「いえ、ユッミルに求められている気がしないという事です」

 「ですがネメッカ様はこの前は安らかな関係を求めている様な事を言っていましたよ」

 「そうですね。ですけどこういう日もあります。それ以前に…確かに前の私の要求は難しい事だったかもしれませんね。ユッミルに結婚してもらった私がユッミルに指図は間違っていました。しかもかなり贅沢な要求でしたね。ですけどいずれはそうなるので早くしたかったのかもしれません」

 「どうでしょうね?」

 「ユッミル、駄目ですよ。皆さんがいますし」

 「それは理由になりませんね」

 「なら仕方ありません」

 しばらくしてテーファが寄ってくる。

 「お二人共、気が済みましたか?」

 「えっと、そうですね」

 「テーファさん、止めないでと言いたい所ですが程々にしないといけないのでありがとうございます」

 「そうですね。それで今後はどうするんですか?私もユッミル君がリッネさんの要求を呑んでいくのは困ります」

 「まあリッネ様は僕を騙そうとしている訳では無いですからね」

 「まあそうですが」

 「露骨に言えば似た様な事を考えている事を見透かされていますね」

 「ユッミル?」

 「勘違いしないで下さい。私とリッネ様は魔王軍をこちらから討伐しないと事は根本的に解決しないと考えています。そして、それは強い術師がやるべきだと。ただ、私とリッネ様の違いはそれが可能であるかに対する見解です」

 「そういう事ですか。ユッミル、そうですね。本当は私も同じですよ。できないから駄目な方針扱いですけど本来はそういう選択も考慮されるべきですよね」

 「いえ、術師がそう思うのは無理もありません」

 「ええ、ですがお蔭で何とかなりそうです」

 「それは良かったです」

 「それはそれとして明日は森で楽しい事をするらしいですね。私達もユッミルがしたいなら昼間に寝て森で一夜を明かす趣向をやっても良いんですよ?」

 「しませんよ、ネメッカ様を危険には晒せません」

 「テーファ達は良いのね?」

 「いえ、今回は大人数ですしネメッカ様とは二人が良いしネメッカ様もそうでしょう?」

 「ユッミルは口が上手いですね、騙されておきます」

 夕食を終えるとネメッカは塔に帰還していく。キッシャノも月の塔に戻っていく。

 ユッミルはテーファとシウと触れ合いながら入浴してそのまま三人で眠っていく。朝早く、キッシャノとネメッカは家にやってきて朝食を共にする。

 「行くのは昼からですよ」

 「分かっていますよ」

 ユッミルはシャーユをメシャーナと世話している。

 「さて、それでは昼食後に行きますか」

 「あの、役割分担はどうするんです?」

 「えっと、メシャと僕とフーニャが獣を狩る。ソヨッハとシウは薪を集めて火の用意。テーファさんとフェノは情報収集と見回り」

 「夜もその三人か?」

 「いえ、夜は僕とフェノがそれぞれ取りまとめて交代で見張りですね。メシャも僕が寝てる時はお願いね」

 「で、君は一人で堂々と寝込みを襲うと」

 「そんな酷い事はしませんよ」

 「まあ酷くは無い。私は喜ぶぞ。ただ、君では無かった場合に備えて反撃してしまうかもしれないから手早く私の自由を奪ってから襲うと良い」

 「あなたは確かに別の班ですが僕とて一人では担当しません。テーファと二人で見張ります。他の人はフェノと先に見張ってもらいます。ただ、ソヨッハとフーニャは寝たければ寝ればいい」

 「私は駄目なのかしら?」

 「はい、僕がいない方はフェノさんとシウでないと対応できないかと僕がすぐ起きれるとも限らないしそれは無いに越した事は無い」

 「分かったわ」

 「ユッミル君、私は夜営中に耐え切れなくなったら抱いてくれていいからね。それ以上も構わないわよ。私はネメッカ様と違って主導じゃないし森でそういう事をしたと噂になっても困らないからね」

 「テーファさん、そう言われるとできなくなりますよ。まあ今回はしませんけど」

 「私は困るわ。ユッミル様と楽しんでる最中は警戒が緩んでしまうから。まあフェノさんがそれを容認して監視を手伝ってくれるなら別だけど」

 「シウさん、今回は時間帯が違いますし外だと怖がらせるのでしませんよ」

 「まあ良いわ。けど根本的には私は拒んでいないのだから耐えきれるのかしらね」

 「ネメッカ様が禁止してくれるなら耐え切れます」

 「ユッミル、私は危険な事をしないでとしか言えません」

 「じゃあ良いんですか?」

 「不本意ですが側室扱いである以上認めないといけません」

 「嫌なんですね?」

 「いえ、テーファとは構いませんし歓迎ですよ」

 「ユッミル君、ネメッカ様の意向は尊重するんだよね?」

 「ええ、ですけど夜営中は危険も多いですから」

 「けど密着したまま荒々しく抱いて戦えばいいと思う」

 昼食を終えてしばらくすると六人は塔に向かう。そこにはフェノがいて合流する。森の少し奥に着くとフェノは事前に言われた通りにシウと夜営地に良さそうな場所を探し始める。ユッミルはしばらく歩いて探していたが速度が遅いと察知して逃げられるのでフーニャをおんぶしてメシャーナと走って狩り始める。ソヨッハとシウは薪を集めていく。

 「ユッミル君、私の体を背中で感じて品定めはうまく行ったのかね?」

 「フーニャさん、振り回して悪かったですね。疲れたでしょうから休憩しましょう」

 「そうだな。ユッミル殿、抱いても良いか?その方が楽なのだ」

 「どういう事ですか?」

 フーニャは木に横たわるユッミルの腰を抱いて体を預ける。

 「それだけですか?」

 「ああ、流石に少し学習した。だが君は私の体と直接触れ合える機会を失した、気を変えるなら早い方が良いぞ」

 フーニャはユッミルの後ろにくっ付いて歩いていく。辺りが暗くなると火を焚いて獣を焼き始める。シウが野菜を持ってきており、調理を始める。フーニャとメシャーナはユッミルに甘えている。ユッミルは二人を抱えながら歪曲視野で周囲を監視している。フェノはゆっくり歩きながら辺りを警戒している。テーファは先に寝床を整備して仮眠している。ソヨッハも休息している。夕食ができるとシウとユッミルと小さい二人で先に食べ始める。

 「じゃあ僕はフェノを呼びに行ってくる」

 ユッミルは軽く夕食を食べるとフェノの方へ向かう。メシャーナが心配する間もなく二人は戻ってくる。ユッミルは座らずに監視をするがフェノと違ってメシャーナ達の見える範囲で辺りを周回している。程なくユッミルはソヨッハに声を掛ける。ソヨッハも夕食に参加する。

 「テーファさん、良いですよね?」

 ユッミルはテーファの布団に入ってテーファを抱く。

 「ユッミル君、どうして布団には入れて服の中には入れないの?」

 「そんな事は無いです」

 「ユッミル君、良い子ね。でも結局、服は邪魔だと思わない?」

 「けどこれから寒くなりますし」

 「布団もあるしユッミル君とじっくり抱き合えば温かいままだよ」

 「ですけど今は食事にしましょう」

 テーファが食べ始めるとユッミルも再び食べ始める。

 「この後だけど僕とテーファが先に寝ます。残りは見回りを…」

 「ユッミル様、毛布は4枚なのですが…」

 「そうか、そうなるとメシャも先に寝るか」

 「うん」

 夕食を終えるとシウは後片付けを始めてフェノは見回りに戻る。フーニャとソヨッハは休んでいる。

 「ユッミル君、寝る前に少し良いかな?」

 テーファはユッミルの手を軽く引いて歩く。二人は木陰で目立たない小さな池に着く。テーファは服を緩めていく。

 「寒くないの?」

 「浸かったりはしないからね。ユッミル君も私の体を綺麗にするのを手伝って」

 「えっと」

 「私の体が綺麗な方がその気になると思って」

 「今でも問題無いよ」

 「でもユッミル君は隙をくれないし」

 「そっか、でもテーファも洗いたいだろうしそれは好きにして」

 ユッミルは木に体を預けてテーファを待つ。ただ、テーファはそんなに時間が経たない内にユッミルの前に立つ。

 「戻らないの?」

 「ユッミル君は素直じゃない。ちょっとくらい相手して」

 ユッミルはテーファに頼まれて姿を隠してそのまま寝床に戻る。

 「ユッミル君、分かってたけどやっぱり我慢できないよ」

 テーファはユッミルの服を脱がせていく。

 メシャーナはユッミル達と一つ開けて寝る。しばらくして落ち着いたユッミルはテーファを寝かせると服を着せて自分も服を着直して寝る。

 ユッミルはその後眠そうなフェノに起こされる。ユッミルはテーファに掛けた手をゆっくり放す。まずは周囲を見渡す。ソヨッハとフーニャは寝ているがシウはじっと起きている。メシャーナは寝床にいるが起きていそうだ。

 「シウさん、寝ても良いですよ」

 「良いわ。もうすぐ朝ですし」

 「あの、ソヨッハやフーニャが起きるまでは帰れないですから」

 「分かりました、寝ますね」

 ユッミルはメシャーナに声を掛ける。メシャーナはすぐに起きる。ユッミルは続いてテーファを起こす。少し時間は掛かったが眠そうに立ち上がる。

 「そう言えば服着てる。ユッミル君、服はあなたでしょ」

 「えっと?」

 「私が寒そうだと思うならユッミル君が抱いてくれればいいのよ」

 「眠かったので」

 「そっか、私はユッミル君の眠気を消すほどの魅力は無いのね。ごめんなさい」

 「そう言われても困ります。とにかく見回りをしますよ」

 「そうね」

 メシャーナはユッミルの肩に手を添えるだけだがテーファは上半身ごと寄り掛かっている。音は明らかにうるさいが狩りをする訳では無いのでユッミルは黙認した。ユッミルはテーファを抱えながらも歪曲視野で広く監視するが特に問題は無さそうなのでシウ達の寝床に戻る。メシャーナは膝に座る。その後のしばしの沈黙の後に物音がする。ユッミルは周囲を確認するが何かが近づいている訳では無い。物音は止んだかと思いきや小さいだけで継続している。ユッミルが音源を詳しく辿ると寝床からであり、寝相の悪い女がいると思って気にしない事にした。ユッミルは肩に寄り掛かって眠そうなテーファを横目に心配そうにしているメシャーナに何事も無かったかのように話をしていく。

 「メシャ、寝れた?」

 「うん、二人のお楽しみを見たくなかったし」

 「テーファさんは夜営でする事が無くてしただけだよ」

 「言い訳は良いよ」

 「そうだね。けどテーファさんは程よい年頃でそれで迫られたら断れないよ」

 「それは良いけど場所を選んで」

 「うん、ごめんね」

 「分かってる、悪いのはユッミルじゃない」

 「メシャは偉いね。それよりも大人しく寝れない人がいるみたいなんだよ。少し皆の様子を見てきて」

 「ユッミル殿、どうして野暮なんだ?」

 「はあ、では僕があなたの服を着せようとしたらどうするんですか?」

 「抱く。寝ぼけたふりをして抱き寄せる。で、脱ぐ」

 「起こしたらどうするんですか?」

 「誘う」

 「私の対応は正解でしたね」

 「仕方ない。本当に寝るから寝込みを襲ってくれて良いよ」

 「襲いませんからさっさと寝て下さい」

 朝、ユッミルがメシャーナを促しつつ自分も立ち上がるとすぐさまテーファが手を掛けていく。

 「ユッミル君、メシャーナちゃんが膝にいると隙が無さすぎ」

 ユッミルもテーファの手を握る。

 「そんな事は無いですよ。けど夜営中にテーファさんに目が眩んだら危険ですから」

 「良いけどね」

 ユッミルはフーニャを起こす。服は脱ぎかけだったが普通に起こす。ソヨッハも起こす。シウとフェノは少し放置して軽く片付けて朝食を食べる。ユッミルはしばらくしてシウやフェノを起こす。二人も朝食を終えると本格的に片づける。結局、何事もなく家路につく。家に帰るとネメッカがシャーユを抱えて駆け寄ってくる。ネメッカはユッミルの後ろのメシャーナにシャーユを預けると一度動きを止めたユッミルを後ろから押していく。

 「えっと、どうしたんですか?」

 「お昼は用意しますから休んで下さい。流石に今日は私と寝てくれますよね?」

 「まあ良いですが明日朝は指揮所なんですから何もしませんよ。確か三日後の午後も指揮所でしたよね?」

 「はい。私でも構わないんですよ」

 「明日は僕が行きますよ」

 「それは今日は君の相手をする気分じゃないんだという事ね」

 「えっ」

 「別に怒っていません。恐らくテーファさんと何かしたでしょうから連日は疲れますよね」

 「そうは言いますがネメッカ様も毎晩あっさり服を脱がされて抱かれても嫌でしょう」

 「ユッミル、それは無理です。そのうち、私から脱いで抱きますからね」

 「言うだけは自由ですが喜んでおきますね」

 「私が脱いでたら不満そうだからしないだけです」

 「ご機嫌取りに脱がれても困ります」

 「ユッミルに気がなさそうな日は諦めるだけですよ」

 「波はありますけどいつもネメッカ様には魅力を感じていますよ。ですけど求めすぎるとうんざりするでしょうから毎回は控えているだけです」

 「それは私も同じです。私の方はうんざりしないと思いますけどね」

 「ネメッカ様は確かに毎回許してくれる雰囲気を出していますね。気遣い過ぎですよ」

 「私は毎回良いので機会を逃したくないだけです」

 「実際に毎回だと飽きるでしょうからそうはしませんけどね」

 「飽きると言うのはユッミルの話ですよね?」

 「ネメッカ様もだと思ってはいますが断定はしません。僕はネメッカ様との触れ合いがうんざりする様になるとまでは思っていませんけど」

 「まあ良いです。側室を抱えている以上は毎日は不可能ですから」

 「そうですね。であれば今はネメッカ様の演技に乗じて抱き込ませてもらいますね。あれだけ言ったんですから今日位は我慢して下さいね」

 「我慢というのは何の事か分かりませんがすると言ったんですから期待は裏切らないで下さいね」

 「良いですよ」

 「ユッミル殿、面倒だな」

 「よく分かりませんがあなたには負けます」

 いつに間にかテーファとキッシャノは帰っていた。昼食を終えるとフェノと主導夫婦は光の塔に向かう。

 「ユッミル様、お久しぶりです。元気そうで良かったです」

 「ネメッカ様、あなたの側近に嫌味を言われたので気分が覚めそうです」

 「イーサ、元気なのは私の方よね?」

 「まあそうですね」

 「だから言葉を掛けて邪魔をするのはやめなさい。ユッミル、上に行きましょう」

 ネメッカは全身でユッミルに抱きつきながら階段を上る。

 「本当に抱くだけなんですね」

 「ええ、これだけでも十分ですから」

 「私は違いますけど良いですよ」

 翌朝、ユッミルは指揮所に向かう。フェノが追い掛けて来たので仕方なく同行させる。幹部は氷と月の様だ。

 「ユッミル様、こんにちは」

 「えっと、こんにちは」

 「えっと、僕は月の幹部のメッレンです」

 「そうでしたか、私は向こうから出向いてもらう事が多いので申し訳ない」

 「いえいえ」

 「光と交流して頂いていますがご負担では無いですか?私の知人には月に所属する人もいますがリッネ様に近い方と塔にはあまり出向かない方位しか知り合いがいないのですよ」

 「ええ、大した負担では無いですよ。そもそもこちらから積極的に提案した事です」

 「それはそうですが気にはなるんですよ」

 ユッミルはフェノと分担して魔王軍を偵察するが奇妙な事に魔王軍の前線は波打っている。

 「そう言えばリッネ様は魔族領討伐に熱心ですが団として動く計画はあるんですか?」

 「私には分かりません。しかし、リッネ様に比類する実力者は月にはいませんからそれは簡単では無いと思います」

 「リッネ様の意向には多少の異論も無いのですか?」

 「足手纏いにしかならないと断る人が大半でしょうし主導様もそういう要求はしないでしょうから特段気にしていないかと」

 「そうですか」

 ユッミルは難しそうな顔をしながらシーリュノと交代して指揮所を後にする。

 

 

 


少し時間が空きましたので予定よりは前倒しました。少し走り過ぎたかとも思いますが。この調子だと次は8月後半までも可能かもしれません。ただ、その後は10月中旬以降かと。

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