テンプル・ホーリィの7本槍
司祭長
「あ! アカマルが!」
オビト達一行が逃げ込んだテンプル・ホーリィを盗賊団『朱屍党』が襲う。
そこでテンプル・ホーリィの司祭長は、オビト達を守ろうと雇いの守護霊使い、アカマルを立たせて撃退しようとしたが、そのアカマルが一瞬で消失したので動揺した。
コウセイ
「やはり、僕も出ましょう」
だが、このコウセイの申し出が、司祭長をさらに恥じ入らせた。
司祭長
「な、何をおっしゃいますか、コウセイ皇子。 は、ははは、あのアカマルは我がテンプル・ホーリィ7本槍の中でも最弱の男。 今のは、その、小手調べです。 盗賊団の実力を測るための。 ししし、しかし、盗賊団のクセに守護霊を使うとは小癪な。 で、でで、でもご安心ください。 こ、こここ、今度はテンプル・ホーリィ7本槍の、残り6人全員に戦ってもらうので、正面の盗賊団など、びびび、秒で撃退してみせましょう」
そこで司祭長が呼び出したのが6人の守護霊使いである。
『巣無しの蜘蛛』を使う破戒僧、『石造りの赤魚』を使う召使娘、『隠された伏蔵』を使う未亡人、『片目蛙』を使う少年、『汗かく礼盤』を使う貧坊主、『雨だれに耐える石』を使う素浪人の6人である。
テンプル・ホーリィの7本槍――
1人が既に斃されていて、残る6人の守護霊使いがテンプル・ホーリィの正門前に並んで立つ。
レッグウィング
「大将、あいつら、守護霊使いですかねぇ?」
ヤスケ
「だったら、どうする? いくぞっ! 野郎どもは弓矢でオレ達を援護しなっ!」
ヤスケとレッグウィングの守護霊使いチームが駆け出す。
ヤスケやレッグウィングの、守護霊使いとしての霊力は相当なものである。しかし、今度は相手の守護霊使いの数が多い。勢い良く出ていったのは良いものの、テンプル・ホーリィの7本槍に、次第に押され始めた。
『巣無しの蜘蛛』が蜘蛛の糸を飛ばしてヤスケやレッグウィングの動きを制限する。『石造りの赤魚』は地面から敵の動きを絡め取る能力を使う。『隠された伏蔵』や『雨だれに耐える石』は防御系、ヤスケの『原始の経典』やレッグウィングの『氷柱の聖女』の攻撃を巧に防ぐ。アカマルの『天井の鎌』が斃されているため攻撃力に欠けるものの、『片目蛙』や『汗かく礼盤』の水系攻撃に苦戦する。
そこへ――
金属様の綱が伸びてきて、ヤスケとレッグウィングの身体を絡め取った。
オッグ=アイランダーの守護霊、紫色の勇者『覇王の長子』の辰砂腕だ。
オッグ
「ヤスケ君! やはり数でこちらの分が悪い。 ここはいったん退くべきだ」
辰砂腕でヤスケとレッグウィングの身体を絡め取ったオッグは、このまま2人を本陣に連れ戻した。
ヤスケ
「うるせぇ! オレが考えていたことを先に言うんじゃねぇ。 指示はオレが出す! 撤退! ひとまず撤退だ!」
盗賊団『朱屍党』が引いていく。その様を見て、テンプル・ホーリィの司祭長は調子づいて小躍りした。
司祭長
「それ! 7本槍よ! 今こそ追撃だっ!」
命令を受けた『片目蛙』の少年が、先頭きって『朱屍党』を追いかけていく。
『片目蛙』の少年、消失。ヤスケの守護霊の能力、底無しの落穴に落ちたのだ。
ヤスケ
「馬鹿め。 一人で突進してくるからそうなる」
司祭長
「ひっ!」
目の前でもう1人の7本槍が斃されて、すっかり怖気づいてしまった司祭長は、盗賊団が退却するなら追いかける必要はないと言い訳をして、残る5人の守護霊使いに撤収を命じた。
ここは、数で優勢な内に、盗賊団を全滅させておきたいところだったが――
司祭長の指揮振りを見て、不安に思うコウセイであった。
そのコウセイの不安どおり、『朱屍党』は、攻撃を放棄して撤退したのではなかった。次の攻撃の機会を狙って、青空の下で作戦会議をしているところだ。
力攻めは愚――
そのように悟ったヤスケは、テンプル・ホーリィを奇襲する算段を立てている。
オッグ
「奇襲するのも良いが、今はもう少し待った方が良い」
ヤスケ
「『待つ』って貴様、何を待つんでぃ?」
オッグ
「それは――彼女さ!」
青空の下で作戦会議をしている数十人の盗賊団の前に、愚鈍そうに見える少年を連れた、三十路ぐらいの女性が近づいて来た。
オッグは、彼女が来るのを待っていた。
テンプル・ホーリィの7本槍って、法隆寺7不思議のことですか?




