二刀流
オッグ=アイランダーは、オビト暗殺の使命を負っているようだった。また、ナーニャとシラクを保護しようとしていた。
盗賊団『朱屍党』に襲われてクレイマスタ邸から逃げて来たオビトの前に現れたオッグは、同行のマーモ=クレイマスタ、ナーニャ、シラクの間に割って入り、オビトと引き離そうとする。
幼いナーニャとシラクは、この突然の異常事態に恐怖し、泣き叫ぶ。
オビト
「漆黒の剣士! 『王の愛者』!」
ヒロミ
「輝ける闘士! 『太陽の法衣』!」
相手は見覚えがある。クラハシの丘古墳で出会った盗掘者だ
つまり敵だ。
オビトとヒロミはそれぞれの守護霊を召喚し、臨戦態勢をとる。
オッグ
「ならば自分も! 紫色の勇者『覇王の長子』!」
オッグも守護霊使いである。その傍らに大陸風の装束をした快男子の霊体が現れた。
オッグ
「能力、辰砂腕!」
オッグの守護霊『覇王の長子』が腕を振るうと、その肘から先が水銀のように流体金属化してオビトめがけて延びて行く。
オビト
「霊刀!」
オビトはこれを『王の愛者』の能力で受け止めようとする。
すると流体金属化して伸びて来る辰砂腕は、『王の愛者』の霊刀を避けるように湾曲し、そのまま守護霊の眉間を貫こうとする。
ヒロヨ
「オビト! 危ない!」
ヒロヨが『太陽の法衣』の火焔光を発射。
これが髪一重のところで『覇王の長子』の辰砂腕を弾く。
オッグ
「ぬぅ、仕留めたと思ったが。 さすがに相手が2人ではややきついか」
ヒロヨ
「気を付けて! 彼の守護霊は腕が自在に伸びるのよ」
オビト
「知ってる。 少し、間合いを取る」
オビトはオッグと3メートルほど距離をとった。これだけ離れていれば、『覇王の長子』の辰砂腕が伸びてきても対応することができる。
だが――
オビトの守護霊は霊刀が切り札である。
近接攻撃型だ。
これだけ距離をとっていれば、守りはできるが攻撃ができない。
オビトとオッグがにらみ合う。
ヒロヨ
「そういうことなら私が相手!」
ヒロヨの『太陽の法衣』が火焔光で攻撃を仕掛ける。
オビトの『王の愛者』が刀による近接攻撃型の守護霊と言うのであれば、ヒロヨの『太陽の法衣』は遠距離攻撃型だ。
だが、遠距離攻撃型は命中率に劣る。
『太陽の法衣』の火焔光は、オッグの『覇王の長子』が硬化した辰砂腕で叩き落す。辰砂腕は、腕を金属化して自在に形状を変えていく能力だ。流体のように動くので見た目には柔らかそうに見えるが、実体は金属なので強い硬度をもっている。『太陽の法衣』の火焔光を叩き落せるぐらいの強度はある。
だが、叩き落す動作が必要となる。
ここに、隙ができる。
オビト
「霊刀!」
『覇王の長子』が火焔光を叩き落しているその瞬間、『王の愛者』が間合いを詰めて、右手に握った霊刀を振り上げた。
オッグ
「小癪!」
『覇王の長子』の辰砂腕は、右腕だけが使える能力ではない。今度は左腕の辰砂腕で、振り上げた霊刀でがら空きになった『王の愛者』の腹を貫こうとした。
攻撃は最大の防御ということである。
能力が利き腕だけのものではないというのは、オビトの『王の愛者』も同じである。『王の愛者』は左手の霊刀を発動し、『覇王の長子』の辰砂腕を受け止めた。
オビトとオッグの守護霊バトルは、二刀流同士の闘いとなった。




