切断と回復の応酬
ウゴウ=ウィスタプランは、オビトを見くびっていた。
見た感じ、オビトは自分の守護霊の能力を十分に把握していないようだ。
そのオビトがいかに能力に目覚めようとも、守護霊使いとして修練を積んでいる自分に傷をつけることはできないと考えていた。
それが、いとも簡単に、己の守護霊琥珀色の大賢者『知恵ある商人』の右腕が斬り落とした。
ウゴウ
「許さんぞ! 許さんぞぉ! 文殊菩薩とも対等に渡り合える崇高なるわが守護霊『知恵ある商人』を、その汚らわしい錆刀で傷つけるとはぁ! 絶対に許さぬゾォ!」
『知恵ある商人』が、オビトの黒装束のトーテムに向かって猪突猛進。今度は、左腕が斬り落とされた。左腕、蒸発。ウゴウが、両肩を押さえて、叫ぶ、宣う。
オビト
「無駄です。 この霊刀に斬れぬものなどありません! どうか、ここは、見逃してくれませんか?」
ウゴウ
「いい気になるなよ! 貴様の霊刀に斬れないものなどないなどと! その減らず口! 二度ときけないようにしてやるわ!」
その気迫――オビトと黒装束の守護霊が1歩引く。
斬り落とされた『知恵ある商人』の傷口が液状化、そこから新たな腕が現れた。
「能力、超回復」と、ウゴウが言う。守護霊が受けたダメージを、一瞬で回復させる能力だ。
ウゴウ
「無駄なんだよ、お前の攻撃は。 超回復が、受けたダメージを一瞬で回復させる」
そこで『知恵ある商人』が再度の攻撃。
オビト
「霊刀!」
黒装束のトーテムが再度『知恵ある商人』の腕を切断。
ウゴウが苦痛で呻く。
オビト
「お義兄様に超回復があったとしても、守護霊が受けた痛みはお義兄様に伝わります。 それ以上近づけば、もっと斬りますよ」
ウゴウ
「なめるなよ。 超回復」
『知恵ある商人』が切断された腕を回復。
そして、斬りたければ斬れば良いと、『知恵ある商人』がオビトの守護霊に近づいていく。
オビト
「霊刀!」
ウゴウ
「超回復!」
オビト
「霊刀!」
ウゴウ
「超回復!」
切断と回復の応酬となった。
霊刀も超回復も、これを使用すると精神力を消費する。したがって、霊刀も超回復の応酬になると、精神力に優れる方が勝つことになる。
オビト
「霊刀!」
先に精神力が尽きたのは、オビトの方だった。霊刀のパワー不足に陥り、殴りかかる『知恵ある商人』の腕を落とし切れない。
ウゴウ
「貴様の精神力もそこまでかっ!」
『知恵ある商人』がその右拳でオビトの守護霊に渾身の一撃。
黒装束の守護霊が大きく吹き飛ばされた。