漆黒の剣士『王の愛者』
抜け道である洞窟を通って屋敷から逃げて来たオビトたちを、盗賊団『朱屍党』の別動隊が待ち伏せしていた。
その隊長はレッグウィングと名乗った。守護霊使いである。
盗賊団が待ち伏せする中、なんとか活路を見出そうとヒロヨが守護霊を召喚して飛び出した。
レッグウィングの部下は、ヒロヨに向けて弓矢を放とうとする。
ところがレッグウィングは、抜け道の出口の洞穴を「見張ってろ!」と部下に命じる。
盗賊団の狙いは、その中から逃げ出そうとしている、オビトなのだという。
そのオビトは、一人飛び出して行ってヒロヨの後姿を見て、動揺していた。
ヒロヨは、囮を勝って出たのだ。
守護霊を召喚する。
オビトは集中した。
守護霊は、その二つ名にイメージとなる言葉を添えて召喚する。
オビトの守護霊の二つ名は『王の愛者』、イメージは、「漆黒の剣士」。オビトは唱えた。
オビト
「漆黒の剣士『王の愛者』」
するとオビトの傍らに、剣士の霊体が現れた。
オビト
「さぁ、行こう」
その守護霊に声をかけ、オビトは洞穴の外に向けて足を踏み出した。
手下A
「あ、出て来たぞ」
手下B
「少年だ!」
手下C
「それ! 矢を放て!」
オビトが洞穴から飛び出すと、無数の矢が飛んできた。
殺られた!
それでオビトは悲鳴を上げて後ろにのけぞるも、飛んできた矢が自分の身体に届かない。
オビトの守護霊、漆黒の剣士『王の愛者』がその盾となって、迫る弓矢をことごとく叩き落としているのだ。
オビト
「守護霊が――動く――」
守護霊に守られているとはいえ、弓矢の雨の中、ひとつでも間違えると流れ矢が当たって大怪我だ。オビトは守護霊のコントロールに集中する。
レッグウィング隊長の手下たちは、目の前で弓矢が不自然に弾け飛ぶ様に驚愕し、オビトがこのように委縮していることに気付かない。
守護霊は、守護霊使いにしか視ることはできない。
だから手下たちは、オビトの前で守護霊が盾になっていることが分からない。
手下B
「何だ何だっ?」
手下C
「届かないぞ!」
手下A
「視えない壁でもあるのか?」
手下たちは、魔に魅入られているかもしれないと恐怖を感じつつ、再び連続で弓矢を放つ。オビトの『王の愛者』は、それらをすべて、素早い動きで受け止める。空中で飛んでいる弓矢を掴み捕る。
その動作は、守護霊使いでない手下たちに視ることはできない。
手下B
「まさか!」
手下A
「弓矢が――弓矢が静止している。」
手下C
「隊長! 弓矢がっ! 弓矢が効きません!」
その隊長レッグウィングは、現在、ヒロヨと守護霊バトルである。
レッグウィングの守護霊は、純白の聖戦士『氷柱の聖女』。対するヒロヨの守護霊は、輝ける闘士『太陽の法衣』である。『氷柱の聖女』の氷弾と『太陽の法衣』の火焔光の応酬である。
その格闘の合間、レッグウィングが手下に声をかける。
レッグウィング
「お前たち! ちったぁ考えろ! 守護霊だよぅ! その少年も守護霊使いなんだよぅ!」
手下A
「それではダメです! オレたちじゃぁ、守護霊使いに敵わないぃ!」
レッグウィング
「そう簡単に諦めるんじゃぁねぇ! 見たところ、その守護霊は、小娘の守護霊と違って、飛び道具が使えねぇみたいだ。 術者のガキに向かって一斉に斬りつければ、誰か1人ぐらい仕留める奴も出て来るだろうよぅ!」




