やるわ それしかアスカを助ける方法がないのであれば
少年リュウゾウ=ウォータとの蹴鞠勝負に負けてしまい、アスカは木片人型にされてしまった。
これを持ち帰ろうとするリュウゾウを、ヒロミが引き留める。
ヒロミ
「待ちなさい!」
リュウゾウ
「何だい?」
ヒロミ
「アスカの木片を、返しなさい!」
リュウゾウ
「返してどうすると言うんだい? これを返したところで、お姉ちゃんにはこれを元に戻すことなんてできないじゃないか。 無駄だよ。 だから、これは、ボクがもらっておくよ」
ヒロミ
「それじゃぁ、どうしたら元に戻せるというの?」
リュウゾウ
「元に戻すだって? それは簡単なことさ。 ボクとこのボールで蹴鞠勝負をすることさ。 そしてボクに勝つことさ。 ボクの守護霊は、蹴鞠勝負に勝って霊力を増幅させているんだ。 逆に勝負に負ければ霊力を失うことになる。 だから、ボクとの蹴鞠勝負に勝てば、お姉ちゃんは元の姿に戻ることができる。 でも、本気かい? ボクの守護霊水色の獅子『見本市の遊戯』は、蹴鞠の達人だよ」
ヒロミ
「やるわ! それしかアスカを助ける方法がないのであれば」
リュウゾウ
「そうかい? じゃぁ、行くよ!」
リュウゾウは『見本市の遊戯』に、ヒロミに向かってボールを蹴り上げさせた。
ヒロミに準備の間も与えない、それは素早い蹴りだった。
勝負の合意をしたばかりのヒロミの戦闘態勢が整う前に、素早くポイントを奪ってしまおうという作戦だ。
ヒロミ
「白銅の獣聖『迷い犬』!」
ヒロミが守護霊を召喚する。
戦闘力も器用さもない守護霊だが、『迷い犬』は敏捷性に優れる。
リュウゾウは不意打ちを狙ったが、ボールは『迷い犬』が余裕をもって拾うところとなった。
『迷い犬』は器用さが足りない。だから、リフティングの動きはどこか危なかしい。だが、ボールが不意の方向に飛んでしまっても、素早くこれに対応できるだけの敏捷性があった。
だから、そのリフティングする様は、見た目よりも安定している。
何度か自分でリフティングを続けていると、だいぶ慣れて来たのか『迷い犬』のボールを蹴る様は、見た目も安定するようになった。
ヒロミ
「なるほど、蹴鞠というのは、こうやるのね。 それ!」
『迷い犬』がボールを『見本市の遊戯』に向かって蹴り返す。
リュウゾウ
「お姉ちゃんもなかなかやるじゃないか。 でも、大丈夫かい? この勝負に負けたら、お姉ちゃんも、さっきのように人型になってしまうんだよ」
ヒロミ
「私は負けないわ。 さぁ、さっさとボールをこっちによこしなさい」
リュウゾウ
「そう慌てないでよ。 それ!」
『見本市の遊戯』が、『迷い犬』のはるか手前にボールが落ちるように蹴り上げた。
ヒロミ
「そういう手は、『迷い犬』には効かないわ」
敏捷性に優れる『迷い犬』が余裕をもってボールの着地点に行き待ち構える。ボールを簡単に拾うことができた。
リュウゾウ
「フーン。 なかなか上手だね。 これでゲームが面白くなるよ」




