逃げられないよ
ウゴウ=ウィスタプランに父帝由来の刀で斬り捨てられようとしたとき、守護霊と呼ばれる黒装束の守護霊が出現してオビト皇子の身が守られた。ウゴウも、守護霊を召喚して、これに対抗する。ウゴウは、その守護霊を琥珀色の大賢者『知恵ある商人』と呼んでいた。
ウゴウ
「守護霊ならね、オレも召喚することができるのだよ。 これは親父から授かった大経典だ。 これに守護霊の魂魄が封印されている。 経典にオレが霊気を注入すれば、こうやって、守護霊を呼び出せるというわけだ」
『知恵ある商人』は、ウゴウが取り出した一片の巻物から現れた。とするならば、ウゴウが手にするその巻物、経典を奪えば、その守護霊も奪えるということか。
オビトの黒装束の守護霊が、ウゴウが持つ経典を奪おうとする。
ウゴウはこれをさっと回避す。
ウゴウ
「君は、この経典を奪えば、オレの守護霊も操れるとでも思っているのかい? 無駄だよ。 この守護霊の魂魄が封印されたこの経典だけでは、守護霊は操作できない。 馬に乗るには相当の練習が必要なように、経典に封印された守護霊を操るには相当の修行が必要なのだ。 オレはそれを、やってきた!」
そしてウゴウの『知恵ある商人』が、オビトの黒装束のトーテムの前に立ちはだかる。
『知恵ある商人』の手拳ラッシュ。
黒装束の守護霊はこれを両手でガード。
だが『知恵ある商人』の手拳ラッシュに圧され気味であり、ついには吹っ飛ばされた。
オビトは、腹に不快の衝撃を感じた。
ウゴウ
「守護霊と術者は、霊気で結合されている。 ゆえに、守護霊がダメージを受ければ、術者の霊気に衝撃が生じることになる」
オビトは不快な己の腹をまさぐる。
同時に、彼は自分の守護霊と義兄ウゴウの守護霊との力の差を計った。
義兄は守護霊使いとして相当の修練を積んでいるようだ。自分は、守護霊を自由に召喚することもできない。
勝ち目は少ない。
そこでオビトが思いついた方策は、次の一手である。
逃げる!
オビトは部屋の出口に走る。
ウゴウ
「逃げられないよ!」
『知恵ある商人』が、素早く回り込んで出口を塞ぐ。『知恵ある商人』は俊敏な動きをする。これから『にげる』を選択することは難しそうだ。
とすると、残されたオビトの方策は『たたかう』しかない。ここで戦って勝たなければ、本当に殺されてしまうのだ。
今度は黒装束の守護霊が手拳ラッシュ。
ウゴウ
「オイオイオイオイ! 自棄になっては勝てないよ。 芯のない攻撃は、かえってスキをつくって有害と知れ!」
ウゴウは、これを避けるのも面倒と、その手拳のすべてを守護霊の体で受け止める。
ウゴウの『知恵ある商人』には目立ったダメージがなさそうだ。
ウゴウ
「どうした? もう終わりか? ひょっとしてお前、攻撃の方法も知らないのか? ならば教えてやる! 攻撃とは、こうするものだ!」
『知恵ある商人』がオビトの守護霊の腹に渾身の一撃。
ボディブロウを喰らった黒装束の守護霊が、大きく吹き飛ばされた。
オビトは、呼吸が止まるほどの衝撃。
『知恵ある商人』が、吹っ飛ばした黒装束の守護霊の頭蓋を片手でつかみ、持ち上げた。
オビトの守護霊は、ウゴウの守護霊に捕えられた。