琥珀色の大賢者『知恵ある商人』
フヒト=ウィスタプランは、名刀黒作懸佩刀を授けて三男のウゴウ=ウィスタプランにオビト皇子を暗殺するように命じていた。オビトは、ウゴウに斬り殺されようとしたところ、黒装束の守護霊を召喚してこれを防いだ。
守護霊とは、術者が操ることができる一種の霊体である。人々の信仰心が結集して異能をもった霊体が形成される。これが守護霊である。
守護霊を操る術者のことを守護霊使いという。あるいは術者という。守護霊は特殊な霊体であり、よほど強い霊気を発揮しない限り、守護霊使いにしか視ることができない。
オビトを殺そうと振り上げたウゴウの刀が、オビトの黒装束の守護霊に受け止められた。
ウゴウ
「おまえ、守護霊を使えるのか?」
オビト
「たまに、現れます」
そしてオビトの守護霊がウゴウの腹を蹴る。
ウゴウが突き飛ばされる。さっと受け身をとる。そして、ゆっくりと立ち上がる。
ウゴウの殺気に怯え、オビトは3歩だけ後退した。
後退するオビトに、ウゴウは1歩近づく。
ウゴウ
「貴様のような腰抜け、造作もなく殺せると思っていたが。 だが、貴様が、守護霊使いで良かった。 貴様の如くか弱き者を殺めては寝つきが悪くなる。 貴様が守護霊使いとなって脅威となれば、こちらも遠慮なく殺れるというものだ」
ウゴウはオビトに寄せて、刀で斬り付ける。
これをオビトの守護霊が手甲ではじく。
ウゴウ
「なるほど。 良い動きをする守護霊だ。 それでこそ、殺し甲斐があるというもの」
オビト
「なぜ? なぜ、自分が殺されなくてはならないのですか?」
ウゴウ
「親父に聞け! 生きてここから出られたらなぁ!」
ウゴウが刀を振り回す。
ことごとく黒装束の守護霊にはじかれ、防がれる。
オビト
「無駄です! 守護霊に守られている自分は、誰からの攻撃も通用しません!」
ウゴウ
「守護霊に守られているだって? だから誰からの攻撃も通用しないだって? 浅薄! 今の攻撃が、貴様の守護霊の動きを見るためにした、試し打ちだったことが分からないかっ?」
刀による攻撃は無駄と、ウゴウは今度はオビトと間合いをとった。
ウゴウ
「オビト君。 君はひょっとして、守護霊を扱えるのが自分だけだと思っているのかい? 君のような腰抜けでも守護霊の加護があるんだ。 だったら、由緒正しいウィスタプラン家の血を引くこのオレも、守護霊が扱えるとは思わないのかい?」
オビト
「お義兄様の、守護霊とは?」
ウゴウ
「それでは見せてあげよう! 我が守護霊! 召喚する! 琥珀色の大賢者『知恵ある商人』!」
ウゴウは刀を納め、懐中から一片の巻物を取り出した。これを開くと、中から琥珀色のジャケットを羽織った紳士が飛び出した。これがウゴウの守護霊、琥珀色の大賢者『知恵ある商人』である。