ストロングフリーダム! 私を守りなさい!
アスカ
「見損なったわ。 あそこまで薄情な子だったとは!」
幼馴染のオビトが命を賭けた旅に出るのだ。そこで一緒にこれを追いかけようと誘ったのに、従姉妹のヒロミは「そこは自分たち子供の出る幕ではない」と言って断ったのだ。
そうならば仕方がない、自分だけで追いかけようと、アスカはひとりフヒト=ウィスタプランの邸宅を出ようとする。
だが待てよ――
途中で誰かに見つかれば、面倒だ。ならばと、裏手の外塀の低くなっているところを目指し、隠密に邸外に抜け出すのが良いのではないか。
そのように思案しているアスカを後ろから呼び止める者がいた。
その声は、サウナ棟に監禁されていたアスカを逃がしてくれた執事のイノテ=ウェストマンだった。
イノテ
「おやアスカ様。 こんなところで何をしているのですか?」
アスカ
「あぁ、イノテ。 ちょうど良いところに来てくれたわ。 これからオビトを追いかけるところなの。 でも、屋敷の者に見つかると面倒だわ。 うまい方法はないかしら」
アスカは、イノテが自分の手助けをしているものと思っている。
そこへ、通りすがりのメイドAが登場した。
メイドA
「あ、アスカ様。 こんなところに居たのですか! 今はサウナ棟で汗を流すようにとの、ミチヨ様のお言い付けを忘れたのですか?」
アスカがサウナ棟から逃げ出したことは、屋敷中に知れ渡っていた。そこでメイドAは、アスカの母親、ミチヨ=マンダリナから、彼女を探すよう命じられていたのだ。
イノテ
「召喚する。 銀灰の文士『博学の書生』」
イノテが召喚した守護霊が、メイドAを後頭部から殴り倒した。
メイドAが、頭から血を流し、気絶する。
アスカ
「イノテ! 何を! 何も、そこまで乱暴なことをしなくても!」
イノテ
「何をなされるのですか、アスカ様。 いかにアスカ様といえども、有無を言わさず家人を傷つけるのは乱暴ではありませんか?」
アスカ
「?」
理解できない――今、目の前で、メイドAに暴行を加えたのはイノテの守護霊だ。ところがイノテは、アスカがそれをしたと言う。
イノテ
「アスカ様は、この屋敷から抜け出すところをこのメイドに見つかって、ご自身の守護霊でこちらのメイドを殴りつけたのです。 あぁ、いかにアスカ様といえども、乱暴な振る舞いは、この私が許しませんよ」
アスカ
「何を……言っているの?」
アスカは、イノテの支離滅裂な発言に身の危険を感じ、上着の内ポケットに手を入れる。そこには五鈷金剛杵、アスカが守護霊を召喚するための道具が入っている。
イノテ
「問答無用! 行け! 『博学の書生』!」
イノテの守護霊がアスカに襲い掛かる。
アスカは、五鈷金剛杵を取り出して、振り上げた。
アスカ
「出でよ! 紅蓮の戦士! 『不動の解脱者』! 私を守りなさい!」
瞬時、イノテの守護霊『博学の書生』の前に、アスカの守護霊『不動の解脱者』が立ちはだかった。
全身に紅蓮の炎をまとった、筋骨隆々の僧兵戦士だ。これが、アスカの守護霊『不動の解脱者』だ。




