表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/158

もうやめて

 右足首に衝撃を体感し、キョウはアァと激痛の悶え声をあげる。


 守護霊(トーテム)は攻撃を受けると、その霊気が術者(マスター)に伝わり、その肉体に相応の衝撃が走る。

 今、キョウの守護霊(トーテム)、唐紅の鬼神『炎の戦士(フレイムファイター)』は、対するオットー=ハイストンの守護霊(トーテム)、呂色の老兵『連なる瞳(パピルシリーズ)』の攻撃を受け、その右足首を切断された。その衝撃が、術者(マスター)のキョウに伝播したのだ。


 オットーの『連なる瞳(パピルシリーズ)』の能力(スキル)転移(メタスシス)である。空間に入口と出口の2つの(ゲート)を作り、この(ゲート)をくぐって瞬間移動する能力(スキル)である。物がこの(ゲート)を通過している途中で能力(スキル)を解除するとどうなるか。物は、入口を通らなかった部分と、出口を過ぎた部分とで、分断されることになる。


 キョウは、一瞬早くその罠を見抜いて(ゲート)から抜け出そうとしたが、右足首をとられてしまった形となった。それで、右足首が切断されたのである。


オットー

「チッ、思ったよりも機敏な奴め」

ゲン

「僕がいることを忘れてもらっては困る!」


 今度は、ゲンの守護霊(トーテム)、山吹色の手品師(トリックスター)偉大な神鳥(グレイトピーコク)』の攻撃である。『偉大な神鳥(グレイトピーコク)』の能力(スキル)神木の鞭(セイクリッドウィップ)、草木の蔓を発して自在に攻撃する。炎玉(ファイヤボール)雷撃(サンダー)のように遠隔攻撃とまではいかないが、それなりに長い間合いで攻撃をしかけることができる。


挿絵(By みてみん)


 神木の鞭(セイクリッドウィップ)の連続攻撃。

 しかし、いずれも、ことごとく『連なる瞳(パピルシリーズ)』に防がれる。その攻撃が転移(メタスシス)(ゲート)で別の場所に瞬間移動させられるのだ。


 ゲンは、己の背後から神木の鞭(セイクリッドウィップ)の気配を感じる。


 オットーは、ゲンの攻撃の行き先が彼の背後にまわるよう、転移(メタスシス)(ゲート)を発生させているのだ。


 しかしこれはゲンにおいて想定の範囲内である。転移(メタスシス)で攻撃をかわされるとみるや、すぐに神木の鞭(セイクリッドウィップ)を手元に戻すので、紙一重で攻撃を受けることはない。


オットー

「しかし、そういう中途半端な攻撃では、僕に当てることはできないよ」

ゲン

「だが、数を打てば必ず隙ができる。 僕は、その隙を突いて貴方を倒すッ!」

オットー

「そうかい。 でもね、僕はこういう事もできるのだよ」


挿絵(By みてみん)


 その瞬間、オットーがその守護霊(トーテム)と共に姿を消した。


 転移(メタスシス)を使って、瞬間移動をしたのである。


 その行き先は――


キョウ

「ゲン! 後ろだッ! お前の後ろに敵がいるッ!」

オットー

「今更気付いても遅いワァッ! そして今ッ! 貴様はオレの間合いにいるッ!」


 『連なる瞳(パピルシリーズ)』がゲンの足元に転移(メタスシス)(ゲート)を作る。その出口は近くの空中だから、地面を失ったゲンの身体は落下することになる。


 その半分ぐらい落ちたところで(ゲート)を解除すれば、ゲンは上半身と下半身を分断されることになる。


 だがゲンは落ちない。神木の鞭(セイクリッドウィップ)が彼の身体を絡め取り、持ち上げているのだ。だから、ゲンが転移(メタスシス)(ゲート)に落ちることはない。


ゲン

「貴方の転移(メタスシス)は、守護霊(トーテム)の近くにしか(ゲート)を作れない。 そういう貴方が僕を倒すためには、接近戦に持ち込むしかない。 だから貴方がこうして転移(メタスシス)で僕の背後を襲おうとすることは、読んでいました」

オットー

「クッ!」

ゲン

「そして、言ったでしょう。 僕は『隙を突いて貴方を倒す』と。 その隙が、今、見えましたッ!」


 ゲンは、オットーがいつ転移(メタスシス)を用いて自分を攻撃してきても良いように、密かに自身の周囲に神木の鞭(セイクリッドウィップ)を張り巡らしていたのである。

[980057860/1696048638.gif]

 その真ん中に転移(メタスシス)してきたのだから、四方八方から神木の鞭(セイクリッドウィップ)がオットーとその守護霊(トーテム)を襲う。このように全方位から襲われれば、転移(メタスシス)(ゲート)を作って防ぐにも間に合わない。


 やられた――


 とオットーは思った。


ゲン・キョウ

「「何ッ!」」


 神木の鞭(セイクリッドウィップ)は、その守護霊(トーテム)偉大な神鳥(グレイトピーコク)』より草木の蔓を伸ばして攻撃する能力(スキル)である。ゆえに、その霊気の源の蔓を断ち切ってしまえば、神木の鞭(セイクリッドウィップ)は攻撃力を失う。


 その神木の鞭(セイクリッドウィップ)を断ち切った者がいた。


 それは、六叉の鉾(ヘキサルバルド)を抜いたアズマ=ハイストンであった。


オットー

「アズマ、よくやった!」


 だが、アズマの腕が震えている。キョウから盗み出した六叉の鉾(ヘキサルバルド)を抜いたは良いが、剣そのものが持つ霊圧に耐えかねて、アズマの身体が限界に達しつつあるのだ。


オットー

「よし、後はお兄ちゃんに任せろ。 アズマはそこで見ていなさい」


 だが、その言葉がアズマの耳に届いている気配はない。


アズマ

「お前たちが……お前たちが悪いんだ。 僕の言うとおり、何も言わずに逃げていてくれれば、こういうことにはならなかったんだ」

オットー

「そうだ。 悪いのはそこにいる2人なのだ。 だから、2人はお兄ちゃんが必ず倒す」


 そう言ってオットーは、『連なる瞳(パピルシリーズ)』に転移(メタスシス)(ゲート)を作らせた。(ゲート)が、キョウの足元に生成されていく。これが完成するとキョウは(ゲート)に落下して、その途中で(ゲート)を解除されて腰斬されるだろう。


 そこでアズマは、最後の力を振り絞り、六叉の鉾(ヘキサルバルド)を振るってキョウの足元の(ゲート)を破壊する。六叉の鉾(ヘキサルバルド)に封じられた霊力をもってすれば、常人でも守護霊(トーテム)能力(スキル)を破壊するぐらいのことはできる。


オットー

「どうした? アズマ、血迷ったかッ?」

アズマ

「兄さん……兄さん、こういうことは、もうやめて……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ