表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/158

オビトを追いかけて呼び止めるのよ

いよいよ第2章の始まりです。


主人公のオビト皇子の幼馴染、ヒロインのアスカ=ウィスタプランの登場です。

挿絵(By みてみん)


 アスカ=ウィスタプランは怒っている。


 父親のフヒト=ウィスタプランが幼馴染のオビト皇子に無謀な巨鬼(トロル)退治を命じたからだ。要するに、追い出しじゃないか。


 オビトは、この日、早朝、誰にも見送られずに出発したという。「行ってらっしゃい」も言えなかった。それも気に入らない。


 それにしても――


アスカ

「誰かいる? 服ぐらい返してよ! |(怒)」


 彼女は、今、ハダカでフヒト邸敷地のサウナ棟に閉じ込められている。


 どうしてこういうことに、なったのか? 時は数刻さかのぼる。


挿絵(By みてみん)


 怒りの形相でフヒトの部屋に飛び込むアスカ。そこでフヒトは、妻のミチヨ=マンダリナ|(旧姓はドグブリード)と何やら話をしていた。ミチヨは、アスカの母親でもある。


フヒト

「ちょうど良いところに来た。 ちょうど今、お前の出仕の話をしていたところだ」

ミチヨ

「お向かいのナガヤ親王様のところよ。 ナガヤ親王様はよく知っているでしょう? 明日にでも、挨拶に行こうと思っているのですが、よろしいですか?」

アスカ

「ナガヤですって?」


 彼女は露骨に嫌な顔をした。


アスカ

「あの人、好かんわ。 イヤらしいことばかり言うもの!」

ミチヨ

「そんなこと言うものではありません! ナガヤ親王様は次代の皇帝(みかど)にもなろうというお方ですよ!」

アスカ

「親王だか皇帝だが知らないけど、私、絶対、ナガヤのところには行きませんからね!」

フヒト

「こら! アスカ! ナガヤ親王様のことを内心どのように思おうが構わぬ! だが呼び捨てはいかん! 『親王だか皇帝だか知らない』というのも、さすがに不敬ではないか!」


 この帝国では、皇帝はもちろん、これに連なる皇族、中でも皇帝直系の親王は絶対に近い存在、父親の言うことももっともだと、凹むアスカである。


フヒト

「それは、そうと。 ここには何か用があって来たのではないのか?」


 用事を思い出し、姿勢を正すアスカ。用事というのは、オビトのことである。


アスカ

「そう、それよ。 パパ、オビトを追い出したというのは本当なの?」

フヒト

「追い出したとは、それは違うぞ。 女帝(みかど)より、オビトにフジワラ京の巨鬼(トロル)退治の(ちょく)が出たのだ。だから、その通りにさせたのだ」

アスカ

「その(ちょく)と言うのがおかしいじゃない! オビトはまだ子どもなのよ! フジワラ京の巨鬼(トロル)退治なんて無理に決まってるじゃない!」

フヒト

「無理なものか。 オビトは、最近、守護霊(トーテム)を操れるようになったと言うじゃないか。 きっと、うまくいく」

ミチヨ

「あのね、アスカ。 女帝(みかど)に、オビトに巨鬼(トロル)退治を命じるよう提案したのは私なの。 あの子、女帝(みかど)から嫌われているようじゃない? だから、手柄を立てさせようと思ってね」


 そしてミチヨはホホホと笑う。


 この母親の笑い、アスカはその胸の内に意図があると直感する。


 ミチヨは、オビトが任務に成功すると、信じていない――


 アスカは、これ以上の問答は無駄と悟り、部屋を出ていこうとする。


ミチヨ

「アスカ! どこに行くの? 待ちなさい!」

アスカ

「決まってるじゃない! オビトを追いかけて、呼び止めるのよ!」

ミチヨ

「それはダメよ! 勝手なことをしては、いけません!」


 ミチヨは、言いだしたら聞かないアスカの性格をよく知っている。

 だから、家中の女中(メイド)を集合させて、10人以上はいるだろう多人数で、山になってアスカを取り押さえた。


 女中(メイド)たちは、彼女をフヒト邸敷地の一角にあるサウナ棟に押し込む。

 そして、着ているものを身ぐるみ()いでしまった。

 ハダカならば、どこにも行くことはできないだろうと、そう考えたのだ。


挿絵(By みてみん)


アスカ

「誰かいる? 服ぐらい返してよ!」


 返事はない。

 見張りはいないようだ。


 ニヤリ。


アスカ

「ママも甘いわね。 裸にすれば私が大人しくなると思ってる。 こんなもの、どうてことはないんだから」


 アスカは、ハダカのまま、サウナ棟の入口ドアを、そおっと開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ