王の愛者 キングズラバー
オビトとウゴウ=ウィスタプランの守護霊バトルは、オビトがウゴウの守護霊の真名を言い当てて勝利。そこへウゴウにオビト暗殺を命じたフヒト=ウィスタプランが登場するが、オビト暗殺命令を取り消すという。
そのオビトに、新たな勅、女帝の命令が出たという。
フヒト
「旧都フジワラ京に、巨鬼が出るという話は、聞いたことがあろう」
オビト
「はい。 貴族、庶民を問わず、毎日のように犠牲者が出ていると聞きます」
フヒト
「明日、その巨鬼を、退治してこい」
オビト
「?」
何を言っているのか、意味が分からない。
今、フジワラ京を騒がす巨鬼は、その辺りの廃屋や洞窟に潜む浮遊霊や小鬼の類とは段が違う。腕利きの守護霊使いがパーティを組んで何度も討伐に向かったが、ことごとく返り討ちに遭ったと聞く。まだ14歳の少年オビトに、太刀打ちできる相手ではない。
オビト
「そ、そんな恐ろしいこと、できません」
フヒト
「心配するな。 護衛はつけてやる。 まずはテンプル・ハピネスに行き、護衛と合流するのだ」
オビト
「護衛は、どなたがつくのでしょうか?」
フヒト
「まだ決まっていない。 女帝が、じきじきに選抜されるそうだ」
そういうことか――
女帝は、オビトを疎んでいる。
その女帝が、まともな護衛をつけるとは思えない。
かえって、その護衛に、巨鬼退治の途中でオビトを殺してしまうよう、命じているかもしれない。
フヒト
「まぁ、そう気を落とすな。 この任務、うまくいけば、女帝のお前を見る目も変わるかもしれぬ」
それは、うまくいけば、だろう。
任務は、うまくいかないこともあるのだ。
とくに今回の巨鬼退治は、うまくいかない可能性の方が高いのだ。
オビト
「自信が、ありませぬ」
フヒト
「そうかな? お前の守護霊を見せてもらったが、なかなか良い動きをするじゃないか。 ひょっとすると、巨鬼退治もできるかもしれない」
オビト
「守護霊は、最近、現れたばかりです。 召喚も、思ったようにはできません」
フヒト
「それでも、やるのだよ。 女帝の勅は、絶対だ。 お前に、これを断るという選択肢はない」
巨鬼退治の旅の出発は、明日という。
フヒトは、今からその準備をするよう、オビトに命じた。
フヒト
「そうだ、オビトよ。 お前、自分の守護霊に名前をつけたのか?」
オビト
「名前で、ございますか? まだ、つけてはおりません」
フヒト
「そうか、そういうことであれば、これはせめてもの餞別だ。 お前の守護霊、ワシが名前をつけてやろう。 そうだな、お前は、もう少し、女帝の愛を得られるようになった方が良い。 その願いを込めて」
オビト
「その願いを込めて?」
フヒト
「『王の愛者』といのはどうかな?」
トーテムの二つ名は、いつ、どこで、誰が名づけをしようとも、その体を象徴するものになると言われている。トーテムの霊気が、名付け親に干渉するためだろうか。
王の愛者――
オビトは、その名が、自分の守護霊のイメージに合致すると直感した。
明日は、巨鬼退治の旅に出るという名目で、この屋敷を追い出される。護衛がつくといっても、どれだけ頼りになるか、知れたものではない。だから、道中で頼りになるのは、この自分の守護霊だけだろう。
王の愛者――
オビトは、その二つ名を、心の中でもう一度だけ唱えて、自分の部屋に戻った。
まずは第1章いかがでしたでしょうか?
第2章【幼馴染を追いかけろ】(仮)は来月公開の予定です。ヒロイン2人の登場回ですのでお楽しみに!
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