お前に勅が出た
守護霊はその真名を言い当てられると能力値が半減し、能力は失われる。トーテムバトルに敗れ、ウゴウ=ウィスタプランに命を奪われようとしていたオビトだったが、ウゴウの守護霊の名がヴィマラ=キールティであることを言い当て、形成が逆転した。
ここ数年、本の虫になっていたオビトは、相当の知識を蓄えていた。加えて、もとは歴史オタクの中学生からの転生者だ。オビトがウゴウの守護霊の真名を言い当てることができたのは、その前世からの知識によるところも大きい。
ウゴウ
「オビトォ! 許さぬぞぉ! わが守護霊の秘密が暴かれた以上はぁ! 決して生かしてはおけぬ!」
ウゴウの守護霊琥珀色の大賢者『知恵ある商人』がオビトの守護霊に手拳一発。
しかし力がない。オビトの守護霊が片手で受け止める。
今度は蹴り。
これも肩肘で容易に防御された。
ウゴウ
「おのれ! おのれ! 絶対に許さぬ! 守護霊の名を言い当てたからって、いい気になるなよ! この腰抜けめ! 守護霊なんて使えなくても、父上からいただいたこの刀の錆にしてくれよう!」
フヒト=ウィスタプランから授けられた黒作懸佩刀、ウゴウはこの刀を再び抜いて、オビトに斬りかかろうとした。
だが、その動きをオビトの守護霊が押さえつけるので、ウゴウは身動きひとつとれない。
オビト
「お義兄様、もう勝負はつきました。 どうか、もう行かせてくれませんか」
ウゴウ
「アハハハ! 君は何も分かっていないんだなぁ!」
ウゴウの笑いは、負け惜しみである。だが、オビトのことを「分かっていない」というのはハッタリではない。
ウゴウ
「父上はなぁ、君を殺すように、女帝から勅命を受けているんだよ! もう、君に行く場所なんかないんだよ!」
そんなこと、分かっているよ――
この屋敷にいれば、殺されることになる。
だったら、今すぐ行くしかないじゃないか。
これ以上、義兄のウゴウと話している時間はなさそうだ。
オビト
「じゃぁ、行くね」
ウゴウに背を向けて、オビトは部屋を出ていこうとした。
その時――
部屋に入ってきて、出て行こうとするオビトを「待て」と言って止める者があった。
オビトが尚父上と呼ぶ、フヒト=ウィスタプランであった。
ウゴウ
「あ、父上! 良いところに来てくれました。 こいつの卑怯な手にやられてしまいました。 どうか、仕返しをしてやってください!」
フヒト
「卑怯な手だと? このオビトが? ウゴウよ、敗北は素直に認めるものだ。 オビトは弱虫だが、卑怯は使わない」
ウゴウ
「しかし、オビトを殺すように、女帝から命じられていたのではなかったのですか?」
フヒト
「そのことか? そのことならば、取消だ。 さっき、宮廷からオビト暗殺の勅を取り消す報せがあった。 だからオビトよ。 お前は無事だ」
安堵するオビト。
フヒト
「だが、安心するのはまだ早い。 同時に、お前に勅が出た」




