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西国に赴く
六月二十五日、天皇、神器を擁して西国に赴く。
これは希代の出来事であった。
悠久のいにしえより此の方、
帝のお住まいは
矢鱈にお遷しすべきものでは無かったからである。
平宗盛、平家一族を従えて、
扈従したものである。
街道は、膨大な行列が進む中
白い砂煙を上げて延々と都路に
連なった。
いにしえの其の有様が目に浮かぶ。
八月十七日、車駕は九州太宰府に到着した。
「おうおう。
帝にあらせましては、
誠に申訳なき有様をお掛けいたしまする。」
「嗚呼、平氏一族も此処迄か。」
地平に沈む夕日を眺めては嘆く公達に
荒ぶる兵どもは
「なんの、我等平家一族。
田舎侍に負けてばかり居られようか。」
そんな強がりも長くは続かないものであった。
太宰府権少貳原田種直、
及び、菊池、臼杵、戸次、松浦等、
平氏の呼びかけに応じた。
愈々これからが、
源平の盛衰を占う
決戦の時であった。




