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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
32/60

32.逃げるおと

2/3もう一話ありますよぅ


 カルピス漬けの焼き鯖をおかみさんがお客さんの元に持っていき、頭を下げているのですが、新聞を読んでいたお客さんが一口焼き鯖を食べると、驚き新聞を落とす程。

 その様子に店内のお客さんも波が波及するように驚き、常連さん同士で話が始まったみたいですが、チラチラと私を見る人も居るので何か察している人も居るのでしょう。

 ざわざわとし始めたので申し訳なさそうに大将に質問します。


「ちょっと、まずいですかね?」

「あの手法は、使ってもいいのか?」


 私の心配をよそに、大将は別の事を確認するように聞いてきます。


「勿論です。うーん、例えば贅沢焼きとか、贅沢煮とかカルピスを使うので多用は出来ないと思いますが、しっかりと値段を決めて調理法を使う分には構いませんよ」


 私の言葉にかなり驚いた表情の大将ですが、私としてはそこまで秘密の技術というイメージは全くありません。


「い、いいのか?女は厨房に入るなとも言ったのに」

「言い方はアレでしたが、内容はお客さんを思っての言葉だと理解はしていますし、私が作った焼き鯖も味を確認してお客さんに出していますから、気にしていませんよ」


 厨房で喋っている間も客席の方は賑やかさに勢いが掛かってしまってきているように見えるのですが、どうしようかと考えている所に戻ってきたのはおかみさん。


「えらい騒ぎになっちまってすまないね。お客さんも大喜びだよ」

「それだったらよかったです」


 元々はつっちーのせいなので、ここまで感謝されてしまうと本当に何とも言えない感じになってしまいますが、大将も同じ気持みたいでさっき私が半身にした骨の付いている鯖をジッと見つめます。


「もしよければ、今日の飯代は無しでいい。ついでに半身の鯖も渡すがどうだ」

「え?タダでいいんですか?」

「これだけの技術を見せて、更に教わって何もってわけにはいかないだろ?それにこいつも、同じ気持みたいだからな」


 ちらっと見るとおかみさんも同じ気持ちと言わんばかりに大きな頷きを見せます。


「あ、でもいきなり鯖の半身なんて貰っても持ち帰りも……」


 普通に考えればいきなり鯖の半身を貰っても困るだろう?と、おかみさんが心配してきますが、私よりも先に私達の中の誰かが声を上げます。


「貰いますっ!この鯖、とっても新鮮ですものね!」

「お、おう。毎日しっかり目利きを利かせているからな」


 大将も喜ぶ一言を引き出せたみたいですが、どうしようかと考えていると勝手に動き始める自分の体。


 この鯖の半身を貰う為に思いっきり無茶しそうな状態だというのがありありと分かる状況。


 流石にちょっとこのまま色々とウチのメンバーにやらせてしまうのはマズイのですが、こういう時は時間も無ければ迷っている暇もない状態。



 パァン



 大きく柏手を打って、その大きな音に周りの意識を集中させている間に、一気にすべてを終わらせましょう。



 まず初めにやる事はサバをこのまま頂く事。


 いつもの感覚だとビニール袋でも入れて……と思ってしまいますが、この時代にはギリギリ登場している気はしますが、まだまだ一般に普及しているようなものでもないので、新聞紙や紙に包むのが主流。

 厨房の把握は終わっているので、手早く近くにある一枚の紙を頂いて、骨付きの半身をまずは紙に包みます。

 次にこれを冷やさないといけないわけですが、氷は木箱に入っている状態。

 なので、風呂敷をポケットから取り出して、大きく広げる音に再び周囲が驚きますが、気にせずに木箱から氷を風呂敷の上に両手で作った掬いでザッザッザッと数回に分けて移し、その上に紙で包んだサバを置いて、更に氷をザッザッザッと乗せてあとは風呂敷を奇麗に畳んであげれば、鯖の半身のお土産の完成。


「コレで問題ないですかね?」

「あ、ああ。あまりにも手際がいいな?」

「その風呂敷、生臭くなっちゃわない?」

「後で美味しくサバを頂いた後に、奇麗に洗うので問題ありませんよ」


 私の風呂敷まで心配してくれるのはとても嬉しいのですが、客席の賑わいがそろそろマズそうと思っていると、勝手口が開く音。


「こっち、こっち」


 そこに居たのは双葉さんで、自転車に跨った状態で髪が額に張り付き、少しだけ息を切らせたような様子。


「おかみさん、お代ね。タエさん、多分みんなタエさん目当てで騒いでいるから逃げた方がいい」

「あちゃー。ですか?」


 おかみさんが双葉さんからお代を受け取って、屈む動きをしてから両手を器用にオバケみたいな動きをしてこっちへおいでと誘います。

 動きの意味がすぐに分かったので、ちらっと大将を見ると大きく一つ頷いて。



 パンッパンッ



 二度、柏手を打つと再びの大きな音に客席もざわつきます。

 その間にそこから出ろと言わんばかりに手でシッシッという動きでお店から出ろと合図をしてくれたので、屈みながら後を向いて大きめに頷き、挨拶と二度頭を下げて勝手口から出たら、双葉の自転車の後ろに腰掛けつつもちょっと強めに地面を蹴ります。


「ちょっとそこまで、お願いします」

「――おもっ」


 私が強めに蹴ったのに、ふらふらとした動きの自転車がお店を一気に後にします。





後書きであれもこれも説明……というのも悪くないとは思いつつも、説明が無いほうが想像力を搔き立てるのでは?とも思っています。


どっちが正しいのか分からないので、たまには後書き無しもいいのかなーとも思うのですが……。


どっちがいいんだろう?(笑)


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