一時の休息①
「何だ?何が起きているんだ?」
「敵が引いていく。」
「こんな有利な状況で、何がしたいんだ?」
誰1人としてブラッドヴァルドの動きに理解が出来ないまま、帝国軍が引いていく。
戦闘が始まってから、結構な時間が経っている。
既に朝日も見えている。
「クラウスさん、ブラッドヴァルドは何故引いたのでしょうか?」
「・・・・・・分からん。こんな事は初めてだ。」
クラウスも同じく、困惑の色が隠せない。
何度もブラッドヴァルド帝国との戦争を経験してきた彼でさえ、こんな事は初めてだったからだ。
「まあいい。今のうちに物資を補給しに行くぞ。」
「は、はい!」
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「が、ガルドさん。これはどういう状況ですかね?」
「僕にもさっぱり分からないよ・・・」
隊の皆と合流し、ガルドに今の状況を聞いてみるも、あまり意味は無かった。
どうして急にあいつらは引いたんだ?
ガルドさんや周りの人も皆分かってなさそうだ。
初めての事なのか?
「皆!今、何が起きてるかは分から無いけど、これで終わりってわけでは無いと思うし、念の為、物資を補給しに行こうか。」
「「「了解!」」」
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「奴らが引いていく、何が起こっている?・・・・・・とはいえ、これで終わりという事は無いだろう。今のうちに体制を立て直すか。」
「エルンストさん!」
「クラウスか、どうした?」
「ブラッドヴァルドが引いた原因は分かりますか?」
「いいや、まだ分からん。しかし、今は全隊の体制を立て直す絶好のチャンスだ。」
「そうですね。俺もそう思い、1度物資やらの補給に来ました。」
エルンストさんでも分からないか。
今はただ、相手の動きを観察して、どう動くか見ておかなければならないな。
面倒臭い動きをしてくるな。
今までの奴らは、こんな事をして来た事は無かった。
・・・一時期は馬鹿みたいに攻めてきていたのに、3年前にいきなり侵攻が止まったと思ったら、また攻めてきた。
しかも、今までとは違う戦い方だ。
迫り来る帝国軍達は隊で分けられているという事もなく、動きもバラバラだ。
今までと変わらない、何も考えずに突っ込むだけ。
しかし、今回はその裏で何かがある気がする。
勘でしかない、しかし、それでも何か嫌な予感はする。
その予感が今来るのか、それともこの事を忘れた頃に来るのか。
それは分からない。
「あ、クラウス!」
「ん?おお、アレスか。お前も来たのか。」
「ああ、隊の皆で補給しに来た。ガルドさんも居るよ。」
「どうも、クラウスさん。」
「ガルド、お前傷だらけだな。」
「対人戦はそこまで得意では無くて・・・」
「分かっている。頑張っているな。」
「はい。勿論です。」
ガルドもこの戦争に参加していたのか、戦争には1回も参加しなかった彼が参加するとは・・・それ程までにグリスヴァルドはピンチな状態なんだろう。
「クラウス、この子が噂の君の弟子か?」




