商団護衛クエスト⑥
「アレス、準備は出来たか?」
「ああ、いつでも行けるぞ。」
今日もいい天気だ。
疲れも取れたし、頑張ろう。
「しゅっぱああああつ!!!」
ブライドの号令が響く。
相変わらずでかい声だな。
この声を聞くと元気が出るな。
さあ、今日も気合いを入れて行こうか。
「行くぞ、アレス。」
「おう!」
今日で2日目か。
明日には着くだろうし、このまま何も無く到着出来ればいいな。
・・・・っていうか、盗賊団とかってどの位の頻度で現れたりするんだろうか。
「なあ、クラウス。」
「どうした?疲れたか?」
「いや、まだまだ行けるけど。・・・こういう商団の護衛とかって本当に盗賊団に襲われるのか?」
前世のように法律があっても犯罪者は居なくならない位だから、この世界にも居るのは居るだろうが、どの位の頻度で現れるんだろうか?
「場所によるな。こういう国境が近い所はよく出てくるが、国の中心に行けば行くほど少ないイメージだな。」
「なんで国境付近の方が多いの?」
「しくじってもすぐに隣国に逃げられる。追跡仕様にも相手の国の許可を取らないと行けないから、その間に遠くへ逃げられる。」
「なるほど。って事は逆に国の中でやって失敗したら、逃走しても国をでる前に包囲網を敷かれ、結局捕まる、と?」
「その可能性が高くなるな。だから逃げやすい国境付近の方が多い。」
なるほどな。
確かに盗賊団の方だって失敗も想定して動かないと行けないもんな。
そいつらだって命を掛けてるだろうし、捕まれば終わりだしな。
「盗賊団も色々考えてるんだな・・・・・。」
「そりゃあな。・・・・・とはいえ犯罪者には変わりないがな。」
「まあそれはそうだけど。何か事情が有るかも知れないじゃん?」
犯罪者の方を持つつもりは無いが、この世界は戦争も多いだろうし、戦争孤児などが生きていくにはそれしかないかも知れない。
「それでも犯罪者には変わりない。」
こういう話題だからだろうか。
クラウスの顔が何時もよりも険しい気がする。
「あいつらは冒険者という前科持ち出ない限り、誰だってなれる職があるにも関わらず、そっちの道を選んだんだ。そんな奴らに、慈悲なんてものは必要ない。」
「・・・・・・そうだな。ごめん。」
クラウスが怖い顔をしている。
こんな顔は初めて見るな。
焔龍と闘っていた時でさえ、こんな顔はしていなかった。
過去に・・・なにかあったのだろうか・・・・・この話題にはあまり触れない方がいいかもな・・・・・
「そういえば・・・・ん?」
目の前の馬車が止まった。
その1個前の馬車もその前のも止まってる。
・・・・・先頭で何かあったのか?
「クラウスさん、先頭で他の商団にすれ違い様に止められ、今はブライドが対応中です。」
「分かった。」
この人は確か・・・・グレンと一緒に先頭に居た人だな。
クラウスに報告に来たのか。
ってことは多分ガルドにも誰かが報告してるだろう。
さて、何があったのやら・・・・
俺にとっては休憩時間だな。
「・・・・・何か裏がある気がするな。」
「?どう言う事だ?」
クラウスがいきなりそんな事を呟く。
裏?
「普通はすれ違い様に、他の商団を止めたりなんてしない。よっぽどの理由がなければ止める意味も無いし、止まる意味もない。・・・・ブライドが止まる指示を出したか・・・・止まらざるを得ない状況にさせられたか・・・・」
クラウスがずっと1人事を話している。
周りも気にせず、小さいとはいえ声に出して考察をしている。
・・・・もしかして、何か引っかかる所があるのか?
「あの情報だけじゃ判断出来ないな。俺が前にでれば・・・・いや、もし盗賊団なら俺が後衛を離れるのは・・・・」
え?なに?盗賊団?
ちょっとクラウスさん怖い事言わないでよ!
「盗賊団・・・・?」
「聞こえてたか。すぐ隣が森とはいえ、馬車がすれ違えるだけの道はある。なのに何故止まる必要があるんだ。」
チラッと森の方を見る。
この辺は冒険者もあまり来ないからか草が生い茂っているな。
結構高い草も多い。
例えるなら、そうだな。
人が簡単に隠れられる位には・・・・・
ドゴオオ!!
「なっ!」
「なんだ!?」
「魔法・・・・」
今のは・・・・魔法だ。
前の方が燃え盛っている!
剣で斬り合い、叫びあう声も聞こえる。
「盗賊団からの襲撃が!!前衛が相手をしてます!すぐに加勢をっ!!」
そんな報告が耳に入る事となった。