不気味な音
「止めろ!!」
ほぼ同時に3人が動き出す!
フィルドは詠唱を始め、俺とヴェガはそれぞれ左右から弧を描きながら焔龍へと接近していく。
「ブレスッ・・・・・・」
昔焔龍と戦った時は経験していない攻撃。
竜種の必殺技や奥義とも言われる当たれば即死の技だ。
何としてでもこれは阻止しないと本当に全滅する!
「うおらああああッ!」
気合いを入れ直すために雄叫びを上げながら斬り掛かる!
それを見て焔龍はブレスの準備を中断することなく避け、獰猛な爪を振るう。
俺とヴェガの2人の攻撃を避けては反撃を繰り返しながらもブレスは溜められていく。
「氷結旋槍!」
フィルドの援護射撃が焔龍の後ろ足に命中し一瞬だけ怯んだが、大して意味はなかった。
焔龍は大きく飛び退くと同時に翼を羽ばたかせ空を飛ぶ。
ーーーそして、大きく口を開いた。
喉の奥が真っ赤に染まり輝きを放っており、キィイインという甲高い音が鳴った。
「避けろッ!!!!」
それは放たれた。
この世の全てを焼き尽くさんとする灼熱のブレスが3人の侵入者を狙って広間内を地獄と化させる。
俺とヴェガは逃げ惑うことしか出来ない中、フィルドは時折振り向き魔法を放っているが飛んでいる焔龍はいとも簡単に躱す。
「くっそ!」
「死んじゃうううう!!!」
今までで1番命の危険を感じるほどそれは恐ろしく、その炎は周りの草木にも燃え移りさらに広がっていく。
自然に焔龍にとって有利なフィールドへと様変わりしていった。
「はぁ、はぁ、あっぶねえ!」
約20秒ほどブレスが放たれると遂に途切れた。
3人生き残った、フィルドが殆どヘイトを買ってくれたおかげで俺とヴェガは比較的楽に避けられた。
「ありがとうございます! フィルドさん!」
そしてフィルドの方を振り返ると、彼を象徴する純白のマントは焼け落ち、上半身の右半身の殆どが黒く焦げていて誰が見ても瀕死の状態だった。
「ふぃッ、フィルドさん!?」
「焔龍に集中しろ! 俺の事はいいッ!!!」
しかしフィルドはその状態でもなおしっかりと立っており意識も保ち普通に走っていた。
本当に人間なのか。
ネフィラは言わずもがな、この人も大概化け物じみているな。
これがSランクかと実感さざるを得なかった。
そしてそれには自分はまだまだ程遠いと言うことも。
「ガス切れだ! 一気に畳み掛けるぞ!」
「はい!」
「うん!」
ブレスを放ち地に降りてきた焔龍に対して3人で総攻撃を仕掛ける。
フィルドが氷結旋槍や雷鳴旋槍を放ち着実にダメージを重ねていく。
戦っていて実感出来るほどに焔龍の動きが鈍くなっている。
焔龍にとってブレスは追い詰められた時の必殺の一撃で、残りの体力を使って放つリスクの大きい技だと言うことが分かる。
そしてそれは俺達冒険者にとって絶好の好機だ!
「ふっ!」
焔龍の腕を斬り落とす!
剣よりさらに斬ることに特化した刀は非常に切れ味が良く、その上多少傷ついてもこの刀は自動で修復され切れ味常に最高潮にある。
剣士にとって是が非でも欲しい代物だろう。
ギャアアアア!!
焔龍が叫ぶがその声段々弱々しくなっていく。
ブレスを使って誰も殺せなかった時点で勝敗は既に決まっていた。
こちらの勝因は明らかにフィルドの力だった。
あの頃より強くなったとは言え、まだまだ俺は役にてないようだ。
「終わりだ・・・・・・」
そして最後に俺が焔龍の首を斬り落とし、焔龍との戦いは決着が着いたのだった。
「・・・・・・勝った・・・・・・ぁぁ、良かった」
「ふぅ・・・・・・、もう動けない」
俺とほぼ同時にヴェガがドサッと地面へ寝転がり仰向けになる。
空は覆われている筈なのに何故か常に明るいダンジョンを見上げながら休憩する。
「出発は5分後だ。それまで休憩しておけ」
「フィルドさんは、その、大丈夫ですか?」
「このくらい問題ない。我慢すれば済む」
「ぇぇ・・・・・・」
ヴェガがドン引きしながらフィルドの黒焦げになっている部分を見つめる。
ドン引きしたくなる気持ちも分かる。
って言うか俺も引いてる。
「モンスターが集まってきた。そろそろ行くぞ」
「うぅ・・・・・・早いよぉ」
「行きますよヴェガさん」
焔龍が死んだことで隠れていたモンスターが段々この広間へと集まってきていた。
俺達を取り囲むように。
急いで立ち上がり動き出そうとしていた時、何処からか聞こえた。
「ッ!? なんの音?」
「分からん。が、少なくとも化け物だということだけはわかる」
「嘘だろ、勘弁してくれ」
聞こえるのは、21階層で何度も聞いてきたダンジョンの壁が破壊され崩落している時のような轟音。
そしてその音はまっすぐこちらの広間へと近づいてきていた。
「地龍がここまで追ってきた・・・・・・?」
「ロアク達が敗北したと・・・・・・そうだとすれば最悪だな」
俺達だけじゃなく周りのモンスターも困惑し音の方を眺めている。
そしてそれはもうすぐそこまで迫ってきていて、遂にこの広間の壁が破壊されたのだった。




