てんやわんやな尋問回
さて、何の要件で来たかによって自分の今後の方針が変わる。出来れば穏便なやつがいいなぁ。現実を出来るだけ見ないようにしてきたがどうやら駄目なようだった。
「これは夜分遅くにこのような所まできて頂いて光栄です。クリステラ様」
一応誰の目があるか分からないから丁寧な対応にしておこう。そんな自分の行動をクリステラはあんまり気にしてないようだ。それよりも自分が抱えている生物と肩の幻獣をチラチラとみている。これは最悪のパターンかな…
「どうやらお忙しいようでしたね。ごめんなさいねベル。実は貴方に話したいことがあって来たのよ」
隣にいるメイドさんが頭を下げる。…ふむ。部屋で話がしたいということかな。益々やる気が無くなってきた。丁重に帰ってもらおう。
「実はそうなのですよ。フォルディルとオモチというこの子達の面倒を見なくてはいけなくなりましたね。今の所はどのような用事も断っているのですよ」
明確な断りの言葉にクリステラは顔を背ける。お付きのメイドは自分の顔を見て申し訳なさそうにしている。確かメリナさんだっけ?お風呂での格闘戦の所為で覚えてたや。
「そうですか…ではお話すら無理なのでしょうか?」
クリステラが両手を組んでお願いのポーズでこちらに聞いてくる。困ったなぁ。聞いたら断れない話ならどうするつもりなんだ?余りにも杜撰すぎる。
「この場で良いなら聞きましょう。この場以外で聞くとなれば断れないような案件でしょうし」
かなり敵対心が見れる言葉だがこれで怒るようならアウトだ。残念だけど友達も解消だ。今の自分は権力のある人達に近すぎる。このままでは良い事にはならないだろう。
「そ、そんな…それは」
案の定言葉が出ないようだ。ここで聞かれたらまずい話という訳だ。そんな話を気軽に持って来られる今の立場はあまり好みじゃない。残念だけどここまでかな。
「それは聞かれてはまずい事なのですね。それでは残念ですがお力になれそうにありません。申し訳ありませんがお引き取りを」
そう言って頭を下げてから部屋に入る…ん?オモチがクリステラを見てる?それどころかクリステラの所に行こうとしている?何だこれ?
「やはりあの子なのですね。生まれてきて本当に良かった…」
そう言って涙するクリステラ…あぁ!もう訳がわからん!
「はぁ。クリステラとメリナさんだったよね?部屋に入って良いよ」
そう言って部屋の鍵を開け招き入れる、クリステラは急な態度の変わりように驚いているがメリナさんは心得ていたかのようにすまし顔だ。全く面倒な事になってきた。オモチをクリステラに渡しフォルディルで心を癒そう。モフモフ。
「それで何の用で来たの?言っとくけどここからは話一つ間違えればこの国が無くなると思ってよね」
私も言いたくないがこれは大事な事だ。軽く考えてもらっては困る。
「やはりそこまでのお力をお持ちですのね。メリナ今から話す事は誰一人として話してはいけません。話すようなら今のうちに出て行きなさい。私は貴方を殺したくはありません」
クリステラも事の大事さを分かっているようだ。だけどメイドさん抜きで部屋に二人きりはまずい。そう言おうとしたがメリナさんから先に言われてしまう。
「何をおっしゃいます。男女二人きりを認める事などある訳無いじゃありませんか。ここでの話、拷問されようとも話す事は決してありません」
きっぱりと言い切るメリナさん。一流のメイドは凄いなぁ。
「それなら問題ないね。で、どうしてそのファザードラゴンの事を知っているのかな?先にそれが知りたいね」
私の言葉にメリナさんは眉を少しだけ動かす。クリステラはオモチを撫でて微笑んでいる。クリステラに懐く理由が思い浮かばない。聞いてみるしかないもんね。
「私のワイバーン、アメリアを預けた時にこの子は龍脈で放置されていたのです。気になって友の竜騎士にその場で聞いたら100年近く龍脈にあると聞いて…その卵を撫でていた事があったのですよ。今回も撫でていたのですがその事を覚えていたのかしら?」
…成る程、そりゃ分からん。私がいない頃からの知り合いならどうしようもないな。オモチも覚えているくらいだし、それがあったから今まで生きていたのかも知れないしな。
「成る程、納得出来ました。それで私に聞きたい事とは何ですか?」
私はクリステラに一番の問題を聞く。これによって全てが変わるからなぁ。
「やはりその子はあの時の子なのでしょうか?」
恐る恐る聞かれるがアウトだ。スリーアウトだ!
「その話は誰かにしたか?クリステラ。この問いに拒否は許されない。覚悟を決めて話せ」
俺はクリステラの目を見て話す。クリステラは絶句し、メリナも目を剥く。俺はもう一度クリステラに聞く。
「どうしたクリステラ。返答が無いようだが国を滅ぼしたいか?」
[看破][真贋]を使い嘘を見抜けるようにする。ここからはこちらも命懸けだ。
「だ、誰にも言っていません!」
クリステラは真っ青になりながらも否定する。その言葉に嘘はないようだ。
「嘘はないようだ、安心したよ。もし嘘があっても今の俺は分かるからな。心しろよ?クリステラ」
俺は多分笑っているのだろう。2人の顔を見ながら俺はそんな事を考えながら、今後の話を切り出すのだった。
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