てんやわんやな装備品
短編 (有)者っていったい何なのさ?
を投稿しました。世界感を同じとした小説ですが単品としても楽しめます。
宜しければコボルト兄弟を楽しんで下さい。
貴族の世界の話を聞き、社会的構図は何処も変わらないんだな。と考えていると扉をノックする音が聞こえた。
「俺の部屋にノックするような相手っていたかな?」
ゾハンが訝しげに扉に近寄り扉を開ける。
「ゾハン。済まないが護衛の人間全員集合の命令が出た。…フィナにベル殿もご一緒でしたか。これは失礼をした。」
扉の向こうに居たのは副隊長のギルベルトさんだった。全員集合とは穏やかじゃないな。何かあったのか聞きたい所ではあるがこちらから首を突っ込むわけにもいかないしな…
「どうやら皆さん忙しくなりそうなので自分はここで失礼しますね。」
他の2人に軽く礼をして、ギルベルトさんにも挨拶をして別れる。ギルベルトさんの目に感謝の念があるのを見て聞かなくて良かったと胸を撫で下ろす。
部屋に戻り装備の点検だ。1番酷そうな鉈は最後にするとして弓の弦を見てみる。レベルアップした力のせいか多少緩みが出ている。弓自体は問題無いがそろそろ全力では撃てなくなりそうだ。弦を張り替え整備する。革の鎧は潮風をよく浴びるせいか艶が薄れている。艶出しと防水の為の脂を馴染ませながら塗っていく。…さて問題の鉈だが刃こぼれが酷い。こりゃもう使えんな。直すことは実は出来るんだが船の中で直したら流石にあやしまれる。仕方が無いので親父に相談だ!
「……で鉈の代わりが欲しいから何か寄越せと?予備の武器ぐらい持ってねえのかよ?」
マドックが机の上で片肘をつきながらこちらに確認する。幽霊船の戦いで多少船にダメージを受けたからご機嫌斜めだ。
「アイテムボックスの中にはあるけど自分は持って無い事になってるからなー。父さんがくれた事にして使ってもいいか?」
そう言ってアイテムボックスの中の武器を探す。バスタードソードを作った記憶があるから入っている筈だ。
「あーこれこれ。これならいいかな?」
取り出したバスタードソードをマドックに渡す。マドックは鞘から抜いて確かめていたがその額に青筋が浮かび顔色が真っ赤になる。
「お前は馬鹿か!こんな魔剣持ってるのを知られたらそれこそ大事じゃねぇか。流浪の民や1船長が持てるもんじゃ無いぞ?もっと普通のは無いのか?」
そんな事は言われても困る。実はこれは自分が作った物だからだ。
「そう言われてもな。これ以下の剣はアイテムボックスの中にないんだよ。どうするかな。」
最悪、親父が持っていた大剣を借りるかなと考えていた所、マドックが自分の両肩を掴み迫力ある笑顔でこちらに問いかける。
「これが最低レベルの剣だと?いいか。このレベルの魔剣だと普通の武器屋には置いてない、言うなれば王都でも中々手に入らないレベルなんだよ。流石に魔法金属を使った武器とは比べられないがそれでも中位冒険者でも手に入れるのが難しいぐらいだ。それを踏まえて聞くんだがどうやってこんな魔剣手に入れたんだよ?」
どうやら自分が作った武器はやばいらしい。魔法の武器は少ないと先生に聞いていたので今まで出すのを躊躇っていたが最低レベルでも問題らしい。自分が作ったとは誰にも言わない方が良さそうだ…
「あー神様が色々用意してくれたからなー。そっか、これは出さない方がいいのかー。」
酷い棒読みになってしまったが仕方がない。睨むように見ていたマドックだが溜め息をつくと自分の腰の袋から既製品の片手剣を出してくれた。あの袋は魔法の袋かな?
「取り敢えずこれでも使っておけ。公国に着いたら武器を買った方がいいぞ。そんな魔剣使ってたら周りに広まっちまう。…ん?この袋か?魔法の袋だが持ってないのか?あぁ。アイテムボックスは持っていると国に囲われるから使いづらいからな。俺もアイテムボックスは普段は使ってない。魔法袋なら100kgまで入るし持ってる人間もそこそこいるからな。」
うーん。使えるスキルを使おうとすると平穏に生きていくのが難しい件について。
それから3日ほどは魔獣もでず、平穏な日々が続く。冒険者のリーダーさんは左肩をスケルトンに潰されていたが13隊の副隊長ギルベルトさんの回復魔法によって治療は終わっている。ギルベルトさん万能だな。カーターとは特に会うこともない為問題も起きてない。マルガス公国に着いたら何をしよう?自分は船の護衛として乗り込んだ為、国同士の話し合いには関わるつもりは無い。無いのだが向こうから何かしてくる可能性があるからなぁ。そんなことを考えていると西から大きな魔力を感知する。しかも早い!あと1分もしないうちに接敵する。
「西から何か来てる。しかも早い!」
周りに警告しながら[遠視][魔眼]で相手を探す。海上にはいない。海中…でも無い。……空か⁈
空を見上げるとかなり離れた所に動くものを捉える。遠視で辛うじて見えている「それ」は瞬く間に大きくなりこの船に近づいている。しかも魔獣ではない!
「ワイバーンだと⁈マルガス公国の竜騎士か?」
ギルツさんの驚く声が聞こえるが自分はそれどころではない。飛竜の叫び声が異世界言語の翻訳によってこう聞こえたからだ。
「だれかたすけてー!このままじゃしんじゃうよー!」
ワイバーンが助けを求めるほどの事とは?正直マルガス公国に行きたくなくなりました。
竜騎士って憧れますが高所恐怖症な自分には乗れそうに無いです…




