てんやわんやな裏事情
(有)者っていったい何なのさ
という短編を書いております。てんやわんやで異世界転移と同じ世界感で作っており、プロットだけは作ってはいたもののそれ以降の話が作る時間がない為、短編にして出しております。宜しければ作者マイページからお読みください。
ギルツさんの氷魔法で幽霊船は無に帰った。これで万事解決と言いたい所だがカーターの動きが少し気になる。戦闘を終え、皆が帰る時に13隊の人に連絡を取る事にする。
「フィナさん少しいいですか?」
13隊の紅一点。フィナさんに話しかける。20代前半に見えるが年は怖くて聞けない。栗色の髪を短く首辺りで切り揃えており、体育会系女子といった感じだ。背は自分より少し高い程度だが、筋肉が程良くついておりバランス重視といった感じだ。胸も結構ある。
武器はメイスと盾を主装備としているようだ。[索敵]を持っているのは知っていたが[風魔法]をこの戦闘で使っていたのを見たので魔法重視の騎士かもしれない。
「はい。何でしょうベルさん」
彼女はミノタウロス戦にいたので自分の事を良く知る人の1人だ。内情も多少は知っているのかも知れない。
「先程の会話で気になる事がありまして場所を変えて話しませんか?」
フィナさんの顔色が多少変わった。こりゃ当たりかな?自分の自室だとフィナさんに迷惑がかかるのでどこにしような迷っているとフィナさんからゾハンさんが休憩中なのでそこに行こうと言われた。哀れゾハンさん。
「おぅ、フィナじゃないか。俺に何の用だ?リデルに振られて落ち込んでるのか?……ありゃベルもいるのか。ならあっちの話か。分かったよ、入りな。」
色々と聞いてはいけない事を聞いた感じで若干心苦しいが仕方がない。ゾハンさんの部屋に入るならフィナさんが魔法で結界を作っているのでかなりの話なのだろう。益々気が重くなってきた。
「これで問題無いでしょう。さて、ベルさん。貴方は何処までご存知なのですか?」
フィナさんが単刀直入に聞いてくる。神殿で自分を囲い込まないようにと宣託があった事と貴族の方で自分に手を出そうとしている人物がいる事の2点を知っていると正直に答えるとフィナさんとゾハンさんが悲しそうな表情をする。
「そこまで知っていたとは…申し訳ありません。確かにその通りです。ですがリデル隊長はそういった話を知ってこの護衛を受けたのです。貴方に近寄る貴族共を止めるために。それだけは分かっていただきたい。」
「悪いな。うちの国の事情に巻き込んで。だがな、うちの街の人間は本当に感謝してるだけだからな。」
2人の話を聞き、自分はギードの人達に愛されてるんだなぁと感じながら感謝の気持ちを2人に伝える。
「お2人共。こちらこそありがとうございます。コルカ王国に来て、ギードの街で皆さんに会えた事は私にとって本当にありがたい事です。リデルは自分の為に本当に良くしてくれますし、父にも会えました。貴族の事など正直どうも思っていません。やられたらやりかえしますけどね。」
そう言って微笑むと、何故か2人が固まってしまう。あれ?
「い、いやベルさん。出来れば手は出して欲しくないのですが…」
「ベルよぅ。やり返すってどの位なんだ?貴族の家が吹っ飛ぶくらいならいいんだが街が半壊するとか、国が滅ぶってのは困るんだが」
なんか、2人は自分の事を天災か何かと勘違いしているようです。思わずジト目で2人を見てしまう。
「2人が自分の事をどう思っているかよーく分かりました。そうですか。そうなんですね。」
謝罪や言い訳をする2人を見てちょっと笑えたのは秘密です。
「それではやはりカーターは取り込もうとする貴族の一派だと?」
「そうですね。ユーグリット侯爵の派閥の1人ですのでそうと言えます。現在ユーグリット侯爵の次世代の方々はさほど国に貢献しておらず、このままだと現当主で終わりという事になりそうですからね。ご長男に継がせたいらしく現在かなり無理をしていると有名な話です。」
「普通は貴族がその代で終わるのはこの国では良くある話なんだがな。あそこはギード辺境伯を目の敵にしてるからな。うちのご長男は自力で男爵になってるし、今度手柄を立てたら継続は間違いないからな。余計に焦っている感じだ。」
何というか……ギード辺境伯への嫉妬による派閥争いに巻き込まれたって感じかな。
「侯爵というとかなりの地位でしょ?侯爵は王家の一族から通常は選ばれる筈ですよね。かなりの功績がないと難しいのでは?」
公爵、侯爵は基本的には王家の一族の血を引いた者から選ばれる筈なのだ。現在コルカ王国には3つの公爵家と5つの侯爵家、3つの辺境伯と9つの伯爵家がある。この上位貴族の数は現在の所増える事がない。土地が増えないと新しい上位貴族に土地が与えられないからだ。コルカ王国は現在保守的で侵略戦争をしてない。その為、上位貴族になるにはかなりの功績が必要なはずである。
「ユーグリット侯爵家は武力や技術による功績を挙げた事がありませんからね。カーターの妻が確かユーグリット家の娘が嫁いでいるはずです。」
「カーターはご長男の側近だからな。この国交を結ぶ事によって長男への功績にするつもりなんだろう。」
「あれ?カーターが挙がる功績が長男にいくんですか?カーター自身の功績なのに。」
疑問に思ったので聞いてみる。これが許されるなら部下が凄ければ上はどうでもいい事になってしまうのだが。
「一門で部下として働いているなら功績を辞退してその一門の上司に功績を譲ることはできますよ。一門以外では譲らないでしょうし、譲るならそれなりのものを渡さないと相手も納得しませんから。」
「俺ならそんな面倒な貴族になんかなりたくないけどねぇ。」
ゾハンさんの言う通りである。自分もそんな面倒な貴族世界なんぞ入りたくないな。
貴族社会なんて知らないので考えるだけ疲れます…




