てんやわんやな触れ合いデー
特に問題も起きず幻影の森に着きました。
「中位魔獣位になると中々出ないからな。台風一過みたいなものだ」
リデルが魔獣の発生について教えてくれる。
魔獣の発生する魔素は人が多くいる所に発生しやすいと言われており、大都市などの周りに発生しやすい。
また、通常は下位魔獣が多く発生するだけで中位魔獣などは滅多に発生しないらしい。
だが、幻獣などの高位生命体がいるような魔境では遭遇することがあるらしい。
「ここに翡翠狼がいる事は昔から知られている事だし、うちのご先祖様には会ったことがある人もいるとは聞いていたんだが、まさか自分が会うとは思わなかったよ」
リデルが考え深げに話してくれるが、自分には嫁にペシペシされている駄目狼の記憶が強過ぎる。
「さて、着いたのはいいんだかどうやって呼べばいいんだ?」
自分の方を見て質問するリデル。
自分としても来いとは言われたがどうやって呼ぶかまでは聞いてない。
「とりあえず試してみるけどあんまり期待しないでくれ。」
【念話】【探知】を使用してルーヴを探す…
お、いたいた。
念話も届くようなので話しかけてみる。
「おーい、ルーヴ。贈り物を持ってきたぞ。嫁さんと一緒に取りにこれるなら来てくれるか?駄目なら一人で来いよ」
… 届いているはずなんだが返事がない。
仕方がないので他の方法を考えていると
『そちらに向かっているからもう少し待ってくれ。嫁も付いてきているから問題ない。って痛い、痛いぞルオン』
何か取り込み中らしい。
騎士や子供達にもうすぐ来る事を伝えてそのまま待つ事にする。
『どうやら土産物は持って来たようだな。感心、感心。子供達も息災のようだな」
念話を使いながら現れるルーヴとルオン。
その姿はまさに森の主人に相応しい。
深い緑の毛が陽光に当たりキラキラと輝いてる。
子供達は大興奮、騎士は跪き礼をする。
…こういうファンタジーを見たかったんだよなと思いつつルーヴに話しかける。
「此度は子供達を助けて頂き感謝致します。我が友、翡翠狼よ。此方に此度の感謝の気持ちを用意しておりますのでどうぞお受け取りください。あと助けて頂いた子供達より感謝の言葉がありますのでお聞きください」
そう言って子供達に合図を送る。
「「ひすいろうさま。ありがとうございました」」
子供達の合唱にほっこりな自分。
いい構図だ。
ルーヴ達は若干驚いているみたいだな。
我に戻ったのか返答がくる。
『う、うむ。大儀であった。子供達もこれからは無理をしてはいかんぞ』
どもったが中々いい返事だな。
2人はモーとコケの所に行くと【アイテムボックス】に土産をしまっていく。
子供達は大興奮だし、騎士達はアイテムボックスのスキルに驚いている。
やっぱりアイテムボックスはかなり貴重なスキルらしい。
子供達の内の一人がモジモジしているので理由を聞いてみると、
「あのね。おおかみさんにさわりたいの。でもね、かあさまがおおかみさまはえらいひとだっていっていたから…」
なんと健気な…これはいかん。
ルーヴとルオンに子供達にモフモフさせてやれと念話を飛ばす。
拒否はさせん。
すこし涙目な二人だが自分の目を見て諦めたようだ。
威厳がどうだこうだ言ってるが知らん。
『そ、そうだな。そこの童。此方にくるが良い。我は汝らと少し話しをしてみたいぞ』
よく出来ました。ルオンさん、ルーヴも諦めてくれ。
そのあとすぐに子供達が翡翠狼に飛びかかっていく。
ダイビングしてる子もいるな。
尻尾は優しく撫でてあげなさい。
ヒゲは触っちゃダメ、お腹でモフモフしている子がいるな。
将来いいモフリストになるだろう。
こら、ルーヴ、逃げるにはまだ早い。
肉球好きだと ⁉︎ やるな…あぁ待て、私まで巻き込むな。
ポニテは引っ張ってはいけません。
誰だ? 背中登ってるのは?
気が付いたら子供達は昼寝をしていた。
ルオンは世話好きなのか懐に子供を寝かせている。
ルーヴは逆に体のあちこちを子供達の枕や布団代わりにされているな。
自分のところに来ていた子供達は【歌唱】の子守唄で寝かせてある。騎士達の内女性の人達は何故かほっこりしている。
そういえば何人かは子供に混ざってモフモフしてたような…
『子供とはこんなに激しいのか? 我はビックリだ』
そんなもんだルーヴ
『慣れると可愛いわね。何人か連れて帰ろうかしら? 』
親と騎士達が泣いちゃうのでやめてください。
自分達で子供つくらないの?
『高位生命体は次世代継承の欲求が弱いのよね。でも今日みたいな事があるとちょっと考えちゃう』
頑張れルーヴ!
そんなこんなでルーヴ達と別れた自分達は帰りの馬車に揺られながら街へと向かう。
「今日は色々あり過ぎて疲れた」
溜め息をつきながら馬で馬車に並走するリデル。
隣のフィナさんは満足気な表情ですよ?
今日も銀狐亭のご飯が美味しく食べれそうだ。
モフモフは自分ちの犬をモフモフしながら考えました。




