てんやわんやな街巡り
(名前)
ベル
人間
15才
Level 4
(出身国)
不明
(スキルスロット)?/?
「レアスキル」
・身体強化
「ノーマルスキル」
・弓術
・探知
・解体
・生活魔法
(賞罰)
無し
「ほぅ…名前はベルって言うのか。レベルが高いな!…出身国不明ってどういうことだ?」
リデルさんの顔が百面相になっているのを内心ほくそ笑みながら、悲しそうな顔で説明する。
「うちの家系は代々流浪の民らしく、定住することがなかったんです。自分は生まれた時から旅をしていたので…レベルが高いのは流浪の旅なので魔獣と遭遇しやすいからかと」
そう言って下を俯くと、リデルは流石にバツが悪そうになり「悪かったな、嫌な事を聞いて」と慰めてくれる。【虚偽】と【演技】が上手く効いているみたいだ。
「スキルの方も大したもんだ。危険なものも無さそうだしな。【身体強化】とは良いスキルを持っているな。賞罰も問題無し…入国審査完了だ!」
そう言ってこちらの頭をガシガシと撫でてくる。
自分にナデポ攻略は効きませんよ。
そんな馬鹿な事を考えながらようやく街に入れる事に安堵する。
「それから今日の魔獣撃退の報酬がある。黒狼型は1匹銀貨1枚、素材として銀貨2枚なので銀貨30枚だな」
おぉ…この世界で始めての給料だ。
10匹倒して地球だと30万って所か。
命を賭けてこの値段だから微妙だなぁ。
「ベルの黒狼の買い取り価格は最高ランクだ。傷が殆ど無いからなぁ。良い腕している」
おっとこれは予想外。
買い取り価格が良かってこれなら魔獣狩りはリスクが高いな。
普通に狩人として生計を立てよう。
「あと入国費なんだが、今回の働きによって免除される事になる。1週間分だけどな。それを過ぎたら延長費がいるから気をつけておけよ」
これはいざという時の保険かな?戦力としての。
リデルさん何か大物そうだしな、気をつけよう。
「話は変わるがベルはどうしてギルドに入らないんだ?それだけの実力があれば『冒険者』でも『傭兵』でもやっていけるだろうに。なんならうちにくるか?すぐ正規兵にしてやるぞ?」
流石リデルさん。
さり気なく情報を集めようとしてらっしゃる。
正規兵なんて使い倒す気満々じゃないですか。
「すいません。ギルドだと出身国の件で色々言われたことがありやめています。正規兵なんてなおさら駄目ですよ。狩りをしながら流浪の旅が自分には合ってます」
照れ臭そうに話を断る。【虚偽】と【演技】頑張って!
リデルさんに負けないで!
「ふぅ…そうだよな。色々なけりゃそんな若さで旅人なんかしてないわな…すまなかった、話はこれで終わりだ」
勝訴!
何かえらい勘違いをしてるかも知れないが、とりあえずはこれで街を散策出来そうだ。
リデルから滞在許可書を貰い街に行こうと歩き始めた所で
「あぁ、忘れてた。宿なら大通りを少し歩いた所に[銀狐亭]という店がある。飯は美味いし、俺の名前を出せば安くなる。行ってみるといい」
上告、上告が来ました。
早めに出ちゃおうかな、この街…
ぐすん。
見張られているかも知れないので【索敵】【感知】【第六感】など、周囲索敵を続ける街巡り。
地方都市ギードは思ったより大きな都市だった。
【一般知識】によると10万を超える場所が都市と呼ばれるそうだがギードは20万人を超えているそうだ。
海路が安定しており他国とも交易をしているらしい。
ここの領主はリナイデル・ギード辺境伯という武門の家で多くの軍人を輩出している。
街並みはほぼ石造りで北側の高台に領主宅があるのがここからでも見える。
周囲に追跡者がいないのを確認し終わると、とりあえず教えてもらった宿屋を探してぶらぶら歩く。
因みに【異世界言語】のおかげで会話と文字には苦労はしない。
先生は自力で覚えなさいと言うのだが、1年ちょいの修業の間にそんな余裕の時間はなかった。
1日20時間スキルの熟練修業だよ?
そうこうしているうちに『銀狐亭』を発見。
発見したのだが…えらく豪華そうに見える。
これ、ただの狩人が泊まれる宿じゃないよ?
しばらく店構えを見ていたのだが、やめようかと考えて他を探す事を考えてしまう。
「おや?お客さんかね?」
いきなり背後から声を掛けられた ⁈
おかしいな、周囲索敵してたんだけど?困惑気味に振り向くと、恰幅のいいおばさんがニコニコ顔でこちらを見ていた。
悪気のない人には効かないのかな…
「いえ、豪華な宿屋だなぁと驚いていた所ですよ。自分には分不相応なんで他を当たろうかと」
そう言って離れようとしたのだが、いつの間にか腕をとられて店の中に連れ込まれた。
だって女性に暴力は無理。たとえおばさんだったとしても…
「はい。いらっしゃい…ってお前かよ。いつもなら裏口から来るのにどうしたんだ? ってかその子は一体どうしたんだ?」
狐耳キターーーー ‼︎
おじさんだけど…
よく見るとかなり細身で眼鏡をかけている。
所謂ダンディおじさんだ。
「ちょうど店前で惚けていたんでね、またリデルの坊ちゃん関係かと思ってね」
そう言いながら頭に巻いたバンダナを外すおばさんの頭にも狐耳が、がっががが…
「確かにそうかもしれないな。…ようこそ銀狐亭に」
おじさんの笑顔に意外と心が落ち着いたのだが…
ケモ耳は正義ですがこれはないと思います。
ちょっと変わったケモ耳ですが悪しからず。




