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魔法使いと少女  作者: 徒然花
本編
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1/14

行き倒れ

アンバー王国の西と東には、それぞれ森が広がっていました。

そこにはそれぞれ魔法を使うものが住んでいました。

西には魔女が、東には魔法使いが。


これも、とあるアンバー王国の日常です☆

う~。お腹が空いた。限界。


ばたっ


私は身体の限界を感じて、その場に倒れ込んでしまった。

ほんの目の前に、私が目的としていた家は存在しているのに!



目が覚めた時。ていうか、意識が戻った時というか。

私が目にしたのは、最後に目にしていた青々とした森の木々ではなく、どこか見知らぬ天井だった。

うん、お約束ね。

お約束なのは、それでいい。問題はどこの天井かってことよ。

私は天井をガン見したままパチパチと数回瞬いた。穴が開くほど見つめても、やっぱり記憶にない場所だわ。


すると。


「気がついたか」


と言いながら、ぬっと私の視界に入ってきたのは男の人。

びっくりして、これでもかってくらいに目を見開いちゃったわ。

煌めく金髪に、深い青の瞳の、とっても綺麗な男の人だったから。


「ふわっ!! びっくりした……!! おじさん、誰?」


また思わず瞬きをバシバシしながら、男の人に聞いてみた。


「おにーさんはこの森に住む魔法使いだ」


すると、さっきまで無表情だったのに、にわかに眉間に皺を寄せ、ムッとしながらも、おじさんは答えてくれた。あ、おにーさんですね。うん、どこからどう見てもおにーさんです! 何気に訂正されちゃったわ。以後気を付けなきゃ。

ん? でも待てよ。この森に住んでいる魔法使いは、確かお婆ちゃんだったはずなんだけど。こんなサラサラ金髪の若い綺麗な男の人じゃないはず。

「え? おにーさんが魔法使い? 私、お婆ちゃんだって聞いてたんだけど?」

実はおにーさんは魔女さんの弟子で、魔女さん本人は他の部屋にいるのかしら? 目だけきょときょとと動かしながら、それらしき姿を探すけど、


「何を言っている? 魔女が住む森は西の森だろう。ここは東の森だ」


冷静なおにーさんの声で、捜索は中止された。っていうか固まっちゃった。

えええっ?! うっそ!! 私、西の森を目指してきたはずなんだけど……

そんな心の声がダダ漏れだったのか、

「まさか、お前、方角を間違えたのか?」

呆れた声で言われましても。

「……多分。私、すっごい方向音痴なんです……」

「……」

「道理で、なかなか辿り着かないと思ったんですよ~! うちの村から西の森まで、徒歩で半日くらいって聞いていたのに、もう5日も歩きづめですよ!! でやっとたどり着いたところで燃料切れ。ああ、どうしましょ…がっくし」

自分の間抜け加減に脱力。もともと寝たままだったから、これ以上沈み込む余地はなかったけどねっ! おにーさんも、ベッドサイドで腕を組んだまま項垂れてるわ。

「……お前、どこから来たんだ?」

「えと、西の地方の外れの村です」

「はあ? 西の地方?! お前また、かなり遠いとこから来たんだなぁ……でも、そこからこの東の森までだと、途中で王都ディアモンドを横断するはずなんだが? 王都についた時点で方向が逆なのに気付くはずだろ」

「王都? はて? お城があったところですか?」

「ああ」

「そう言われれば、そんなところ通ったかな? おっきな噴水のある広場があって、なんだかお城みたいなのが見えたなぁ。ああ、あれって王城だったんですか?」

「……って、何だと思ってたんだ?」

「西の地方の領主様のお城かなぁって。だってそんなの見たことないモン」

「……」

あ、おにーさんがさらに深く項垂れちゃったわ。私のせいかしら?




「ところでお前、いくつだ?」

どこか底辺を見てきたのだろう、おにーさんが復活し、おもむろに聞いてきた。

「え? 10歳です」

「じゅっ……!! そんな子供がたった一人で、何の目的で西の森の魔女のところに行こうとしてたんだ?」

私の年齢を聞いたおにーさんが、目を見開いた。あれ? 思ってたより若すぎた? 老けて見えるのかしら、私?? しかしおにーさんの瞳、綺麗な青色だなぁ。うっかり見惚れてしまった。

「え? 魔女様んところで修行させてもらおうと思ったんです。手に職付けたいなぁって思って」

にこっと笑いながら言ってみたけど。

「……で、方向を間違えた、と?」

先程のほんの少しの動揺はすぐさま収めて、おにーさんは元の無表情でイタイところを突いてきました。

やっぱりそこに戻りますか。はい、すべての原因は、私の方向音痴によるものですもんね。がっくし。

「はい……おそらくは。半日で着けると思ってたから手持ちのお金もなくて。ほぼ飲まず食わずでここまで来て行き倒れました」

で、この家の前であえなくダウンですよ。

「おまっ……5日も飲まず食わずだったのか?!」

無表情だったおにーさんの顔に、若干の呆れが混じったね。うん。だって、お金なかったんだもん。

「そうです」

「……」


また無言、かつ無表情に戻ると、おにーさんは静かにベッドサイドを離れ、部屋を出て行ってしまいました。こんな私の相手なんてしてられないわよね。うん。

まあ、私はまだ疲れていたので、もう一眠りさせてもらうことにするわ。5日ぶりだもんね。まともなベッド! 野宿はきつかったよ。わーい、もふもふお布団!!


お付き合いくださり、ありがとうございました (^^)

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