リア
自分の人生はひどく滑稽だ。
一回目の生は、国の中枢を担う一族に生まれた。
階級制度のあるこの国では、貧困層以外の国民は皆十二歳で悪魔召喚の儀を執り行うことが定められていて、大概が知能がかなり低い下級悪魔と契約する。
そんな中、最高位に近い悪魔と契約をした私を、誰もが崇め、媚びへつらうから、二十二になった年に、その悪魔に心の臓を抜き取られるまで、自分は特別な存在だと信じて疑っていなかった。
二回目の生は、前の人生よりも少し生活水準の下がる家に生まれた。
十二歳で悪魔召喚の儀を行い、見覚えのある悪魔を召喚し、そこで前回を思い出した。
自分が特別だと傲慢に振る舞っていた一回目の人生は、目の前の悪魔によって強制終了させられたが、今回はと、契約こそすれど呼び出すことはせず、ほぼ関わらないようにしたが、十八歳で心の臓を抜き取られ、また幕を閉じた。
三回目の生は、一般家庭と言われる家に生まれた。
九の年で二回の人生の記憶が戻り、今世こそは生き延びると誓う。そして迎えた召喚の儀では、他の子供と同じ下級悪魔と契約し、喜びのあまり号泣したのだ。
契約した下級悪魔を『ミミ』と呼び、用もないのに呼び出しては、そばにずっと置いていた。
そして二十四の年に、なぜか彼は目の前にいて、心の臓を抜き取られた。
四回目の生は、貧困層に生まれた。
父は知らず、母は男相手に体を売る商売女だった。気まぐれで子を可愛がり、殴り、育て、搾取する、そんな女だったが、自分が十歳の時に客の男に腹を掻っ切られ死んだ。
最低な女だったが、それでも、思い出したように自分を撫でる手も、癇癪を起こして気が済むまで殴った後に抱きしめてきた優しい腕も、もうないという事実に、涙が止まらなかったことを覚えている。
貧困層のため、十二歳での悪魔召喚の儀も行わず、似たような境遇の子と靴磨きやら花売りやらで小銭を稼ぐ日々だった。そしてある日、花を売った相手の客に、母と同じように腹を掻っ切られて殺された。そういえば、どんなに貧しくても、母は自分に花を売らせることはなかったな。なんて、死に際に思ったものだ。
一回目の人生は傲慢だった。気が弱いくせに生意気で、虚勢を張っては、悔し涙を流して八つ当たりをする。なまじ権力があっただけに、自分を立たない人間が許せなかった。
二回目の人生は臆病だった。殺されるかもしれない毎日に怯え、そんな自分を認められなくて虚勢を張った。生意気な態度で自分を大きくも見せたが、それでも根本は臆病だった。
三回目の人生は卑屈だった。過去には位の高い悪魔と契約したのに、今世は下級悪魔しか呼び出せない自分が恥ずかしかった。卑屈が故に、それを悟られまいと強い言葉で虚勢を張り、全てを嘘で固めていた。『ミミ』が大事なことだけが本当だった。
四回目の人生はクソだった。同情されたくなくて、惨めだと思われたくなくて、なんでもない顔した。舐められないために虚勢を張り続けた。思えば、前世も思い出さず、彼に殺されなかった人生だ。十四歳で死んだけど。
結局、自分が特別だと信じたいが故に、傲慢で臆病で卑屈で気が弱くて生意気で嘘つきで虚勢を張るチンケな人間が、特別にならずに無様に殺される。なんて滑稽な人生だろう。
そして五回目の生が、今。
一回目の人生に近い階級に生まれ、早くから前世を思い出していたが、人と言うのはあまり変わらない生き物らしい。
傲慢さは無いと自分では思っているが、人の目が気になる臆病者で、自分が何もできないと知っている卑屈者で、気も弱ければ生意気で、自分を大きく見せるための嘘もつく、虚勢まみれの女児が鏡の中でため息をついた。




