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あの日、僕はrock 'n' rollに出会った  作者: 銀色商会
出会いは風の中

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8/8

SS:星に願いを

本編に出てくるの女の子はどうなったのでしょう?

そんなお話しをご覧ください。

寝室の窓を開け夜空を見上げる。

こんな星の綺麗な夜にだけ、少しの後悔とともに私はそっと祈る。

「どうか、あの人が幸せでありますように」


私は生まれつき唇のあたりに障害があった。

ちょっとだけ形が違う。

そのことでいじめを受けてきた。


最初は父方の祖母だった。

父は資産家の生まれで、母は親戚がいなかったため結婚の時に相当反対されたらしい。

父方の祖父はすでに亡くなっていたが祖母が一族経営のグループを牛耳っていたので、父も、父の弟も祖母言いなりだった。

そんな中で父が連れてきた女性が気に入らなかった祖母は当然結婚に反対。

母との結婚をあきらめなかったのは父の祖母に対する精一杯の反抗だったのかもしれない。

父は母意外とは結婚しないと頑張った。

なんとか同居を条件に結婚を認められたが、実際には母の扱いはお手伝いさん以下だった。

そんな中で生まれた私の顔に障害があったことによりどうなるかなんて、分かり切ったことだった。


「お前のせいだ」

「そんな子は当家にはいなかった」

「お前の先祖にも問題があったに決まってる」


母は徹底的に祖母に迫害された。

最初は父も一生懸命母をかばったらしいが、結局は祖母を黙らせることはできなかった。

私は祖母に話しかけてもらうことも無かった。

親戚は私を見ないふりして母には冷たくあたった。


生まれてすぐに医師からは手術を勧められたらしい。

今ならすぐに対処できる、将来を考えたら早くした方が良いと。

しかし、祖母は決して許さなかった。


「その子がそんななのはお前のせいだ」

「お前の先祖の罪のせいだ」

「手術などしてその罪が当家にまで影響したらどうする」


母は何度もお願いしたが、祖母の答えは変わらず。

そのうち父も諦めた。

母は泣きながら訴え続けたが、いつしか声をかけることすらできなくなったそうだ。


私は幼稚園では周りに無視された。

祖母の一族に睨まれたくない近隣の家の子供は私とかかわらないように言われていたのだろう。

小学校でも無視されてきたが、状況は中学校で変わった。


複数の地区から集まった中学校では祖母の一族を知らない家の子もいた。

そんな中に入学して同じクラスになった3人の不良グループの生徒がいた。

最初は「気持ち悪ぃんだよ、近づくな」といわれた。

私はどうしたらいいか分からず、ただうつむいていた。

そのうち暴言が増えていき、直接の暴力になるのにはさほど時間はかからなかったと思うう。

あの頃の記憶は今も曖昧だ。


多分梅雨の初め、6月の終わりごろには蹴られたりしていたと思う。

蹴られて吹き飛んで周りの机ごと倒れた。

机の持ち主は私に文句を言った。


体中があざだらけになった。

それでも、祖母のこともあり誰かに助けを求めることもできなかった。

いや、助けてくださいと誰かに言っていいということを知らなかった。


そんな梅雨のある日、3人組と私の間に立ってくれた人がいた。

その人は「やめろ」と言ってくれた。

母以外で初めて私を助けようとしてくれた人。

やがて、その人もいじめられるようになった。

多分、私よりも強く蹴り飛ばされた、殴られていたと思う。

私はどうしていいか分からず、その人と話しもできなかった。

ひょっとすると、いじめが分散して楽になったと思っていたかもしれない。

それが卑怯だとも考えられなかった。


夏休みに入る終業式の日、いつもより派手に蹴り飛ばされた。

「夏休みだからって俺たちのことを忘れんなよ、何も変わらねぇからな」

ニヤニヤと笑いながら言われた。


その後のことはよく覚えていない。

私は泣きながら家に帰ったと思う。

そして母にあざだらけの体を見られた。

母は私を抱きしめて泣いた。

どのくらい時間がたったのか父が現れ、父と母が言い争っていた。

母と私は家を出た。


次の記憶は病院にいて入院していた。

顔の手術を受けていた。

そして夏休みが終わるころには別な街で母と二人で暮らすようになった。


夏休みが終わっても私は学校へ行かなかった。

どうして行かなかったのか。

この前母に尋ねたら「あんた、あの頃学校に行けるような状態じゃなかったでしょ」と言われた。


秋の初め頃、父が一緒に住むようになった。

両親の間で何があったのかは聞いてない。

そんなある日。

私は突然気が付いてしまった。


あの人はどうなったの?


私をかばってくれた人。

私と一緒にいじめられるようになってしまった人。

私が、楽になったと思ってしまった人。


「あ、あ、あ・・・」


言葉にならずただ震えて泣き出した。

異変に気が付いた母が私の名を呼びながら抱きしめてくれた。

父が慌てて走ってきた。

「どうしたんだ?大丈夫か?」

私は学校で起きたこと、あの人の事を両親に話した。

父は初めて私に泣きながらこう言った。

「そうか、お前を守ろうとしてくれた人がいたのか」

私たち3人は抱き合って泣いた。


それから私はあの人への罪悪感で押しつぶされそうになっていた。

時々発作のようにあの人の事を思い出しては涙が止まらなくなった。

両親からはお前が悪い訳じゃない、いじめをした人間が悪いんだと繰り返し言われたが、自分の気持ちがどうにもならなかった。


そして年が明けたある日。

父が新聞を持って帰ってきた。

いじめで処分された生徒が逆恨みして、いじめられていた生徒をナイフで刺そうとしたが、たまたま近くにいたいじめられていた生徒の知人が助け、いじめで処分された生徒が逮捕されたという記事だった。


「これって!」

大声をあげてしまった私に父が昔からの知り合いに頼んで調べてもらった話しを教えてくれた。


私を守ろうとしたあの人は、いじめに気付いていたのに見て見ぬふりしていた担任を糾弾、担任は処分された。

いじめをしていた生徒3人も処分を受けたが、そのうちのリーダー格の生徒がこの事件を起こしたと。

あの人を守ってくれたのはライブハウスで知り合った人だという。

ライブハウスってなんだろう?

そんなところへ行っていたの?

最初は色々疑問が浮かんだ。

でも、気が付いた。

あの人には味方の人がたくさんいて、自力でいじめも解決してしまった。

私がただ悩んでいる間に自力で前に進んでいた。

凄いと思ったし、憧れるようになった。


冬休み明けから転校先の学校へ通うようになった。

罪悪感がなくなったわけではなかったけど、私も前に進みたいと思った。

いつかあの人に謝れるようになりたいと思った。

学校を長く休んでいたから勉強は大変だったけど、あの人へ会いに行けるようになりたいと思って頑張れた。


やがて高校生になった。

あの人が住んでる街とは離れているから同じ高校に知っている人はいない。

今なら、あの人に謝れるかもしれない。

あの人に会ってみたい。

私はそう思って昔住んでいたあの街に行くことにした。


父に車で送ってもらい、帰りの待ち合わせを確認して車を降りた。

ライブハウスで知り合った人に助けてもらったという新聞記事を見たから、この街のライブハウスに行けば会えるんじゃないかと思った。


結果的に言えば、あの人には会えなかった。

ライブハウスが数件あってどれか分からず、私が行った昼間の時間にやっていなかったところもあった。

やっていたところでも、あの人の事をどう聞いていいか分からなかった。

数年前にいじめ事件で新聞に載った被害者の人。

そう聞いてみたらライブハウスの人に変な顔されて分からないと言われてしまった。

結局その後も何回かあの街に行ってみたが、あの人に会うことはできなかった。


そして大学に入ってしばらくしたころ。

私はあの人と偶然再会した。


大学の構内を歩いているとき、こちらに歩いてくるグループの中にあの人がいた。

ギターを背負って、あんまり似合わない黒いシャツを着ていた。


「あ、あのっ!」

すれ違いそうになって慌てて声をかけた。

「ん?なに?」

グループの中の一人が私に気が付いてくれた。

「あ、あの、わたし・・・」

なんて言っていいか分からず言葉に詰まる。

「あの、頑張ってください」


結局あの人と話すことができなかった。

ただ、あの人はありがとうと微笑んで歩いて行ってしまった。

私だと気が付かれなかった。

自宅へ帰ってからあの人の名前を父に確認し、今度こそはと思ったけど大学ですれ違うことは無かった。

軽音部の人にも尋ねてみたが、あの人が同じ大学にいるのかどうかも分からなかった。


あれから月日が経ち、私は結婚して二児の母となった。

子供たちは騒々しく元気でとても幸せだ。

父方の祖母たちがあの後どうなったかは分からない。

父と母はケンカしながら仲良く過ごしている。


あの人に謝れなかったことは今でも後悔している。

夫と付き合うときに昔のことを話したけど、夫も両親のように悪いのはいじめていた人間で君じゃないと言ってくれた。

それでも私はあの人に謝れなかったことを後悔している。


私は幸せになれたから。

だから子供たちが寝静まり、夫がお風呂に入っている僅かな時間。

星がきれいな夜に祈るのだ。

「どうか、あの人が幸せでありますように」

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