出会いは風の中
初投稿の短編集で登場した人物が再登場しますが、基本的にこのお話しだけで完結するようにしてます。
「僕」が「rock 'n' roll」に出会い救われる話し。
皆さんに大事な出会いはありませんでしたか?
複数回に分けての投稿ですが、必ず最終話まで投稿しますので安心してご覧ください。
「寒いな」
まだ14時ごろなのに、出張から帰ってきた街はすっかり肌寒くなっていた。
12月も下旬になって冷え込むようになった。
空は重く圧し掛かり、夕方からは雪になるらしい。
コートの襟もとを気にしながら商店街のアーケードから一本奥の道へ入っていく。
この道を通ってあのライブハウスへ向かう。
長年、歩きなれた道の風景は大分変ってしまった。
それでもあのライブハウスが変わらずあることがうれしい。
あのライブハウスには昔ほど足しげく通っているわけではないが数か月に一度は必ず顔を出すようにしている。
「もう30年以上経つのか」
思わず独りつぶやく。懐かしい人から連絡をもらいライブハウスで待ち合わせ。
心が浮足立っているのが分かる。
あの人に出会ったのも、こんな雪が降りそうな日だったな。
いじめが始まったのはあの人と出会う一年ほど前、中学に入学してしばらくたった頃だった。
同じクラスになった女の子が標的だった。
その子には少しだけ障害があったんだと思う。
みんなと少し違う。たったそれだけのことを理由にいじめにあっていた。
いや、いじめなんてものじゃない。女の子に飛び蹴りなんてするか?
数メートル吹き飛ぶんだぞ。3人の不良グループが中心になっていた。
先生にも訴えたけど何の役にも立たなかった。
平成になったばかりのことだからインターネットもスマホもない。
情報もないし誰かに聞いてもらえる環境なんて無かった。
僕の世界は学校と家しかなかったんだ。
このままじゃその女の子が死んでしまうと思った。
だから庇った。やめろと言い、飛び蹴りしようとしているやつを羽交い絞めにして止めた。
梅雨前に始まったいじめは秋の初めに女の子が転校して終わった。
無力だった。僕は何もできなかったんだ。
そんなことを考えていたらいじめの標的は僕に変わった。
「むかつく」
なんでこんな事をするのか、殴られながら聞いた僕に帰ってきたのは一言だけ。
なんだよそれ、ふざけんな。
必死に抵抗した。殴り返したりはできなかったけど。
体をかばいながら必死に抗議した。
先生にも訴えた。
「いじめられる方にも何か問題があるんじゃないの?」
面倒くさそうに、こっちを見もせずに答えが返ってきた。
いじめが始まってから一年が経った。
二年生になったら終わるかも、クラスが離れれば。
期待は二年生になった初日に同じ教室でこっちをにやにや見ているあいつらの顔を見た時に砕けた。
そこからはただ惰性で学校に通っていた。相変わらず誰も助けてくれなかった。
両親には言えなかった。
とても暖かく優しく、時に厳しい理想のような両親を悲しませたくなかった。
いや、上手く生きていくことができない自分を見せられなかったんだと思う。
死にたい。
そう思うようになってからも、両親を悲しませるのが嫌で実行に移せず12月になった。
あの日、中学校からの帰り道、傷だらけの僕は周りの人の目を避けるようにいつもの商店街から一本奥の、人通りの少ない道に入った。
「なんで僕が・・・」
答えなんて帰ってくるはずがなかった。いつもうつむきながらつぶやく言葉に答えは返ってこない。
「よう、少年。ずいぶん男前だな?」
返ってこないはずのつぶやきに声が返ってきた。
その人はやたら高い身長で、黒いシャツに革の黒いパンツ、黒ブーツ。
シルバーの飾りのついたベルトにネックレス。
くわえ煙草で雰囲気の悪そうな、地下に降りる店の前に立っていた。
不思議と怖い人だと思わなかった。目が優しかったんだと思う。
学校と家で作られた僕の世界の外の人。
僕はその日、佑二さんに出会ったんだ。
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