本物は突然やってきた
「どーも! 日朝テレビ、期待の一番星―――真田部でーす!(ババ―ン)」
開けた玄関先に、この連日ミカンのことを執拗に探ってきた、あのテレビレポーターがいた。
気の緩みを突かれたことで、一坂は一瞬呼吸すら忘れてしまった。
「ほら、落とし物だっよ。感謝してね。ん? ん? ん?」
押し付けるように渡してきたのは一坂の財布だった。
なんという間抜け。
恐らく昨日の路地裏で落としたのだろうが、住所記載の免許証まで特典封入されているとくれば、この男にとって実に良い拾い物だったに違いない。
「実はとある方々と協力関係になーってね」
相変わらず癇に障るイントネーション。
真田部は天性のウザいテンションでその協力者を、断りも入れずこの場に迎え入れた。
「いやーどもども。ご無沙汰なノーネ」
「昨日ぶりでガッツ」
ナマズ男とサイ男だった。
二人は昨日の宇宙人然としたピッチリスーツではなく、役所勤めのような背広姿。
「やはり現地での協力者がいたホウーガ仕事もやりやすいノーでぇ、縁があったマタベ氏にそれを依頼したノーネ」
「オデたち気が合うでガッツ」
「ウェイロー殿……ジアング殿……」
真田部がマイクを握りしめながら感無量に目頭を熱くさせる。
「「「友情っ!」」」
スクラムを組んだ。
「あんたらなぁ……」
「ままま、とりあえず話を聞くノーネ。あ、長居はしないのでお茶は結構なノーネ」
営業マンさながらのナマズ男は黒ぶち眼鏡を、くいっとさせて図々しいことを宣う。
真田部が待機していたカメラマンを呼び寄せ、玄関がさらに狭くなった。
「目線こっち? ……うおっほん。生放送は緊張するノーネ。あーアーあー」
ウェイローが声の調子を整えている。
というか、もうこの二人の宇宙人が怪しいのは一坂もわかっているのだが、
「じツーはそこのエイリアン娘の親御さんを連れてきたノーネ」
「!?」
それを合図にいい加減ギュウギュウの玄関に、一人の女性がなだれ込んできた。
「んまあ愛しい我が子! 可愛い我が子! 会いたかったわ!」
サングラスとヒョウ柄コートというコテコテの成金趣味なその女は、大袈裟なまでに感激しながらミカンに抱き着いてスリスリ頬ずりする。
「うう、よかったノーネ」
「オデこういうの弱いんでガッツ……」
「感動……かんっどうですっ!」
感化された宇宙人二人と真田部がハンカチで涙を拭う。
しかし、当のミカンは「誰?」みたいな表情。
「ずびび(鼻をかむ音)。……実はちょっとした事故でママさんの胎内にいたこの子ーガ宇宙へ放出。何の因果かユーの体内に寄生してしまったノーネ」
ウェイローが雑に説明した。
「さあ、ママと一緒に帰りましょう! お家でパパも待ってるわ!」
「パパ?」
ミカンがこっちを見た。
「パパ」
ぎゅっと抱き着いてきた。
「その人は違うのよ。本当のパパはちゃんといるのよ」
ミカンの母親を名乗る女が強引に引き剥がそうとする。
「やー!」
しかしミカンは離れようとしない。
必死に一坂の体にしがみつく。
「………………あ。おいやめろ!」
茫然と立ち尽くしていた一坂はそこで我に返り、キツイ香水の臭いを撒き散らす女の腕を掴んだ。
「なにするざますかこのガキ! 目つきの悪いカーラース星人みたいな目をして!」
「なにその見た目が想像できるそのまんまなネーミングの宇宙人っ!?」
「どうせアンタのような非モテ顔面凶器は夜な夜なエロ本ばかり読んでるんでしょ!」
「ほっとけじゃかあしいわちくしょったれ!(涙目)」
二人はカメラの前で程度の低い罵り合いを繰り広げる。
「諦めるノーネ……」
ウェイローが崖の上で自殺を図る犯人を諭すように、一坂の肩に手を置いた。
「ユーがこの娘のことを大切に思っているのは十分わかったノーネ。でもやはり子供は本当の両親のもとで暮らすのが一番幸せなノーネ。大丈夫。この親子はアタチら宇宙連合が責任をもって故郷の星に送り届けるノーネ」
「それはどういうことですか?」
こんな騒ぎの中なのに、その声は贔屓を感じるくらいによく通った。
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おきな




