31.力を返す日
夢の中で、誰かがカリナを起こす。
「起きて、起きて。私よ」
「あなたは‥‥‥」
昔、泉のほとりで会った妖精。
あの頃と変わらない美しい姿のまま、彼女は夢の中で微笑んでいた。
「ネックレス、本当にありがとう。私ね、あれからずっと無くさず身に付けているわ。彼との大切な思い出なの。今はソル王国も滅んでしまって、彼の思い出は何も残っていないから」
「ソル王国? それって伝説の国ね。妖精の姫が恋した王子がいた国‥‥‥」
「そうよ。ただ、どうしても寂しい時は、過去に会いに行くけれどね」
フフフと彼女は笑う。
「もしかして、そのネックレスは彼から貰ったものなの? じゃあ、あなたは妖精の姫なの?」
彼女は今頃、分かったのね。
そう言うようににっこりと笑った。
カリナは伝説のことをいろいろと尋ねたくなった。
でも、彼女は急に真顔になる。
「いろいろ話したいけど時間が無いわ。少しマズイことになったの。あなた、力を大きなことに使ってしまったわね。神に気付かれてしまったわ。怒られる前になんとかしないと」
「大きなこと? もしかして、国王陛下の暗殺を防いだことかしら?」
「そうよ。私の力は未来も過去も見通す力。‥‥‥私、時の妖精なの。私の力は時を超える力。そして、今を見通す力。その力を少しだけあなたにあげたの。だから、なんでも分かったはず」
「えぇ。例えば、運命の相手、運命の相手が住んでいる家、出会う場所。それに今、違う場所で運命の相手が何色のドレスを着ているかも分かる‥‥‥」
「そう、それが私の力。私は意識だけでも時も空間も超えて、好きな物を見られるの。あなたの望みは占いだったから、知りたいことだけをカードが示すように工夫しておいたのよ」
妖精はそこで、カリナに申し訳なさそうな顔をした。
カリナは理解した。
この力はきっと、本当は人間が持ってはいけない力。
神に怒られてしまう前になんとかしないと。つまり‥‥‥。
「‥‥‥その力を返す日が来たのね」
「ごめんなさい。ネックレスを探してくれたのに」
「いいえ。この力のお陰で、いろいろなことを知れたわ」
そう言った瞬間、体の中から何かが抜けていく。
そんな気がカリナにはした。
「また会いましょう。次に会う時はもっとゆっくり話をしたいわ」
「えぇ。そうね」
「じゃあ、約束ね。また来るわ」
そう言うと、フフフと笑い声を残し、妖精は消えてしまった。
次の朝、夢から覚めたカリナは悟った。
自分は、妖精の力を失ったのだと。
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