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30.運命の花嫁がみつかりません(3)

 ルーカスには何の表情も浮かんでいない。

 だが、何度も彼は汗をぬぐっている。

 どうやら、緊張しているようだ。


 彼はゴクッと唾を飲み込み、言葉を発した。


「こんな時にとは思うけど‥‥‥。やっとすべてが解決した。だから、私とパーティに一緒に行って欲しい。再来週に開かれるものなんだが」


 ルーカスはそう言って、また汗をぬぐった。


「えっ? パーティですか?」


 突然の言葉に、カリナは首を傾げる。

 何故、自分を誘うのかと。


「実は、カリナ嬢と出会ったパーティの後、ここに来た時も、その次に来た時も、君をパーティに誘いに来たんだ。この前は三度目の正直で誘ったんだけどね」


「パーティの後に、その次も‥‥‥?」


「パーティの後は君が占いを始めてしまったし、私も途中でリンダのことを思い出して、全く違う話に。次もこの前の誘いも仕事だと。今回はどうだろう?」


 カリナはルーカスの言葉に目を大きく見開いた。


 思い当たることがあったからである。

 それは、ルーカスのことば。

 「パーティのことなんだ」「今日はちゃんとパーティの‥‥‥」。


(あれは、パーティの誘いのことだったのね。「ちゃんとパーティの誘いに来た」そう言いたかったの? パーティの後に来た時、私が占いを始めて誘えなかったから次にまた誘いに?)


 やっと、カリナは彼の言葉の意味が分かったのだった。

 

(でも、どうして? 店には宣伝文句の件で来ただけではなかったの?)


 ルーカスは、焦ったように言う。


「ごめん。戸惑わせてしまったかな?」


「いえ‥‥‥」


 そう言いながら、カリナは混乱していた。


(どうしてパーティに誘うの? もう、脅しでもない、憐れみでもない。そして激励でもないはず。もしかして、今回の件のお礼?)


 恋の駆け引きは失敗したはず。

 いや、またチャレンジするつもりだが。


 とにかく、カリナには自分が誘われる理由がわからない。


「本当は、先日のパーティの帰りに何度も君に気持ちを言おうと思ったんだ。でも、エリィの件が解決していなかったから。全て終わったら言おうと堪えていた」


「あっ、それで‥‥‥」


 あの日、言葉を途中でやめたりと、様子がおかしかったのはその為だったようだ。


「私はずっと、カリナ嬢に惹かれていた。あのパーティで私を真っすぐに見てくれた日から。なんて真っすぐな目で私を見るのだろうと。そして、知れば知るほど夢中になった。人を心で見る真っすぐな女性。しかも度胸もあって賢い」


 ルーカスはカリナをじっと見る。

 その瞳はとても熱いもの。

 

 しかし、それに気付く余裕はカリナにはない。


「う、嘘‥‥‥」


「本当だ。だから、君が恋に落ちるのに必要なことも実行しようと思った。ごめん。メモを見てしまった」


「あのメモをそんな風に思っていたのですかっ」


「うん。女の子が自分の夢を書いた、そう思っていたけれど‥‥‥。違った?」


 カリナは口ごもる。

 とても、女性に彼に恋に落ちてもらうためのものだとは言えない。

 

「えっ。それは‥‥‥」


「いいんだ。勝手に見た私が悪い。本当にごめん。前に出かけた時も、君に私に恋に落ちて欲しくて、自分なりに積極的になったつもりだった。メイソンに力を貸してもらったけど」


「そ、そうだったんですね」


 カリナからは上手く言葉が出てこない。


「私の気持ちに応えてくれないだろうか? 運命の花嫁なんて、いてもいなくてもいい。‥‥‥私は君が好きだ」


(私、ずっと押されていたということ?)


 やっと理解できたルーカスの言葉。

 混乱。恥ずかしさ。そして戸惑い。

 そんな感情がごちゃ混ぜになった結果、カリナは頭の中が真っ白になってしまったのだった。

 





 ルーカスからの突然の告白。


 実は、カリナはその後のことはよく覚えていない。


 頭の中は真っ白。でも、カリナは体も顔も暑くて。

 じっと自分を見つめるルーカスは本当に素敵で。


「すぐじゃなくていい。次に来た時に君の気持ちを聞かせて欲しい」


 そう言った彼は、本当に優しく微笑んでくれているように見えた。


 まるで夢の中にいるような、嬉しいような恥ずかしい気持ち。

 でも、彼に答えなければと、カリナは上ずった声でなんとか言葉を発した。


「わ、私も、ルーカス様のことが好きです。ずっとルーカス様の優しさに惹かれていました。パーティに一緒に行きたいです」


 ルーカスは「本当に? 嬉しい。夢みたいだ。好きな女性とパーティに行くのがずっと夢だったんだ」と言っていた。

 その時の彼は、なんだか泣き笑いをしているように見えた。


 その後は、どうしたらいいかわからなくて、ただ二人で向き合って座っていたようにカリナは思う。

 

 そしてその後、リンダが店へと入って来たことを薄っすらと覚えている。


 赤い顔で向き合って座っている二人を彼女は見たのだろう。

 

 リンダが「まぁ、やっと? カリナ様は、占いの結果に責任を持ったということになるわね」と笑う声が、ぼんやりとカリナには聞こえた。


 ルーカスは「気が早い。まったくお前は‥‥‥」とブツブツと言っていた気がする。

 

 その日は寝るまでずっと夢の中にいるようだった。

 そして、夢見心地のまま、カリナはその夜、眠りについたのだった。

お読みいただきありがとうございました。

短いので19時に31話(これも短いです)を投稿します。


もう少しだけ続きます。

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