28.運命の花嫁が見つかりません(1)
※(12/7)24.運命の花嫁(2)にサーラの想い人についての記載を加筆しています。
ブックマークいただいている方、お読みいただいている方、申し訳ありません。
気になる方がいらっしゃれば、24話をご確認ください。
カリナの目の前に座るサーラは苛立っている様子。
それもそのはず、ルーカスが来ると言っていた時間から30分ほど経つのだ。
「ルーカス様、遅いわね。一緒に二人の未来を占おうと誘ったくせに。どこで寄り道をしているの? 未来を占ってから、正式に婚約しようだなんて言っておいて」
「そうですね。随分と遅いですね」
カリナはワザと心配そうに答えた。
今日はサーラを占い、窃盗団がどこに潜んでいるかを確認する日。
ルーカスとメイソンは、店の仕切り板の向こうで息を殺して隠れている。
物置部分と店を仕切ってはいるが、相変わらず、物置部分には何も置かれてはいない。
だから、二人が身を隠すための箱を急遽、置いた。
サーラだけを店へと来させ、占う。
これが当初よりの計画である。
「仕事を済ませてから来るとは言っていたけど。それにしても、どれだけ待たせるのよ」
カリナには、チッと舌打ちが聞こえた気がする。
到底、貴族、いや王族とも思えない態度だ。
「仕事が忙しいのかもしれませんね。それとも、事故にでもあったとか? 私、ルーカス様がどこで何をしているか占えますよ?」
「そんなことができるの?」
「えぇ。想い人がどこにいるか、何をしているのか、私には見ることができますので」
そこでカリナは、「暇つぶしに是非」とにっこり笑って言った。
「想い人ね‥‥‥。まぁ、それもいいわね。じゃあ、占って頂戴」
サーラの言葉にカリナは心の中で微笑んだ。
(上手く、誘導に乗ったわね)
これが、カリナの考えた計画であった。
実は、ディアナ伯爵のパーティの日、心に引っかかっていたことがもう一つある。
最初にサーラが占っていたのは想い人のこと。
(わざわざ、想い人なんて言ったのは、ルーカス様以外の人のことを思って言ったと思うのよね。だって、初恋の人というのは嘘。彼女はルーカス様を想ってはいないもの)
カリナの店で本を盗んだ男女は若かった。おそらく、カリナやルーカスと同じ年頃。
そして、ルーカスが掴んでいた情報によると他の占い店にも、若い男女が押し入ったそう。
骨董品店も若い男女だったと言っていた。
(一座の中に彼女の想い人がいるとすれば。彼女の想い人を占えば、窃盗団がどこにいるかがわかるかもしれない)
これが、カリナの考えたことだった。
尚、「例え寝泊まりを一緒にしていたとしても、男女間に友情はない」と、オリビアが前に言っていたことが発想のヒントだったのはルーカスには伝えてはいない。
確実ではないが、ひとつの可能性。
何かルーカスの為に。
そう思って考えついたことだった。
「では、サーラ様の想い人がどこにいるかを占いますね」
「えぇ。お願い」
カリナはカードをシャッフルし、3枚引いた。
(首都を示すカード、廃墟の絵のカード、方角は、西ね。国外に出たと言うのは嘘だったのね)
「うーん。ちょっとはっきりしませんね。相当、お忙しいそうであちらこちらに移動しているようです。もう少し具体的に占いますね」
「えぇ」
カリナは心の中で、廃墟の近くにある目印はと唱えカードを2枚引いた。
(楓の木に食堂‥‥‥。これで、ルーカス様達は探せるかしら?)
「あぁ、商業組合みたいですね。時間がかかるかもしれませんね」
「じゃあ、もう帰ろうかしら。私、午後からお茶会の約束があるのよ」
「せっかくですので、最後にルーカス様とサーラ様が幸せな結婚ができるか占いましょうか?」
「そうね。お願い」
カリナは一枚のカードを引いた。
(やっぱり‥‥‥)
分かってはいたことだが、それは嘘のカード。
「待っているのは、不幸かもしれませんね」
カリナは冷ややかに言った。
「ちょっと、あなた、何を!」
サーラの目には怒りの色が浮かんでいる。
「人間は努力で未来も運命も変えられます。もし、あなたが変える気があるのなら今からでも‥‥‥」
今からでも間に合う。
カリナは、せめてそれだけでも伝えよう。そう思っていたのだが。
その言葉は、サーラの声に遮られ言うことはできなかった。
「不幸にはならないわよ。私はルーカス様の妻となるのだから」
立ち上がり店から出ていくサーラ。
扉はカリナの鼻先で、バンッと勢いよく閉まった。
「完璧だよ。カリナちゃん」
仕切り板の向こうから出て来た相変わらず、メイソンの口調は軽い。
(騎士の制服を着ているからと一瞬、見直した私が間違っていたわ。口を開いたらいつものメイソン様だった‥‥‥)
カリナが若干、冷たい目をしていることには彼は気付いていない。
ルーカスは地図を見ながら言う。
「うん。これで彼らの隠れ家の検討はつくはずだ。メイソン、すぐに目ぼしい場所を割り出し、向かおう」
「そうだな。何を企んでいるかはわからないが‥‥‥。急いだほうが良さそうだな」
サーラの想い人がいる場所を、カリナは2人に伝えた。
どうやら計画は上手くいったよう。
カリナはほっとしていた。
(どうか、事前に企みが防げますように)
「カリナ嬢、ではまた。行こう、メイソン」
ルーカスはそれだけ言うと、店から出て行った。
一緒に出ていくのかと思っていたが、メイソンは途中で足を止めた。
「僕、言ったよね。カリナちゃんがルーカスへの気持ちを持ったままなら大丈夫だって。僕が思った通り、運命の花嫁は偽物だったし、後はハッピーエンドに進むだけになっただろ?」
「えっ? ハッピーエンド?」
「あれ? まだ気づいてないのか。この前のデートでかなり押したとルーカスは言っていたのに」
メイソンはブツブツと言う。
「メイソン様?」
「いや。いい。それより、この前のデートは楽しかった? また僕の提案だからね」
「えっ、またメイソン様の提案だったのですか? 前のレストランみたいに?」
彼はニヤニヤとしながら言った。
「ルーカスはデートなんてしたことがないんだよ。だから、泣きつかれて、僕が女性が喜びそうなコースを考えたのさ。まったく、もどかしい二人だねぇ」
「デートをしたことがない‥‥‥」
ルーカスは女性慣れしていたわけではないようだ。
「もう、鈍いな」
その時、メイソンはビクッと体を震わせた。
「メイソン、余計なことを言っていないだろうな! 早くしろ!」
ルーカスの怒鳴り声が下から聞こえたからだ。
「じゃあね。後はもう、二人でなんとかして」
そう言うとメイソンは、物凄い速さで階段を駆け下りた。
「今のは一体‥‥‥」
残されたカリナは、一人、呟いた。
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