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第八節 それぞれの能力

 

「――傷は大丈夫なのか?」

「おう。まあちっとは痛むが、これくらいどうってことはねえぜ」


 放課後。四人の揃った空き教室にて、リゲルと交わされる会話。いつも通りのスーツに隠されている傷。驚くべきことに、昨日の今日でもその振る舞いは普段と変わらないように見える。


「その割には左が動いてないぞ。平気ならもっと動かしたらどうだ?」

「テメエの野暮な突っ込みは聞いてねえんだよ」

「その、二人とも……」


 だが、それがあくまで外観だけであることはここにいる全員が分かっていた。……今日話さなければならないのは、これまでの俺たちとは違うことになる。世間話でも馬鹿話でも、友人としての談笑でもなく。


「この体力馬鹿はともかくとして、蔭水は大丈夫なのか?」

「まあ……」


 ……正直本調子とは言い難い。一晩寝て体力はある程度戻ったものの、傷の痛みや筋肉痛はまだ鮮烈に残っている。朝学園まで歩いてくるのもしんどかったくらいだ。講義も集中して受けられたとは言えず、それでも今日、登校しないわけにはいかなかったが。


「ぼちぼちだ」

「そうか。なによりだ」

「フィアも大丈夫かよ。昨日は、その……なんだ」

「大丈夫です。ありがとうございます」


 笑みを返す。俺としても昨日の今日で心配していたところはある。だが起きてからのフィアには何も変わったところはなく、いつも通り。俺とは違い、講義でも真面目にノートを取っていた。流石に口数は多少減っていたが……。


「――じゃあ、そろそろ始めるとするか」

「……はい」


 それくらいは仕方のないことだろう。ジェインの言葉と同時、この場にいる全員の表情が、それまでより真剣味を増す。……ここからが本題だ。差し当たっては。


「……誰から話す?」


 初めに話す内容があるのはフィア以外の三人。俺か、リゲルか、ジェイン。その順番も軽くはないことのように思えてくる。できれば俺以外の二人からと、内心にそう思い。


「黄泉示が良けりゃ、俺から――」

「――僕は時間を操れる」

「は?」

「加速と遅延の両方が可能で、加速は二分の三倍まで、遅延は倍まで。消費は倍率によって変わるが、最長で四十分、最短でも十五分はいけるはずだ」

「……」


 ――流れるようなジェインの発言に、場の空気を全て持って行かれた。


「……! 凄いですね……!」

「てめえ、人が言おうとしてるとこに被せてきやがって……!」

「話し出しは早い方が良いだろう。終わりも早くなるし、それだけ他のことに時間が割ける」

「そういうこと言ってんじゃねえよ」


 一気に平常に戻ったような語り口に、少し安堵している自分を意識する。これなら少なくともこの段では、微妙な空気にはならなさそうだ。


「……つうか時間を操れるんなら、世界中の時間を止めちまえば無敵じゃねえか」

「そんなことができるなら昨晩ほど苦労しない。僕が操作できるのは、特定の対象に付随する時の流れだけだ」

「……時の、流れ」


 昨晩のあの感覚を思い出す。ジェインの援護を受けた際、突然周囲のものの動きが遅くなったように感じられた。あれは周囲が遅くなったのではなく、実際には俺自身の時間の流れが速くなり、相対的に周りのものが遅く見えるようになっていたのか。


「……分かり辛いだろうがそういうものだと思ってくれ。僕も、完璧に自分の能力を把握してるわけじゃない」

「んだよ。それじゃ大したことはできねえな」

「その大したことない力に助けられたのがどこの誰か、もう忘れたのか」

「けっ。その節はどうもありがとうよ」


 助けられたということは確からしい。如何にも不満と言った口調で礼を告げ、足を組んで椅子の背にもたれる。


「僕自身が前に立つことは余りできないが、この能力で君たちを援護することはできる。支援としてはかなり強力であるはずだ。自分で言うのもなんだが」

「いや、実際そうじゃないか……?」


 今し方聞いたところでは、ジェインの力は端的に対象の行動速度を変化させるもののようだ。加速すればそれだけ多くの行動が取れるようになり、遅延させればそれだけ少ない行動しか取れないことになる。近接戦で速度を変化させるのがどれだけの影響力を持っているのかは昨日の戦闘が示している通り。……強力も強力。間違いなく戦いの趨勢を左右するだけの能力だろう。


「但し欠点もある。聞いていて分かったかもしれないが、流れる時間の速さを引き上げるという理屈以上、時間単位でかかる消費もその分だけ増加するんだ」

「……?」

「つまりだな。本当に倍の速度で動けるようになっているわけじゃなく、二倍の時間を圧縮して消費しているのに近いということだ。倍速で五分間動いたなら普通に十分動いたのと同じだけの疲労が出るし、それ以外の影響もきっちり元の時間分だけ出る」

「な、なるほど……」


 辛うじて理解できたようなフィア。……なるほど。


「それで、傷を負った状態で長くは掛けられないと言ってたのか」

「そういうことだ。適切な治療を終えたあとならともかく、真新しい傷の時間を加速させれば症状は悪化するだけだからな」

「おい待て。それ、初耳なんだけどよ」

「あのときには他の選択肢がなかった。傷の具合からちゃんと解除すべきタイミングは守っているから安心しろ。大まかにだがな」

「ちょっと待て。今最後になんて付け加えた?」


 俺の予想したことを裏付ける会話のあと、そのままわちゃわちゃと言い合う。この二人は全く、なんというか……。


「それなら外から見た場合に、その……動ける全体の時間も半分になるってことですか?」

「その通りだ。流石カタストさんだな。リゲルと違って理解が早い」

「え、いえ……」

「なんつうか、地味だな。正しく眼鏡野郎にぴったりだぜ」

「その発言の意図と論拠をはっきりさせてもらおうか」


 またきな臭くなってきた。流れを断ち切り元へと戻す為に、意識して身を乗り出す。


「……ジェインの力については、これで全部なのか?」

「――そうだな。概ねこんなところだ。細かい点でもう幾つかはあるかもしれないが……」

「うし。なら前座が終わったところで、次は俺の話と行くか」


 他人の発言を堂々と遮ったリゲル。額に青筋を立てているジェインを気にも留めず、ブルーの瞳をキラリと光らせてニヤリと笑んだ。


「俺はな。――重力を操れるぜ」

「……重力を?」

「ジェインさんの重力版……ってことでしょうか」

「……その言い方は止めてくれねえか? フィア」

「あっ、済みません!」


 いきなり水を差されたような表情になる。……俺も一瞬似たようなことを思った。共に操る力。なんにせよ、こちらも強力そうであることには違いない。


「一々突っ掛るな。カタストさんはただ、事実を指摘しただけだろう」

「煩えな。お前とちがってこっちは三倍くらいまでいけんだよ。それだけでも大違いだぜ」

「そうか……?」


 それはそんなに変わらないような気もするが。


「それに俺の力は特定の物とかじゃなくて、指定した一定の範囲に掛かる重力を操作してるみてえなんだよな」

「……例えば〝一メートル四方〟とか、〝半径三〇センチの円〟とかか?」

「いや、いつもなんとなくこの辺にかけるかって感じで決めてるからその辺はよく分かんねえんだが……。あんまり狭くは出来なくて、そいで広くすればするほどなんつうか、抜けてく感覚が強くなんだよ」

「抜けてく感覚?」

「なんかこう、力みてえのが抜けてくっつうか……じわじわがっくり来るっつうか。上手く説明できねえんだが、こう……」


 俺とフィアの疑問に答えようとして、あてどなく腕を動かすリゲル。流石にそれではなんとも……。


「能力の使用に伴った虚脱感があるということだな。抜け切ると力が維持できなくなるのか?」

「お、おう。そうだぜ」


 思わぬところからの助け舟に、意表を突かれたような顔をしながらも同意した。……そういう風に言うということは。


「ジェインさんもそうなんですか?」

「僕も力を使っているときにそんなような感覚がある。リゲルの力と僕の力は、原理的に似たものなのかもしれないな」

「……てめえと近いとかゾッとしねえな」

「こっちの台詞だ」

「……昨日、リゲルと戦ってるとき、あの男が妙に遅くなるときがあったような気がした」


 目の前の遣り取りはスルーして、昨晩の光景を思い出しながら言う。


「あれは男の周囲の重力を上げて、体重を重くしてたってことか?」

「そうだぜ。今まででもケンカで使うのには慣れてたしよ。ま、いきなり上から飛び掛かってきたときにはヤベえと思ったが――」

「よし。では前座も終わったところで、次は蔭水の番だな」

「まだ話は終わってねえよ。勝手に進めんな」


 数分前の記憶がまるっきり抜け落ちているかのように、先の自分の行動を思いっきり棚上げして言うリゲル。それに対し。


「……お前の考えるような〝重力〟ならば、力の方向は上から下」


 分かり切ったことを口に出すような、実にめんどくさそうな仕草でジェインが話す。


「だから上から飛び掛かってくるような相手には使えない。特に自分と重なってしまっているような相手なら尚更だ。これ以外に何かあるのか?」

「うっ……」


 ……なかったようだ。


「大体自分の能力の把握が雑すぎる。重力の定義もそうだろうが、個人的な感覚の話を聞かされたところで僕らにとっては時間の無駄だ。話を続けたいなら持続時間の明確な基準でも出してみせろ」

「はあ? どれくらい続けられるかなんざそのときの調子と気合い次第だろうが。必要だってんなら何時間だってぶっ通しでやってやるぜ」

「……この馬鹿が……!」

「ま、まあまあ。それはこれから皆で確かめるとして……!」

「……そうだな。分かってない部分をこれから確認してけばいいんじゃないか」


 フィアと共に二人を宥めに掛かる。二人と言うよりは、なに言ってんだこいつ、みたいな顔をしたリゲルにキレ掛けたジェインを宥める方が主だったが。


「……そうだな、済まない。つい頭に血が上った」

「ったく、一々突っ掛ってくんなよ。んじゃ黄泉示だな。悪いな待たせちまって」

「いや、気にしなくて良い……」


 ジェインの口の端がひくついているのもこの際気にしないことにする。……どう話したものかと少し考えてみるが、上手く纏まらない。


「……俺の場合は、俺というよりも、家系が少し特殊なんだ」


 なので考えたまま、ひとまず話を始めることにした。話し出しは恐らく、これでいい。


「退魔師……って言って分かるか?」

「ああ。分かる」

「幽霊とか、お化けとかと戦う人のことですよね」

「エクソシストとかゴーストバスターみてえなもんだろ? それなら映画で見たから分かるぜ」

「……まあ、そんな感じか」


 頷く。大まかには合っていそうだし、各々のイメージに細かく拘っても仕方がない。


「とにかく俺の家は、人に害なす異形を調伏……退治するとか、そういう仕事をしてたらしいんだ」

「……異形か。本当にそんなものがいるのか?」

「分からない。ただ、そう言う話で俺の家に伝わっているものがあったことは事実だ」

「……なるほどな」


 会話に間ができたところで、膝上に置いておいた長袋の紐を解く。ゆっくりと取り出したそれに、注目が集まるのを感じながら。


「それ……」

「昨日使っていた刀か」

「ああ」


 一つ頷いて、切っ先を他に向けないよう、真横に膝の上に置いた。


「この刀……『終月』は、鍛錬用の刀なんだ」


 あらぬ誤解を受けないよう、まずは皆に向けてそのことを説明する。


「刃は付いてないし、鞘もない。木刀みたいなもので、切ったり刺したりはできないんだ」

「真っ黒ですね……」

「一応何ものにも染まらない黒を意味してるらしい。まあ多分、あんまり深い意味はない」


 話す俺の隣りでなるほど……と頷いているフィア。ジェインもリゲルも、特別それ以外の印象は持たなかったらしい。


「あの居合いみてえな技も親父から習ったのか?」

「……そうだな」

「なら蔭水は今でも修行を続けているということか?」

「いや……」


 口が重くなるのを感じる。……余り、このことについては話したくない。


「……修行はもう大分前に止めたんだ。そうしたことから離れたくて、それでこっちに来た」

「そうだったのか」


 ぼかした伝え方に雰囲気を察したのか、それ以上追及することはしてこないジェイン。こういうところはあり難いと思う。


「あと、俺の家系は他人より生まれつきの身体能力が高い。あとは……」


 あのことを話すかどうか、だが。


「……そのくらいだな」


 止めておく。不確定要素が大きいことで変に期待をさせたくはない。それにあれは、なるべくなら使いたくはないものなのだ。


「ふ~む……」


 珍しく難しい顔をして腕を組んだリゲル。……何か納得のいかないところでもあっただろうか。


「退魔師の家系ってなら、なんかそれっぽい術とかねえのか?」

「術?」

「映画とかでよくあるじゃねえか。なんか魔法みてえな、悪霊退散! とかやる奴」


 こう! とジェスチャーされる。……そういうことか。


「一応あるにはあった。ただ、俺は習ってなくて使えない」

「リゲルさん、映画とかよく見るんですか?」

「いや、うちの連中がよく見てたんでな。横で眺めてる内に、なんとなくな」

「……まあ、それはいいとして……」


 ジェインがフィアへ目を向ける。


「蔭水の話はひとまず分かった。カタストさんはどうだ?」

「いえ。私は、特には……」

「……」


 フィアを見付けたあの夜の事を考える。……あの一件が何か関係があるのか、今の時点では何も分からない。


「そうか。ならこれで一応、全員の話が終わったわけだが――」


 不用意に言えばフィアの立場を苦しい物にしてしまうかもしれない。諸々を鑑みて黙っておくことにする。今はそれよりも――。


「まず、あの男の対処について話し合っておく必要があるだろうな」

「……そうだな」


 フィアもリゲルも頷く。その点で全員に異論はない。


「そうだ。一番最初に襲われたのは蔭水とカタストさんか?」

「……ああ」

「……はい」

「なにか襲われた理由に心当たりはないか? もしあるようなら、それを軸にして対策が立てられるかもしれない」

「……」


 ……理由。


「……悪い。昨日の夜やけに人気がないのに気付いて、気付いたら襲い掛かって来られたとしか」

「私も同じで……済みません」

「いや、ないならいいんだ。これは確認だからな」


 言葉通り。特に落胆するような素振りも見せることなく、俺たちの答えを予測していたらしい体で話を進めるジェイン。


「理由が分からない以上、僕とリゲルも警戒しておく必要がある。昨日の件で標的に加えられた可能性もゼロじゃない」

「確かにな。ま、ああいう輩は来なくなるまで何回だってぶちのめす! それに限るぜ」

「一人で勝てるつもりか?」


 威勢よく言ったリゲルの声を、どこまでも冷静なジェインの言葉が遮る。


「この前は運良く僕ら四人全員で当たれたが、次からは別々の所を狙われる可能性もある。そうされれば苦戦は必至だ。それを防ぐために――」

「……あの」


 小さく手を上げて。中途で声を発したのはフィア。


「警察に相談するのはどうでしょうか。私たちだけじゃ、やっぱり……」

「……それは僕も考えた」


 常識的と思えるフィアの提案に、皆まで言わずともジェインは乗り気ではなさそうだ。


「だが、昨日のあの男はどう考えても普通じゃない。あれを相手に警察になにができるかと思うと、はっきり言って僕には疑問がある」

「……それはそうだな」

「サツなんて、どの道頼っちゃいられねえよ」


 肩を竦めつつリゲルが実感を伴った態度で口にする。


「怪しい奴に狙われてからって、一々そこらの奴に護衛なんて付けられるわけねえし、俺たちの側には証拠もねえ。話聞いたあとで丁重に追い返されるのがオチだぜ」

「事情聴取などで逆に面倒が増えることもあるしな。……あの男は確か手袋をしていた。ナイフが残っていたとしても指紋は付いていないだろう。手袋痕は残っているかもしれないが――」


 ……確かに。というか二人とも、やけに詳しいな。その辺り。


「それと、これは私情なんだが」


 冷静一辺倒だったそれまでとは少し違った雰囲気で、指を組んだジェインが言う。


「できることなら神父たちには知らせたくない。事を、余り大きくしたくないんだ」

「でも、それじゃあ」


 急いたように食い気味な声を放ち、自分自身でも着いていけていないように言葉に詰まるフィア。


「……私たちだけで、なんとかするってことですか?」

「……僕はそう考えている」


 ジェインの返答にフィアが押し黙る。……どちらの言い分も、分からないではないが……。


「あの老人はわざわざ人気のない夜を狙ってきた」


 何をどう言ったものか迷う中で、言葉を続けたのはジェイン。


「人目につく行動は避けるはずだ。昼、少なくとも学園にいる間は安全と見て良いだろう」


 ……確かに。昨日の夜あの老人が現われたときには、異様と思えるほど人気が少なかった。あの老人がわざわざそうした機会を捉えて来たのだとしたら、昼間から堂々と学園に姿を見せるわけがない。


「……でも、そうすると、家も危ないんじゃないでしょうか?」


 フィアの口にする新たな懸念。向けた俺の目に映るのは、不安そうな色合いをした翡翠の瞳。


「私と黄泉示さんの二人だけですし。もし、入って来られたら」

「そう聞くとなんかすげえ意味深だな」

「……それは」


 確かにそうだ。あの部屋に然したる防犯設備などなく、チェーンとシリンダーでの二重の鍵が付いているだけ。普段はそれさえ掛かっていれば安心だったものが、此処に来て途端に頼りなく思えてきてしまう。あの体験を思い出すと……。


「……確かにな。うちの教会もボロだから、入ろうと思えばそれこそ入り放題だ。金銭などないから普段強盗の心配はしていないが……」

「なら、うちに来るってのはどうだ?」

「──え?」


 リゲルの口から飛び出した意外な案に、俺たち全員が思わず振り向く。


「警備は昼夜万全で蟻の子一匹通れねえ。客人用に余分の部屋もあるし、下手な刑務所より硬えと思うぜ」

「それは……」


 安心と言うべきか恐ろしいと言うべきか、咄嗟には少し迷うところだが。……安全面では申し分ないのかもしれない。


「……悪くない案かもしれないな。リゲルの家と言うのが癪だが、正直な話、危険に怯えず安心して眠れる夜は欲しい」

「でも、流石にそれは……」

「迷惑なんじゃないか? 連日泊まり込むなんて」


 レイルさんの職業はマフィアだし、家には黒服たちもいる。部外者に見られて不味いことも色々とあるのではないか。


「親父と黒服は家にいる時間の方が短けえし、夜メインで泊まるってんなら大丈夫だろ。一応確認してみるぜ」


 そんな俺の考えをあっさりと踏み越えて、リゲルは直ぐに携帯を操作してメッセージを送る。この思い切りの良さがリゲルらしい。


「今の時間だと仕事が忙しいだろうが、早めに来ると――」

「お、返信来た」


 ――早すぎだろ。


「構わねえってよ。常識の範囲内で好きに使ってくれだと。ただ片付けやら何やらあるから、明日以降にして欲しいみてえだが」

「背に腹は代えられないな。僕は良い案だと思うが……」

「そう……ですね」


 それ以外に全員の安全を確保する手段は思い付かない。互いに見合う中、全員が頷いた。


「……悪いな」

「別に大丈夫だっての。困ったときはお互い様だしな」

「夜はリゲルの家で良いとして、問題は学園が終わってからそれまでだな」


 ジェインが新たな課題を提示する。


「普段の生活の事を考えても、いきなりリゲルの家にこもるというのは難しい。昼は安全だろうとは言ったが、あくまで人が多い場所での話だ。人気のない場所に行くのを避けるのは当然として……」

「もしものときのために、なるべく固まってた方が良いかもしれない」

「そうですね……」

「だな」

「お互いの予定を擦り合わせよう。僕にはバイトが――」




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