第八.五節 蠢き
「……収穫だ」
光射し込まぬ暗闇の中、魔王の声が響く。
「冥王派から通達があった。各地に放った斥候の中で一人、連絡を絶った者がいるらしい」
「それはそれは」
多分に余裕を含ませて迎える声は、賢王。
「担当者に目を付けられでもしましたか。暗殺者らしく無様なことです」
「力はないが隠密には長けた者とのことだ。歴も長く、今更三大組織の手に掛かるとは考え辛い」
淡々と。賢王の皮肉に対し魔王から告げられる見立て。
「何かしらのアクシデントがあったことは明白だろう。確かめる価値はある」
「この男の掌で踊らされていなければいいのですがね」
「……慎重派だな」
口以上にモノを言う眼差しを受け、今に至るまで沈黙していた男は口を開く。
「連名は済ませたはずだ。だからこそ、こうして列席を許されているのではないか?」
「あの程度の小道具、抜け道など幾らでもあるでしょう。信用には程遠い――」
「それが分かるのはこれからだ。――魔王派から一人、腕の立つ者を送る」
本題と言うように魔王が語調を変える。
「その間他の反秩序者に掻き回しを頼みたい。覇王派への通達はすでに済ませた」
「私の派からも人員を出せと?」
「適任者がいないのであれば、無理は言わないが」
「まさか。生憎、他派のような間抜けは取り揃えていませんのでね」
笑みのあとで、一つ息を吐き。
「本来なら断るところでもありますが、今回は興味を示している者がいます。彼に行って貰いましょう」
「有り難い話だな」
魔王は視線の向きを変える。円卓に座している男へと。
「一端でも事の真相が分かれば、お前と狂覇者への対応もそれに応じたものに変わる。それまでは我慢していてもらおうか、大賢者」




