プロローグ お気楽中年自衛官の人生の死の切っ掛け
異形の理不尽な力には、人類の知恵たる科学の力を!のゴジラ物を書いてた際に、あまりにも酷い世界を書いてしまい、ほのぼの系を書いて心の平穏を保とうとして書きました、完結済みです。
実際はよろず屋ステラ並みに殺してるんですが、それでもゴジラよりはましかなと(笑)
参謀の誤算と、最強の求婚より抜粋
太郎は車から戻ると、鞘に収まったままの銃剣を、両手で恭しく姫様に差し出した。
「姫様。これは我が故郷の、夜の戦いでも刃が光らないように加工された特別な守り刀(銃剣)です。私の身を守ってくれた大切なものです。これを、姫様に差し上げます。ですから、機嫌を直してくださいな」
「――えっ」
その瞬間、工房の中の空気が、完全に『凍りついた』。
ガスタ親方はマルチツールを落としそうになり、周囲にいたドワーフの弟子たちは信じられないものを見る目で太郎を凝視している。
そして何より、受け取った姫様は、顔をこれ以上ないほど真っ赤に染め上げ、信じられないほどの力で銃剣を胸に抱きしめて、ぶるぶると震えていた。
「た、太郎様……! ああ、なんということでしょう……! よもや、このような旅の途中で、貴方からそのような高貴な言葉をいただけるなんて……!」
「……え? はい?」
太郎は首を傾げた。あきらかに、周囲の反応がおかしい。
ガスタ親方が、同情と畏怖の入り混じった顔で太郎の肩を叩いた。
「おめぇ……知らねえのか? この国(ガラム王国)じゃあ、男が女に自分の『守り刀』をプレゼントするって行為はな……」
「は、はい」
「『一生、俺の刃でお前を守る。俺の妻になってくれ』っていう、【最高位のプロポーズの儀式】なんだよ!!!」
「――――はぇ?」
太郎の口から、情けない声が漏れた。
こちらの世界なら有りそうな(自衛隊装備)を適当にプレゼントした結果、異世界の法律と風習に完璧に引っかかり、知らないまま国を揺るがすプロポーズを誤爆してしまったのだ。
「分かった時には、もう後の祭り」
太郎が絶望の白目を剥いたときには、すでに姫様は狂喜乱舞し、結婚式の段取りを脳内で開始していたのだった。
「……終わった。俺の人生、ここでまさかの強制終了か?」 ドワーフの国が用意してくれた賓客用のホテルの一室。山田太郎は頭を抱えてベッドに丸くなっていた。 昼間の出来事は、完全に叩き上げの士官としての計算を狂わせていた。
ただの「頑丈なナイフ」のつもりでプレゼントした自衛隊の『89式多用途銃剣』。それがこの国において、命懸けのプロポーズを意味する守り刀だったなんて、誰が予想できただろうか。 単にこちらでも分かりやすいプレゼントを渡したつもりが、自分から助走を付けて底なし沼に頭からドボンと落ちてしまった。
隣のベッドでは、太郎のマルチツールを握りしめたまま、やんちゃ坊主のレオが「すやすや……」と無邪気な寝息を立てている。
「いや、まだだ。まだ俺の『貞操?』は破られていない。
手を出したら最後、政治的にも肉体的にも二度と地球へ帰れなくなる。
絶対に、絶対に死守するぞ……!」 太郎は決意も新たに、寝ているレオの体をガシッと抱きかかえ、自分の腕の中に完全な『肉壁(盾)』として固定した。異世界最強の姫様といえど、可愛い盛りのレオが盾になっていれば、そうそう無理な突撃はできないはず――。
そんな浅はかな「参謀」の希望は、深夜、静寂と共にあっけなく崩壊の危機を迎える。
――ガサリ。
真夜中の午前二時。
歴戦の士官として研ぎ澄まされた太郎の聴覚が、廊下からの不穏な気配を察知した。 気配を殺しているつもりなのだろうが、その全身から溢れ出る『質量』と『圧倒的な最強のオーラ』が、隠しきれずに壁を透過して伝わってくる。
間違いない、姫様だ。(来る……! 本当に来やがった……!) 太郎は暗闇の中で冷や汗を流し、息を殺した。
当然、ホテルの部屋の分厚い木製のドアには、内側から頑丈な鉄の閂と鍵がかけられている。
普通の人間なら開けられるはずがない。
だが、相手は『王国最強』だった。
――メキ、メキメキメキメキッ……。
暗闇の寝室に、聞いてはいけない恐ろしい金属の破壊音が響き渡った。
鍵穴に鍵を差し込む音ではない。
鍵がかかっているなら、その構造ごとねじ伏せるという暴力の音。
姫様は、ホテルの頑丈な鉄製のドアノブを、まるで【ただの古新聞か紙屑でも丸めるかのように、素手でメキメキと握り潰していた】のだ。
パキィン! と、内部のシリンダーが破裂する音がし、続いて、鉄の閂が木製のドア枠ごと「バリバリッ!」と引きちぎられる。
ゆっくりと、音もなく開くドア。 逆光の月明かりの中に浮かび上がったのは、昼間の愛らしいドレス姿ではなく、薄手のネグリジェを身に纏い、昼間プレゼントされた銃剣を嬉しそうに両手で胸に抱きしめた、17歳・130センチのロリ巨乳姫様――シャルロットの姿だった。
その瞳は、獲物を見つけた肉食獣のように妖しく爛々と輝いている。
「太郎様……♡ 夫婦の契りを交わしたのですから、夜は一緒のベッドで眠らなくては不自然ですわ……♡」 とろけるような甘い声。
太郎にとって、もはや何処かで見たホラー映画の一シーンで有った。
以後、太郎が恐れ、彼女から逃れるために世界を旅して、いつのまにやら愛し、破壊神と呼ばれた(ゴジラ)彼女の居場所を作るのに尽力した魔王と呼ばれた男の半生である。




