第9話:死斗! オカマデショーン対四人の魔法少女
オカマデショーンが昇降口に転送されてきたとき、生徒たちは散り散りに逃げ惑った。
だが、昇降口脇の花壇を手入れしていた2年生、生徒会役員の花園和樹だけは逃げなかった。彼は傍らにあった鍬を手に、花壇を守ろうとしたのだ。
「来るな、バケモノ!」
『デショーン!……オハナ?……オマエ、オカマデショーン!』
ニヤニヤしながら花園君を指さすデショーン。
「フォトニック・レイ」
そのとき、花園君に近付こうとしたその足元を紅明の光線がえぐり、デショーンを怯ませた。
「花園君、花壇は守ってあげるから逃げなさい」
「でも、これは新入生が頑張って植えた大切な花壇なんだ」
紅明は取り合わず、攻撃を続ける。
「もう一度……フォトニック・レイ」
『痛イデショーン!』
「あまり効いてないわね」
デショーンは胸を押さえて動きを止めるが、大きなダメージが入ったようには見えない。紅明は横目で花園君がまだ鍬を構えたままでいるのを確認すると言い放った。
「邪魔よ」
「紅明ちゃん!それは言い過ぎ!」
そこに駆け付けたのは友梨佳だ。紅明に「邪魔」と言われてたじろぐ正樹の前に立ち、デショーンに向き合う。
「このヴォルテックユリカが来たからには、花園君の大好きなお花は守り切ってやるぜ!」
「……いや、別に大好きってことは」
『オマエ、オカマデショーン!』
花園君は後輩が世話をした花壇を守りたいのであって「お花が大好き」なわけではない。だが、その訂正のために発した声はデショーンの雄たけびにかき消された。
友梨佳はデショーンの前に進み出ると通せんぼをするようにオールを構える。
「ここから先は立入禁止だぜ!ストリーム・バリア!」
「どうなっても知らないわよ。フォトニック・レイ!」
紅明は呆れたように右手をデショーンに向け、前腕を覆う紫に輝く装具から光線を放った。
◆
友梨佳の気合は十分だったが、友梨佳と紅明の組み合わせが守りに向かないことはオタクデショーンの事件で証明済みだ。舞と施恩が到着したとき、友梨佳は既に2回もストリーム・バリアを破られ、デショーンを押し返すためにラピッド・ストリームを連発してかなり消耗していた。
「ごめん友梨佳ちゃん、遅くなった。大丈夫?」
「食い止めます。ブーヤン、アタック!」
舞が友梨佳に寄り添い、施恩がブーヤンを突進させて突き飛ばす。ブーヤンの攻撃にデショーンがもんどりうって倒れたので少しだけ余裕ができ、デショーンの周囲を駆け回りながらフォトニック・レイを撃ち続けていた紅明も一旦戻って来た。
「わたしたちには守る戦いは難しいのよ、友梨佳。無理はいけないわ」
「そうだよ伴地さん、そんなにボロボロになってまで……」
冷たく事実を告げる紅明に、心配する花園君。だが、土ぼこりに汚れた顔の友梨佳の目は、全く諦めの色を伺わせなかった。
「守るのには向かねえだと……?それは偏見じゃねえのか」
「いいえ、事実よ……来るわ!」
『デショーン!オマエ、オカマデショーン!』
紅明はなおも友梨佳を斬って捨てる。筋肉質のデショーンはといえば、再び立ち上がって絶叫した。
「フォトニック・レイ!あの筋肉質の体、防御が硬いわ。施恩、合わせて」
光線は確かにデショーンの体に突き刺さっているが、もはや先ほどまでのように痛がる様子はない。攻撃に慣れてしまったのだろうか。
「いいわ。ロードプログラム、行きなさい、エテクーン!」
青い子ザル、エテクーンは明後日の方向へ飛び出したかと見えたが、校舎の壁を蹴って大きくジャンプすると、デショーンの背後に回り込んだ。
「フォトニック・レイ!」
紅明は、エテクーンが持っていた鏡に向かって光線を放つ。光線は鏡に反射してデショーンを背後から突き刺した。
『痛イデショーン!』
「いいわね、隙をつけたわ」
紅明は結果に一応の満足を得た。一方で友梨佳は寄り添う舞に訴える。
「舞ちゃん、ちょっと考えたことがあるんだ‒‒舞ちゃんの使う炎をあたしの風で包んだら、炎の壁ができるんじゃないかって。力を貸して……くれねえか?」
その表情からは、悔しさと、それでも大事なものを守りたいという思いが伝わって……舞は応えた。
「友梨佳ちゃん、違うよ。力を貸すんじゃなくて、一緒にやるんだ」
《《目的意識の同調を確認。マジックコネクション、シェイクハンズ》》
舞と友梨佳、二人の意識にワーヌとダニーの声が響く。
((なにこれ、友梨佳ちゃん/舞ちゃんの想いが分かる……))
不思議と二人はお互いが何をどうすれば良いかを理解した。
「「フレイム・カーテン!!」」
ワーヌこと、アントワーヌ=ローラン・ド・ラヴォアジエが「化学原論」に記した元素の1つ、鉄。舞は鉄と酸素を魔法で呼び出した。そしてその流れを友梨佳が魔法でコントロールし、カーテン状の高圧の流れにまとめ上げる。断熱圧縮された鉄粒子と酸素の混相流は発火点に達し、青白い炎の壁を形成した。
「うわああ、あっつ!すごいけど熱いよこれ!お花がやられてしまう」
花園君の絶叫。
「あっちちち、ちょっと離して!」
「お、おう。向こうへ向こうへ……」
舞と友梨佳は大慌てでその灼熱のカーテンをデショーンの方に移動させる。
『デ、デショーン!コワイデショーン!』
迫り来る炎の壁を見たデショーンは踵を返して逃げ出した。
「あっ、待ちなさい!フォトニック・レイ!」
紅明が高くジャンプして放った光線は、フレーム・カーテン越しにデショーンを正確に狙っていたが、カーテンの上空であらぬ方向に折れ曲がり空中へと消えていく。
《熱量が高すぎて空気の屈折率が変わっているんだよ、紅明。施恩がスレイブを追跡に向かわせたから、場所を変えて再戦することになるだろうね》
アルの声に紅明は構えを解いた。
(さっきのが当たればここで足止めできただろうに……)
「ちょっと、あなたたち……」
文句を言おうと口を開いた紅明だったが、舞と友梨佳を見て口ごもる。
舞は茫然と立ち尽くしていた。
「……なんだったの今の……」
同じく、自分たちがしたことにドン引きしている友梨佳。
「……ヤバすぎんだろ……」
(彼女たちが、悪かったのではないわ……)
紅明は、彼女らにも不測の事態だったと無理やり自分を納得させ、苛立ちを紛らわせた。
その背後では、施恩が花園君に優しく声をかけている。
「大丈夫ですか、花園君?花壇も無事だったようでよかったです」
そんな彼女はチラリと横目で紅明を見て、わずかに口元を苦々しく歪めた。
(紅明さん……)
◆
その頃、異様に良く訓練された教職員たちによってエスパーンダ真美は追い詰められ、何本ものさすまたを向けられていた。
その1本が触れようとしたとき。
「テレポート!」
彼女は初めて肉声を発し、忽然とその場から消え失せた。
【タイトルのネタ元】
毎日放送・東映制作の特撮テレビドラマ作品「仮面ライダー」(1971~1973年)
第40回「死斗! 怪人スノーマン対二人のライダー」




