表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BITTER CANDY ~黒い歴史の1ページ~  作者: 梅雨ゼンセン
第三章 ―夢電車―
PR
28/31

25.終点




 ……タンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、―――――――




「………嘘だろ」

 今回は初めから起きていた。いや、そもそも眠っていたのかどうかも怪しい。もしかしたらずっと幻を見ていただけかもしれない。

 対面する席に、神代はいない。まるで初めから誰も乗っていなかったかのように、車内は伽藍としている。

 しかしそんなことはどうでもいい。

 僕が今頭を抱えている理由はそんなことじゃない。

 神代のあの言葉。

『蘇生』

 なぜ彼女はそれを目指しているのか。

 わざわざ僕を攫ったみたいなことを言っていたが、なぜ僕なのか。

 単なる実験材料だったのか。それとも……



 ……いや、それらも今は二の次だ。



 僕の頭を支配している最大の疑問。

 それは、なぜ……あそこに『彼女』がいたのかということだ。

 あの様子だと、僕を助けに来たというわけではないだろう。

 なら、一体何のために……




『次は、終点――――――、終点――――――、』




 ……確かめなくてはいけない。

 きっとこの先に彼女はいる。

 そしてきっと、彼女も僕と会うのを待っているだろう。

 徐々に車窓から光が入ってくる。そろそろこの長い長いトンネルを抜けるようだ。

 段々と強くなっていく光、それに目をしかめながらも僕は前を見続けた。



       ・・・



「……」

 寒さとノイズで、私は目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 どれだけ経ったのか。


 ザアァァ――――――


 雨はまだ止んでいない。

 ということはそれほど長い時間は経っていないのだろうか。

 一度眠ったせいだろうか、感じていた重苦しさは少し減っていた。

 さて、これからどこに行こうか。

 先はまったく考えていない。

 食べ物も見つけなくてはいけない。

 睡眠をとって少し落ち着いたせいか、お腹が唸る。

「どうしたの?」

「っ!?」

 ぼぉとしていたせいか、声を掛けられてからその存在に気が付く。それは自分より少し年上の男の子だった。中学生くらいだろうか。

「大丈夫?」

 彼はそう心配そうに訊いてくる。

「……大丈夫。気にしないで」

 人と話すのも面倒に感じ、早く立ち去れと念じながら冷たくそっぽを向く。が、その瞬間、まるで抗議かデモのようにお腹が盛大な唸り声を開け、顔が真っ赤に燃え上がる。

 それを聞いて彼はクスッと笑いを漏らすと、

「ごめんね。今はこれしか持ってないんだ」

 なんてポケットを漁り、

「飴いる?」

 そう言って飴を差し出してきた。

 そのときの少し申し訳なさそうな笑顔は、陽だまりのように温かくて、思わず数瞬見入ってしまった。

 彼はなぜそんな行動をしたのか。もしかしたらそういった性格の人間なのかもしれないし、たまたま善行をしてみたいという気分になっただけかもしれない。

 でも、その邪気の無い温かさは、私にとって初めてのものだった。

 その言葉にどれだけ救われたか。

 そう、

 その些細な優しさがどれだけ私に生きる活力を与えてくれたか、

 きっと、その人は知らないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ