25.終点
……タンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン、―――――――
「………嘘だろ」
今回は初めから起きていた。いや、そもそも眠っていたのかどうかも怪しい。もしかしたらずっと幻を見ていただけかもしれない。
対面する席に、神代はいない。まるで初めから誰も乗っていなかったかのように、車内は伽藍としている。
しかしそんなことはどうでもいい。
僕が今頭を抱えている理由はそんなことじゃない。
神代のあの言葉。
『蘇生』
なぜ彼女はそれを目指しているのか。
わざわざ僕を攫ったみたいなことを言っていたが、なぜ僕なのか。
単なる実験材料だったのか。それとも……
……いや、それらも今は二の次だ。
僕の頭を支配している最大の疑問。
それは、なぜ……あそこに『彼女』がいたのかということだ。
あの様子だと、僕を助けに来たというわけではないだろう。
なら、一体何のために……
『次は、終点――――――、終点――――――、』
……確かめなくてはいけない。
きっとこの先に彼女はいる。
そしてきっと、彼女も僕と会うのを待っているだろう。
徐々に車窓から光が入ってくる。そろそろこの長い長いトンネルを抜けるようだ。
段々と強くなっていく光、それに目をしかめながらも僕は前を見続けた。
・・・
「……」
寒さとノイズで、私は目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
どれだけ経ったのか。
ザアァァ――――――
雨はまだ止んでいない。
ということはそれほど長い時間は経っていないのだろうか。
一度眠ったせいだろうか、感じていた重苦しさは少し減っていた。
さて、これからどこに行こうか。
先はまったく考えていない。
食べ物も見つけなくてはいけない。
睡眠をとって少し落ち着いたせいか、お腹が唸る。
「どうしたの?」
「っ!?」
ぼぉとしていたせいか、声を掛けられてからその存在に気が付く。それは自分より少し年上の男の子だった。中学生くらいだろうか。
「大丈夫?」
彼はそう心配そうに訊いてくる。
「……大丈夫。気にしないで」
人と話すのも面倒に感じ、早く立ち去れと念じながら冷たくそっぽを向く。が、その瞬間、まるで抗議かデモのようにお腹が盛大な唸り声を開け、顔が真っ赤に燃え上がる。
それを聞いて彼はクスッと笑いを漏らすと、
「ごめんね。今はこれしか持ってないんだ」
なんてポケットを漁り、
「飴いる?」
そう言って飴を差し出してきた。
そのときの少し申し訳なさそうな笑顔は、陽だまりのように温かくて、思わず数瞬見入ってしまった。
彼はなぜそんな行動をしたのか。もしかしたらそういった性格の人間なのかもしれないし、たまたま善行をしてみたいという気分になっただけかもしれない。
でも、その邪気の無い温かさは、私にとって初めてのものだった。
その言葉にどれだけ救われたか。
そう、
その些細な優しさがどれだけ私に生きる活力を与えてくれたか、
きっと、その人は知らないだろう。




