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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
55/55

Record No.055 館山決戦(4)

「おぅおぅ、自分で新しい特式作るとはな。零隊の副隊長に抜擢されたのも納得だわな」

「そうね。自分では謙遜しているけど、あれはかなりのものよ」


 戦いながら様子を見ていた恵比寿とキャナルは向日を見て感心していた。




「ねえ、あのシーガッドって第三特務隊だいさんの子が作ったんでしょ」

「そうみたいだね。まあまあ良いシステムなんじゃないかな」

「何よ、素直に後輩を褒めてあげなさいよ」


 プライドが邪魔して素直になれない波を緑は楽しそうにイジる。


「うるさいな。ほら、まだ敵が来てるよ」


 波は緑の言葉を受け流して敵の接近を知らせた。


「はいはい。わかってますよ」


 あしらわれた緑は狙撃を再開した。




「クローン兵の中には特殊なタイプがいると聞いていたが、手応えが無さ過ぎるな」

「そうですね。第三特務隊の報告で聞いていたタイプはいないですね」


 倒したクローン兵に一般的な能力をした男の兵士だけしかいないことに、京橋達は異変を感じ始めていた。


《てかさ、こっちに向かって来てるの九竜軍っぽいけど》


 ボードに乗って飛んできている男の軍服に刻まれた紋章をモニターで見た波が二人の会話に入ってきた。


「ああ、あいつだな。向日、離れていろ」


 京橋の表情がグッとしまったのを見て向日は身構えながら後ろに距離を取った。


「てりゃああああああああああああああ」


 京橋に負けず劣らずの大声でボードから攻が飛び掛りながら京橋に斬りかかってきた。


「とりゃあ」


 右足を前に踏み込んだ京橋は下から野球ボールを打ち上げるように攻を刀で振り払う。


「相変わらすの馬鹿力め」


 軽くしびれた右手をブラブラさせながら京橋が攻に毒づく。


「お互い様だ」


 攻も同じように右手をブラブラさせていた。


「なんでお前が永田の味方をする?」

「政治ってやつだ」

「あの剣道バカだったお前が政治ね」

「それほどお互い歳をとったってことだ」


 言い終わると同時に攻は瞬時に間合いを詰めて京橋に斬りかかった。


「せい、せい、せい、せい、せい、せやぁあ」


 攻の怒涛の攻撃にさすがの京橋も防戦一方になる。


「はは、そうだな。戦いはやっぱり強いやつとやらないと面白くないよな」


 あせるどころか気分が上がってきた京橋は負けじと攻め返す。


「ははは。久しぶりに全力でやれそうだ」


 攻も愉快に笑い、京橋と刀を交えた。




「おいおい、京橋アニキとまともにやりあってるぞ」

「あんなに楽しそうに戦うのマモちゃんぐらいしか黒帝軍ウチにはいないものね」


 戦場に凄まじい刀のぶつかる音をさせて戦う二人を見て恵比寿とキャナルも驚いていた。


「お二人さん、のんびりとしたもんだな」


 零番隊の精鋭でも気付かない動きで近づいていた小倉が攻撃を繰り出す。


「ったく。相変わらずお前は風情がないな」

「全くデス。守ちゃんとは真逆デスね」

「人の攻撃をあっさりとかわしておいてムカつく奴らだよ」


 小倉は深い溜息をついて、ちょっとムカついた表情をしていた。


「まあ、雑魚ばっかりで退屈だったからな。相手になってやるよ」


 恵比寿は興奮した様子で構えた。


「じゃあ、私は他のお掃除に戻るわ」

「ああ、任せた」


 キャナルは京橋と離れて戦い始めていた向日に合流しに行った。


「さあ、楽しもうか」

「こっちは楽しむ気はない」

「つれない奴だな」


 恵比寿と小倉は話しつつ、互いに間合いを牽制し合っていた。


「はあっ」


 先に仕掛けたのは小倉だった。鋭い一突きが恵比寿を襲う。


「てぇい」


 滑らかな動きで後ろに下がった恵比寿はコンパクトな振りで小倉の槍を叩きつけた。


「皮肉だよな。同じ人間にやられて同じ得物で戦うなんて」

「ふん。お前みたいに俺は割り切っていないがな」

「そうかい」


 それぞれが紙一重でかわし、やり返してが繰り返された。




「恵比寿さんは大丈夫なんですか?」


 自分の元にやって来たキャナルに向日が訊いた。


「バカだけど簡単にはやられはしないワヨ」


 ぶっきらぼうな言葉に絶大なる信頼が向日には感じられた。


「さあ、私達はお掃除するワヨ」

「了解」


 真剣な顔つきになったキャナルに言われ、向日は構えて走り出した。


『ぐおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお』


 向日達の前には集結したクローン兵達が押し迫って来ていた。


《向日ちゃん、援護するから好きに暴れて》

《背中は任せてください》


 向日の頭上にいる緑と波が空中から向日の死角から襲い掛かる敵を射撃した。


「了解。任せます」


 正面の敵に集中した向日は、無駄のない動きでクローン兵の急所を的確に捉えて倒していく。


「ワタシも負けてられないわ。波、敵の捕捉データをワタシのスコープに同期させて」

《了解。出すよ》


 上空に弓を向けて構えていたキャナルのスコープに次々とクローン兵の補足データが表示されていった。


「特式〈流星りゅうせいの型〉」


 ブーストで加速させ表示されるデータを超える動きをしているにもかかわらず、キャナルは百発百中で敵を射抜いていく。


《私もやるわよ。波、出して》

「全く。ウチの女共は人使いが荒いな」


 波は操縦をオートにして、両手でキーボードを叩いて緑のスコープにもデータを送った。


「オッケー。さすが波」


 風で足元が揺れる中、緑は狙いを定めた。


「特式〈夕立ゆうだち〉」

『ぎゃあああああああああああああああああ』


 ゲリラ豪雨のように降り注いだ銃撃にクローン兵は叫びながら倒れていった。

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