決勝戦 一神対四家4
開始の合図と共に四家が動いた。タッと駆け出し距離を詰めてくる。
九門と戦った時は、九門の実力を測れていなかったので様子見をしたが、四家には行う必要はないだろう。
二ノ宮と四家の戦いはしっかりと観戦させてもらえた。
四家が九門をはるかに凌駕する力があるのは分かっている。私が全力で戦えば勝率九割と言ったところだろう。
私は鍔を指先で弾き、直刀を一息で抜刀し、鞘を向ってくる四家に向け投げる。四家はそれを片手で弾き飛ばす。その動きに無駄はなく、足を止める事無く行った。
しかし、それでも若干ではあるが私に向う速度が遅れた。その若干の時間で私は迎撃態勢をとった。柄をしっかりと両手で握り、迫る四家に突きを繰り出す。
「……!」
四家は眠気混じりの目を見開き、ナイフの腹で突きを受けとめ、後退する。反応速度は映像で見ていたものよりも高そうだった。
「……うー」
四家が私の刀の切っ先を見つめながら唸る。
どうやら警戒を強めたようだ。
私がこの後継者選びに黒百合の代表として選ばれたのは剣術の腕でも、身体能力の高さでもなく、暗殺者としてもスキルを買われたからだろう。
黒百合の幹部には私をはじめこの後継者争いを生き残り、二代目を継げる者が何人もいるが、その中で最も強く、もっとも確実に殺すことが出来るのが私だ。
なぜなら私は無だからだ。
私には何にもない。
音も気配も……過去も。
私は爪先に体重をかけ、指先で地面を弾き予備動作なしで四家の間合いに入り込み突きを繰り出す。
右胸左胸みぞおちを狙った三段突きを。
「うー!気持ち悪い」
四家はまた唸り左右のナイフで胸を狙った突きを弾き、みぞおちに迫る切っ先を、後ろに跳びかわす。
切っ先はあと五センチで触れる位置まで迫るが空を切る。
「……一神君の戦い方気持ち悪い」
私の無音であり気配のない攻撃を嘆いているようだ。
「……」
私は答えずに四家を見据える。想定では三発目で腹を貫き動きを止める予定ではあったが、四家の動きの精度を見誤っていたようだ。
それならば今度は避けられない攻撃を繰り出すまで。
足の指先を弾きまた間合いに入り込み、私は太腿を狙い突きを繰り出す。
ナイフで弾く準備をしていた四家は、一瞬動きを止め、慌てて狙われた足で私に向かい踏み込み、スカートを切り裂かれながらもかわす。
私が刀を引き寄せると同時に四家は左のナイフで首の頚動脈を狙い斬りつけて来る。刀を立て受けると、今度は逆のナイフで斬りつけて来る。
私は半歩引きかわすと、四家はナイフの重さに引っ張られるようにその場で半回転し、遠心力で速度と威力を増した斬撃を繰り出してくる。
これが二ノ宮に使っていた技か。確かに速度と威力は増したが、受け切れないほどではない。私はナイフの動きを目で追い、その攻撃を防いでいく。
十発以上受け続けると、四家が回りながら飛び上がり、横の攻撃から縦の攻撃に変化させた。初見ならば受けきるのは困難だったかもしれないが、この技は一度見ている。刀を頭上に構え、私はその斬撃も受けきり、着地した四家に向かい刀を薙ぐ。
「……!」
四家は交差させたナイフで受けきろうとするが、威力に圧され、後ろに弾かれごろごろと床を転がる。
初見の相手と戦う場合、はっきりとした技量差があっても侮って戦ってはいけない。
これは橘社長の言葉だった。小さな猫にも手を噛まれる事だってある。
相手の武器は技はなんなのか見定め、撫でて――殺して――やれ。




