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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
決勝戦 一神対四家
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決勝戦 一神対四家3

「……それでは私はこれで失礼致します。ご主人様、ここからは不肖の息子にすべて任せますので、何なりとご指示をしてあげてください」


「ああ、分かった」


 ヒルイ氏が返事をすると、狩谷氏は五郎丸を担いで部屋を出て行った。


「零、ここからは御主に取り仕切って貰うが、よろしいかのう?」


「はい。任せてください」

 零は返事をすると、コンクリートで囲われた部屋の中を歩き、落ちたダガーとペーパーナイフを拾い、部屋の隅に梔子の死体を運び、最後にハンマーに手を伸ばす。

「さて、部屋もすっきりしたし、三回戦第二試合……改め決勝戦と移ろうか」


 私と四家に砕けた口調で話しかける。

 敬語を使うの目上の人間に対してだけのようだ。


「零ちゃんは辞退で良いの?」

 四家があくびをかみ殺しながら言ってくる。


「問題ない。親父から監視の任務と、この戦いへの参加を言い渡されたが、もし死屍柴ヒルイの二代目に相応しいものが居た場合棄権しても言いといわれているからな」


「そっかぁー」

 噛み殺しきれなかったのか、四家はあくびをしながら答えた。


「四家さん! ちゃんとしなさい!」

 銀髪の組織長、姫宮氏が声を荒げる。


「うー」

 四家が涙を浮かべながら唸った。涙はあくびをしたせいだろう。「ゴメンネ、お姉ちゃん」


「それじゃあ、皆さんお解かりかもしれませんが、先に脱落者の発表をさせていただきます。死屍柴ヒルイ様の前従者、狩谷一京(いっけい)様の候補者である私、零の棄権により、狩谷一京様は脱落になります」

 部屋に響くような大きな声で言うと、私と四家を交互に見る。

「それでは残された序列一位、暗殺者派遣業者、黒百合候補者一神と殺し屋ギルド赤きガーベラ候補者四家による最終戦を始めたいと思います。候補者は武器を出して下さい」


 私はゴルフバックから直刀を出す。

 四家も中から二振りのファイティングナイフを取り出す。


「各候補者の長から何かかける言葉はありますか?」


「かける言葉?」

 社長が聞き返す。

「ないね。どうせうちの一神が勝つんだからな」


「それは分かりませんよ。うちの四家は……私の姪っ子は……強いですからね」


「ほう。それは面白いね。でも忘れたのかい? 十年前に私とうちの幹部の前にあんたの組織は一度潰されている事を。うちの一神は幹部連中やあの頃の私よりも……強いぞ」


 社長の言葉に嘘はないだろう。

 黒百合の幹部連で最も腕が立つのは私であるのは間違いない。社長に見初められた十年前から今日まで私は一つの目的の為に鍛えられ続けてきた。

 それはこの日のためにといっても過言ではないだろう。

 黒百合の女帝に見初められた私に課せられた最大の任務。


 死屍柴ヒルイの歴史に幕を下ろせ。


 私は至上の殺し屋として育てられた。


 今の私は死屍柴ヒルイをも超える。


 私は二代目死屍柴ヒルイになり……黒百合の女帝の傀儡になる。

 東日本の楔を外し、西日本からの黒百合のためだけの防壁になる。


 それが私の任務であり生き方。


 女帝の傀儡に心はいらない。感情はいらない。


 必用なのは強さだけ。


 心は十年前に捨てた。


「それなら負けませんよ。お父様のアンラッキーの名を継いだ私よりも……姉よりも……お父様よりもあの子は強い」

 そう社長に姫宮氏は言い返すと、私に切なそうな顔を向け、四家を見た。その切なげな顔から母のように暖かい笑みに包まれていたものに変わっていた。


「……頑張るぞ」

 四家は呟きファイティングナイフをグッと握った。姫宮氏の笑みに答えるかのように。


 私にはその気持ちが分からない。


 私は女帝の傀儡。

 心など無い。


 ただ指の動きに合わせ踊るしかないのだ。

 そこには人形の意思などない。あるのは奏者の思惑だけ。


「一神……殺して格の違いを見せてやれ」

 奏者の指が動いた。

 求めるのは殺戮。


 私はその指示で自然と体が動き出す。刀を下段に構える。


 戦闘の準備が出来たのが分かったようで、零が口を開いた。

「ヒルイ様。最後に一言お願いします」


「うむ」

 返事をするとグッと立ち上がる音が耳に届く。

「若人よわしに見せてくれ……二代目を次ぐにふさわしい実力を!」


 私は四家を見据える。


 ヒルイ氏の言葉の後に零の叫ぶような言葉が耳に届いた。


「決勝戦! 開始!」


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