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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
決勝戦 一神対四家
95/153

第三回戦 一神対四家2

 ヒルイ氏の答えを聞き水仙連合会会長水仙氏の眉根がピクッと動いた。

「使命とはどういう事ですか?」


「それは俺から話させてもらいます」

 零が敬語で話すと、視線が一斉に零に集まった。

「その前に一つお願いがあります。ここに居る五郎丸なんですが、深手を負い命の危機に瀕しています。どうか病院に連れて行っては貰えないでしょうか?」


「そうですね。僕としても五郎丸君は出来れば失いたくない戦力です。うちの部下を呼んで連れて行かせます」

 門脇氏がポケットに手を入れ携帯を出す。


「いや。これはワシの後継者を探す戦いで出た犠牲者じゃ。ワシの方から人を出させてもらう。狩谷病院まで連れてってやれ」


「かしこまりました」

 狩谷氏がヒルイ氏に深く頭を下げると、五郎丸の元までやって来た。

「失礼」


 一声をかけ、五郎丸の巨体を肩に抱えると歩き出した。


 見た目は華奢ではあるがヒルイ氏の片腕なだけはあり、筋力は常人を遥かに上回っているようだ。


「ちょっ、待ってくださいよ。狩谷さんを行かしていいんすか? 候補者には狩谷さんの推薦者も残っていますし、この後にはヒルイさんの後継者の調印式もあるんすよ」

 狩谷氏が部屋に戻ると、鏡谷氏が呼び止めた。


「それなら問題はありません」

 狩谷氏の変りに零が答えた。

「百鬼が八王寺を殺した理由は三回戦で当たる私を不戦勝にさせ、決勝に無傷で臨ませるためでした。この時点で不公平が生じるでしょうから、私はこの後継者選びから辞退させてもらいます」


「なっ! 辞退ってマジかよ」

 声を出した鏡谷氏以外にも何人かの組織長は驚きの顔をした。一切顔色を変えなかったのはマスクを被ったジョン氏と笑みを浮かべた竜胆氏、そしてヒルイ氏と零とよく似た顔をした狩谷氏だけだった。


「五郎丸を狩谷さんに運んでもらえるのは光栄ですし、零君が辞退するのも分かりました。けれど……それと狩谷さんが調印式にいないというのは繋がりませんよ? ヒルイさんの従者としての責務を果たさないというのですか?」


 質問する門脇氏に、狩谷氏は温和そうな笑みを向ける。

「それなら問題はありません。調印式には死屍柴ヒルイの従者である狩谷が出ますので」


「どういう事ですか?」


「言ったとおりの意味です。調印式には、狩谷……零。そこに居る私の息子であり、新たに死屍柴ヒルイの従者を襲名した者が勤めさせてもらいます」

「なっ!」

 鏡谷氏の顔に表れた驚きの色が濃くなる。


「アハハハハ。そっかそっか。顔も武器も似ていると思ったら、そう言うことかー」

 ボイスチェンジャーで変換された機械音を響かせ笑った。

「だからさっきヒルイちゃんは殺人鬼ちゃんは狩谷ちゃんが処理するって言ったんだね。狩谷ちゃんは狩谷ちゃんでも狩谷ジュニアちゃんだったのかー」


「ああ。こんな事態が起きた時用に零を潜り込ませていたからのう。零ご苦労じゃったな」


「いいえ。ヒルイさんのご命令に答えるのが私の使命ですので」

 零は左手を胸に添えながら深々とお辞儀をした。


「ちょっと待ってください。こんな事態がって事は、ヒルイ様は百鬼様のような殺人を犯すものが出ると思っていたのですか?」

 シスターササカワが席を立ちヒルイ氏に顔を向ける。


 私の位置からは見えないが、きっと今も、目だけは笑っていない笑みを浮かべているだろう。


「予想はしておった。何人かは暗躍や、隙を見て候補者を減らすために殺すじゃろうと思ってな。しかし、ワシも一回戦の映像を見るまではまさかコスモスから呼んだ教師役が犯行に及ぶとは思っても見なかったのう」


「一回戦で何が分かったんですか?」

 水仙氏が静かな声でヒルイ氏に聞く。


「そうか、おぬしらは気づかなかったかのう? 戦い方や顔は変わったが、骨格と足運びが……梔子そっくりじゃった事に」


「おいおいおい、ヒルイの旦那。梔子ってあいつが帰ってきてたって言うのかよ」


 そうか。戦闘中に零が教師を梔子と言ったのはそういう理由があったのか。

 私が納得していると、シスターササカワが口を開いた。


「なぜ梔子様と分かった時点で処分しなかったのですか? そうすればうちの八王寺は死なずに済んだのですよ」


「……ササカワ。見苦しいぞ」

 水仙氏が静かに反論した。

「八王寺は梔子に殺され、梔子は狩谷零に殺された。もし、梔子が居なくとも、八王寺は死んでいた。違うか?」


「ですが、あなたはそれでいいんですの? あなたのところの代表者も敗れたのですよ」


「……あいつの強さは俺が良く分かっている。この戦いは予想していたよりも遥かにレベルが高かった。あいつでは零にも今残っている二人にも到底及ばない。あいつを参加させた俺に非がある」


「……」

 シスターは何か言い返そうとしたが、水仙氏に言い返す言葉が見つからないのか、口をつぐんだ。


 部屋に無音の時間が流れた。

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