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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
延長戦ー二代目を継ぐもの
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二代目死屍柴ヒルイの戦い5

「ニノちゃんと雰囲気が一緒だからすぐ分かったよ」


 皆が知っているだろう事のように瑠衣は答えたが、候補者選びで一緒に行動を共にしていた零は全く気づく事ができなかった。

 その違いは対峙した者――殺し合った者にしか分からない事だった。


「雰囲気と言うと、僕から滲み出ちゃってしまうカリスマ性のことかなー?」


「ううん、お化けみたいなベトベトしたやつだよ」


 瑠衣の発言を部屋の者は理解できずにいたが、的は射ていた。ジョンから発せられるべたべたした物、それは快楽殺人鬼が生み出した狂気だった。


 蛇に呑み込まれ胃液が纏わりつくような、逃れようのない死を予感させる、圧倒的な狂気を瑠衣は二ノ宮と戦った時と、今日二度受けることにより、ジョン・ドゥと二ノ宮が同一人物だということに気づけた。


 これは近くで見たり、画面越しに見ているのでは気づけないことだろう。


 それはこの室内に居る者だけではなく、豪華な絨毯を血で染めあってる者達も気づけていないことだった。もちろん、初代死屍柴ヒルイも、二ノ宮とジョンが同一人物だということには気づいてはいない。


 気づいていれば、ヒルイは二回戦での瑠衣とジョンの戦いを止めていただろう。


 初代ヒルイは気づいていた、裏世界で唯一無二の存在といわれた自分でも、老いた今ではジョン・ドゥには勝てないという事を。

 そして二代目を襲名した瑠衣であっても今はまだジョン・ドゥには勝てないだろうという事を。


 だから部屋に閉じ込める対象に旧五大組織長と零を含めることにしていた。ジョンの暴走を止める対象として。瑠衣の身を守る人員として。


 昨日の戦いで瑠衣はジョンに重傷を与え勝利をもぎ取ったが、あれはジョンの気まぐれであった。

 本当の実力を出していたのならば、昨日の時点の瑠衣に勝ち目はなかっただろう。


 勝てたのは実力でも運でもなく、ジョンが瑠衣をもっと見たいと思っていたからに他ならなった。一神との戦いを、そしてその後に待っている二代目死屍柴ヒルイの門出を見たい一心で、浅いが出血量だけは多く、重症に見える傷をおい、わざと負けただけだった。

 

 ジョンは見たかったのだ、二代目死屍柴ヒルイとなる、姫宮メアリー茜の娘の顔を。


「僕がお化けかー。亡霊に囚われているヒルイちゃんにお化けなんて言われるなんて驚きだねー」


「ジョン・ドゥ様! もう止めてください!」

 刃を突きつける行為を止めろと言っているのか、瑠衣の心を揺さぶる言葉を投げかけるのを止めろといっているのかは分からなかったが、ジョンは言葉に反応し、顔を姫宮に向ける。


「……アハハハ」

 笑うと、スッと鎌を引き、首筋から離す。

「殺らないよー。だって……今のヒルイちゃんは殺っても何も楽しくないからねー」


 今の瑠衣はジョンの中では何の価値もない存在だった。実力は自分に肉薄するほどではあったが、それでも殺す対象に見る事は出来なかった。快楽殺人鬼の快楽に今の瑠衣は当て嵌まらなかったのだから。


「僕の殺したいのは君じゃないんだ」


 ジョンの言葉は瑠衣の耳にしか届かないほど小さかった。


「……どう――」

 どう言う事と立ち上がりながら聞こうとした瑠衣の言葉は、ジョンが振るった大鎌の柄の一撃により遮られ、瑠衣は吹き飛ばされ宙を舞った。


「瑠衣!」

 姫宮が悲痛な声を漏らすが、瑠衣は痛みに耐え歯を食い縛りながらも受身を取り、床を転がり衝撃を逃がした。けれど、打ち付けられた腹が痛むのか、手で押さえ、立ち上がれずに居た。


「ジョン・ドゥ様! 何をするんですか!」

 姫宮が目を見開き怒りを露にする。


「何って、またここから出ようとしないように、扉とボタンから引き離したんだよー」


「だからって他に方法があるんじゃないんですか! 瑠衣、大丈夫?」


 姫宮は心配し声を荒げると、瑠衣は「大丈夫だよ」と、お腹を押さえながらも答えた。

 ジョンの一撃は直撃はしたが、咄嗟に瑠衣が後ろに飛んでいたのでダメージ自体は少ないようだった。


 そんな瑠衣とジョンを交互に見て、零はふと疑問を持った。二代目死屍柴ヒルイはこの裏世界の至宝でもある存在だ。それをなぜジョンは壊そうとするのかと。


「あなたは本当にジョン・ドゥ様ですか?」

 零は敬語を続けながらも目を鋭く細めると、片手で懐からダガーを取り出した。


 零は今回の候補者選びについて大枠は父から聞かされていた。それに当たって旧五大組織の候補者についての情報も教えられていた。


 主となる四家も、六波羅も七星も九門も、もちろん二ノ宮についてもだ。


 けれど、二ノ宮がジョン・ドゥだという事は一言も聞いてはいなかった。


 零は視線を長達に移して長達の顔色を確認してみたが、誰もが驚きを表していたことから、知らなかったことが分かった。


 二ノ宮がジョン・ドゥだとしたらどうしても可笑しいことがあった。


 その疑念が零の中で膨れ上がっていき、ジョンは味方なのか敵なのかも疑わしくなっていた。

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