↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】破滅フラグの悪役貴族、主人公ルートを先回りしたらヒロイン達が激しく執着してくるようになった  作者: むらくも航@6シリーズ商業化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/37

第18話 動き始める周囲

 「「「はあああああああッ!!」」」


 訓練場の中心で、四人が同時に最大火力を解き放つ。

 しかし、これはまずい。


 リーゼル、ノアルの剣技。

 セレス、コノメの魔法。

 その全てが正面からぶつかれば、訓練場の結界は吹き飛ぶ。


 それを一早く察知したアスラは、勢いよく観客席を蹴(け)った。


「まったくもー、しょうがない!」


 その瞬間──ドゴオオオオオオオオッ!!


 訓練場の中央で、巨大な衝撃音が鳴り響(ひび)いた。

 同時に砂ぼこりが巻き上がり、観客席からは様子が見えなくなる。

 観客はどよめくことしかできない。


「すげえ音したぞ!?」

「煙で見えねえ!」

「中はどうなったんだ!?」


 一方で、技を放った四人は目を見開いていた。


「「「「……ッ!」」」」


 自分たちの全力だった。

 リーゼル・コノメ・セレスは隠し玉を用意し、ノアルは覚醒した力の全てをぶつけた。

 しかし、それが止められていた。


 ──アスラひとりによって。


「君たち、ちょっとやりすぎかも」


 片腕では、二本の剣を止めている。

 ──【絶(ぜつ)無(む)】。

 全ての剣技を受け流し、勢いを殺す剣聖の業(わざ)だ。


 もう片腕では、二つの魔法を吸収した。

 ──【封(ふう)魔(ま)陣(じん)】。

 圧倒的な魔力量で魔法を押し殺し、無理やり封じる賢者の業である。


 そして、この体幹。

 剣聖・賢者クラスの業を同時に扱えるのは、武神としての心得があるからこそ。

 これが三役職を全て手にする、アスラという存在だ。


「「「「……っ」」」」


 もっとも、技を放った四人ですら、何が起きたか理解していない。

 急に技が消えたと思ったら、目の前にアスラがいたのだ。

 衝撃音も砂ぼこりも、アスラの“自作自演”である。


 すると、アスラはふっと笑う。


「結界、壊れそうだったよ」

「「「!」」」


 そこでようやく四人も気づいた。

 自分がどれほど力を付けたのかに。

 アスラに与えられた影響の大きさに。


 そんな中、アスラは目を見開く。


「──っと、やべ」


 砂ぼこりが晴れかけていたのだ。

 アスラは即座にその場を蹴った。


「あとよろしく!」


 そう言い残すと、シュバッと観客席に戻る。

 それとほぼ同時に、場内の砂ぼこりが引き始めた。


「おい、中が見えるぞ!?」

「さっきの衝撃やばくなかった!?」

「勝敗は決まったのか!?」


 中央に立っているのは、四人。

 誰も倒れていない。


 観客が困惑する中、最初に口を開いたのはコノメだった。


「これは引き分けですかね。まさか完全に相打ちとは」

「……! そうね、もうわたしも魔力が残ってないわ」


 セレスが空気を読んだ。

 それには剣チームも続く。


「わ、私も限界」

「僕も……!」


 こちらは少々ぎこちないが、お互いに認め合う。

 対決は引き分けで決着を迎えた。


 すると、割れんばかりの声援が会場を包む。


「「「うおおおおおおおおおお!」」」


 歓声はしばらく鳴りやまない。

 それぞれ高々と上げる感想が、一つの声になっているのだ。


「まじでハイレベルな戦いだったな!」

「本当にあれで一年生なのかよ!?」

「最後見れなかったのは惜しいけど!」

「そんだけすごい衝撃ってことだろ!」


 だが、中心で起きた事は誰も分かっていない。

 アスラの動きは把握できなかったようだ。


 すると、観客席のアスラは隠れて息を整える。


「ふぅ──って、あれ?」


 しかし、隣のレーニャの姿が消えていた。

 アスラが攻撃を止めた間に、どこかへ行ったらしい。

 それでも、レーニャを全面的に信頼しているアスラは、深くは追及しない。


「じゃ、任せた」


 なんとなく行動を察しながら。



◆



 第一訓練場から少し離れた場所。


「はぁ、はぁ……ハハッ!」


 中年の男が、息を切らして走っていた。

 だが、その顔には興奮が浮かんでいる。


「いたんだ! 本当に学園にいたんだ! 役職持ちの男が!」


 この国の三役職──剣聖、賢者、武神。

 その正体は長く謎に包まれていた。


 しかし、それなりの実力者である男は確信した。

 先程のリーゼル達の技は、誰かに止められたのだと。

 誰かは把握できなかったが、出来るとしたら役職クラスだ。


 つまり、学園に役職持ちが存在すると。


「“あの方”の推測は当たっていた! 早く帰って報告しなければ!」


 男は雇われの身のようだ。

 “あの方”と呼ばれる者は、ボスだろう。

 男はもう笑いが止まらない。


「はっ、どこのバカか知らねえが、あんな目立つことをやりやがって! “対決を言いふらした奴”には感謝だなあ!」


 この男は、対決の噂を聞きつけて、第一訓練場に潜り込んだ。

 情報収集力の高さから、生徒にもスパイがいるのだろう。

 半分は無駄足覚悟だったが、ビンゴだったのだ。


「へへっ、これで俺も昇格──がはっ!?」


 だが、男の体は硬直したように止まり、吐血する。

 首に何かが巻き付いたのだ。


 すると、後方から声が聞こえる。


「お呼びでしょうかぁ」

「……!?」

「私が対決を言いふらした者ですが」


 そこに立っていたのは──レーニャ。

 彼女がムチを振るい、男の首を抑えたのだ。


 対して、男は顔を青ざめさせる。


「お、お前……“冥(めい)土(ど)の案内人”!」

「うふふっ」


 男も裏世界に身を置いているのだろう。

 裏世界でレーニャを知らない者はいない。


 レーニャは小さく笑う。


「その名前は捨てました。今は可憐なメイドです」

「は、はあ?」

「――ところで」


 レーニャはじっと目を向けた。


「これは誰の差し金ですかぁ?」

「……っ!」


 レーニャは最初から分かっていた。

 あえて事を大きくすれば、バカなネズミが紛れ込むと。

 対決を宣伝したのは、“釣り針”だったのだ。


 大笑いを上げていたこの男は、レーニャの罠に引っかかった魚に過ぎない。

 

「早く言ってくださいね」

「がふっ……!?」


 レーニャはムチをきつく締める。

 敵には全く容赦(ようしゃ)がない。

 普段から、アスラの手を汚させぬように、汚れ役は自ら買って出ているのだ。


「ほら」

「かッ……!」


 今度はムチが男の急所を撃ち抜いた。

 男はもう耐えられない。


「分かった! 言う、言うから! 俺だけは見逃してくれ!」

「はい」

「あの方は、ぜ(・)――」

「……!」


 その瞬間、男の体に魔法陣が浮かぶ。

 レーニャはすぐに距離を取った。


 すると──ボガアアアッ!

 男の身体が、内側から爆発した。


「……口封じですか」


 ボスを明かさないための仕掛けだ。

 口封じと同時に、聞き出そうとする者ごと爆発させる算段だろう。

 当然、レーニャは引っ掛からないが、すぐに思考を巡らせる。


「ふぅむ」


 相手は、役職に迫ってきている。

 セレスの事故を起こした奴らとも、同一組織かもしれない。

 目的は、役職の正体を暴くことか、それとも……。


「やはり、魔法に関する者で間違いなさそうですけど」


 レーニャはそう確信した。

 同時に、相手の状況もある程度掴むことができた。


 相手は、“役職が学園にいる”と推測している。

 しかし、その正体には至っていない。

 ならば、情報戦としてはまだ五分だ。


 レーニャは薄っすら笑みを浮かべた。


「ご主人様に仇(あだ)なす者は許しませんよ」



◆



 一方、訓練場の外。


「ねえ」


 ふとセレスが口を開いた。

 対決終了後、アスラと二人で帰っていたのだ。

 そこでアスラをちらっと見る。


「あんた、まだ何か隠してない?」

「……ッ!!」


 尋ねたセレスの思惑とは──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作の書籍版が9/25発売です!
ぜひ下記の青文字からチェックしてください!
書籍紹介ページはこちら
i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。