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第4話 村

 私のそれとない努力が実を結びました。

 魔法による誘導の甲斐あってレンくんとランちゃんは迷うことなく最寄りの村にまで辿り着けそうな位置にまで来れました。

 サンワ村、ですね。

 名前の由来はかつての村長の名前、でしたね。確か。

 詳しいことは私も知らないのですが、険しい山々を越えて村を築き上げた偉大な人だそうです。

 この山々にある村は唯一ここだけになりますからね。

 旅をする者は必然的にここへと立ち寄ることになり、それが発展するきっかけにもなった貴重な休息場所なのです。

 なのですが、ね。


「……え、と、もしかして、間違えた、かな?」


「ん……間違って廃村に入ったって、わたしも思いたい、けど……あの店に付いている傷には見覚えが、ある」


 一目見て分かる異常事態でした。

 村へと辿り着いた二人は呆然と立ち尽くして中へと入ろうとしない。

 それもそのはず、目の前にある光景は見慣れた私たちも知っているサンワ村のものではなく、廃墟そのものでしたから。

 

 血の匂いが、しますね。


 家屋が無残にも壊されている、周囲も物盗りにあったかのように荒れている。

 そのような状況下でランちゃんが見覚えのあると言っていた建物にふらふらと近寄っていきました。

 信じられない……いや、信じたくないのでしょう。

 見覚えのあるものが変わり果てているというのは辛いものですからね。


「ねぇ、レン……ここ……先生が、たまに連れてきてくれたわよね? ほんの何回か……数えるくらいだけど、でもわたし覚えてる。このお店のこの柱に付けられた傷は、お店の人が……死んじゃった子供が成長のたびに身長を刻んでた傷だって、教えて、くれて」


 呆然と呟く。

 その姿にあるのは戸惑い。

 無理もないでしょうね。

 突然このような状況になっているのですから、感情が追い付かないのでしょうね。

 それから、遅れるように目の端から零れ落ちた涙がランちゃんの頬を伝う。


「なん、で? どうして……こんなことに」


「……本当に、何で、なの?」


 ランちゃんを視界に収めたままレンくんも呆然と呟く。

 ただ、壊れた村の様子を見て……まるで、機械のように見渡して……

 理解がまだ追い付いていないのでしょうね。

 何故このようなことになっているのか?


 実際何でなのでしょうね?


 レンくんとランちゃんが辺りの様子を調べていくのに付いて行きながら、私も周囲の状況を観察する。

 これは、私も知らないことでした。

 こんなことになっていると知っていれば二人をここへは案内しませんでしたからね。

 この村の人たちには、レンくんもランちゃんも良くして貰ったのですが……非常に残念です。

 このような光景は……思い出の場所が荒らされて廃墟になっているなどというものは二人が経験するには早過ぎる。

 まだ、希望にあふれた旅路を満喫して欲しかったのですが……

 しかし……一見、ただの廃墟のように見えますけれど少し奇妙ですね。

 血痕が飛び散っているのに、死体が見つからない。

 まるで誰かが持ち去っていったかのように。

 そして、建物は壊されて廃墟の様相を呈しているのですが、これも妙なのですよ。

 壊されていることには壊されているのですが……昨日今日のことではありませんね、これは。

 崩れている壁の断面が痛んでいる。

 雨風に晒され、砂が付着し、断面が丸くなっていて……壊れたのをあえて放置したかのような。

 それでいて、血の跡はこんなにも新しい。

 事が起こってすぐだというのを示している。

 このちぐはぐな状況は一体?

 そう考えているときでした。

 前方、大きな家からの物音。

 崩れてすぐだと推察することの出来る瓦礫の下からはい出そうとしている音が。



「う……う、ぅ」



「っ、レンっ!あそこに誰か」


「うんっ、生きてるっ!誰かいるっ!大丈夫ですかぁっ!?」


 呻き声を聞いて二人が二人は一目散に駆け寄っていきました。

 あの家には見覚えがあります。

 あの質素で控えめながらも広さは他の建物を抜いて大きく、威厳を示した形の木造の家……あれは村長さんのお宅ですね。


「う、うぐ、ぅぅ」


「待ってて!いま、私たちが、助けるから!生きて!諦めないで!」


「くっ、このぉっ!邪魔だぁっ!」


 駆け寄るや否や必死に瓦礫を押しのけ、出てくる血塗れの初老の男性。

 やはり村長さんですね。

 レンくんとランちゃんによって助け起こされて村長さんは、自分を押し付ける瓦礫がなくなりその場で動こうとするも力が入らず、ただ緩慢な仕草でレンくんとランちゃんを見上げて……相好を崩した。


「あ、あなた、がたは……おぉ、レイフォルト、さんのとこ、ろの」


「喋らないで!今すぐ手当てをするからっ!助けるから」


「っ……僕、この人、知ってる。覚えてる……村長さん、村長さんでしょ!」


「は、い……サンワ村の、村長、ペリ、オ……」


 村長さん……ペリオさんの口からコポリと血の混じった泡が吹き出る、そして湿り気を帯びた今にも死んでしまいそうな咳をする。


 これは……もう無理でしょうね。


 致命傷であると一目で分かりました。

 瓦礫に圧し潰されて、当たり所が悪かったのでしょう。

 身体からは幾つもの木片が飛び出すように突き刺さっていて、出血の量も危険な域だと見るだけで分かります。

 もうあまり目が見えてもいないようで、こちらを見ていながらも焦点が合っていない様子が見てとれました。

 子供たちへの教育論で話し込んだりするくらいの、良い方だったのですが。

 残念ですね。

 私はもう諦めてしまいましたが、ランちゃんはまだ諦めきれてない様子。

 必死に傷口の手当てを行っていました。

 刺さっている木片を抜いて、身体の洗浄をして……しかし、その手は他ならぬペリオさんに掴まれて止められる。


「よい、のです……私はもう、長くない……あぁ、ここで、あなたがたに会えるまで、生きていられて、本当に、幸運でした」


「よくない……よくないわよっ!なんで、そんな諦めるのよっ!治すって、手当てするって……頑張るからっ!大人しく治療されてよっ」


 悲しみを含んだ叫びに、ペリオさんが静かに首を横に振る。

 自分が死ぬと、分かっているのでしょうね。

 ボロボロのペリオさんに腕を掴まれて止められているからこそ、ランちゃんもその腕を振りほどくことが出来ないでいる。

 ただでさえボロボロなのに、乱暴に振り払ったらもっと傷つくかもしれないからと「離して」と言いながらも、ただ掴まれるまま。


「村長……さん」


「お二人、とも……大きく、なられましたなぁ……このような、ことを頼むのは、大変、心苦しいのです、が」


「言って、言ってよ!わたしとレンで何でもっ!何でもやるからっ、だから」


 泣きそうな顔のランちゃんと、人が死ぬ、その姿に呆然と立ちすくむレンくん。

 二人を、見据えて……よく見えないながらも顔を向けて村長さんは笑顔で言いました。


「子供、たちを……助けて、あげ……て」


 ランちゃんの腕を掴んでいた手が、力なく垂れ下がる。

 まるで眠るかのように、静かに瞼が降りる。


「子供、たちを?」


 言われたことを冷静に呟いたのはレンくんでした。

 ランちゃんはただ呆然と、血の跡が残っている自分の腕を見つめて。



「…………死ん、だ?しん、じゃった、の?」


 動かない。

 いや、動けないのでしょう。

 あまりのことに、処理が追い付いていない。

 喚きもしなければ、泣きもしない。

 さっきまでとは一転してとても静かに、ただ状況が理解できないように呆然と。

ただ、そんなランちゃんを見ているからか、レン君が落ち着きを取り戻すのは早かった。

力なく横たわる村長さんに、そっと触れて状況を確認する。


「……ううん、まだ脈がある。死んでない。でも」


「でも……何よ?」


「息をしてないんだ。身体も、体温が低くなってる気がする」


「っ、そ、それじゃ……このままじゃ、死んじゃうって言うの?」


「うん」


 人の死を告げるには思いのほか冷静な声でした。

 まぁ、そうでしょうね。

私の見立てでも、これは助からない。

 確かに魔法には治癒の魔法もある。身体の傷を癒すこともできる。

 しかし、これはもう……そのような次元の話ではない。

 彼の身体にはもう生命力がない。

 まだ心臓が鼓動しているのは奇跡と言ってもいいでしょう。

 私ならきっと、このまま見送る選択を取ることでしょうね。

 しかし……本来ならどうしようもないこの状況下で、実はたった一つだけ方法があったりもするのです。

 それは……レンくんには分かっているみたいですね。

 だから、冷静だったのでしょう。

 出来れば、使って欲しくはないのですが……

 それでも使うと二人が決めたのならば止めることも出来ない。

 私が見守っている中でレンくんが一つの瓶を取り出しました。


「これを使おう。これなら、もしかしたら……助かるかもしれない」


「っ!レン、それって」


「うん、先生がもしもの時はこれを使いなさいっていってたもの」


 でしょうね。

 こうなるとは思っていました。

 それであればこの状況でもどうにかなると私は断言できる。

 あれは、万が一のために、旅の途中で二人が何らかの危険に陥った時のことを考えて一度はそういった窮地を脱することが出来るようにと私が貴重な素材から作った霊薬ですから。

 治癒魔法も効かない負傷を治すために生命力を一時的に高める効能があるので、今の状況にはうってつけともいえるでしょう。

 出来れば、自分たちのためにとっておいて欲しかったのですが……


「……でも、レン。それは、先生が一回だけですよって……もう私は助けることが出来ないからって持たせてくれたものよね?」


「……なら、ランは村長さんをこのままにして、見殺しにしても」


「駄目よ!いいわけないわっ!助けられるのに助けないなんて、そんなの……ん、そう、ね。そうよね。いくら先生が持たせてくれた大事なものでも命の方が大事よね。使いましょ、レン」


「うん、村長さんを助けよう」


 やはり、こうなりますよね。

 成り行きを見守って小さく頷く。

 こうなるだろうとは思っていました。

 一つしかない霊薬、それを用いて村長さんの治療を試みる。

 口に瓶を押し付け、琥珀色の液体が村長さんの口の中へと流し込まれる。

 その変化は劇的でした。

 淡い光に包まれた村長さんの身体は傷が塞がり、呼吸も安定し始め、血色も良くなっていく。

 これでもう村長さんは安心でしょう。

 確実に助かったと言える。

 まぁ、レンくんとランちゃんに持たせた保険はここでなくなってしまいましたけどね。

 あの薬は、腰を据えて作らなければ出来ませんからね。

 そう簡単に作れるものではない。

 少なくとも年単位で時間がかかるというか……これから二人を見守って後ろを付いていく私に用意の出来るものではないのですよね。


「これで……いいのかな?」


「そうね……多分、もう死ぬことはないと思うわよ。けど、今のうちに刺さった木を全部抜いて身体も綺麗にしないと」


 ランちゃんがまだ光を帯びるその身体から、抜き切れてなかった木片を取り除いていき再度洗浄を施していく。

 木片を抜いた跡は霊薬の効果でみるみる塞がっていき、村長さんの無事な身体が姿を現す。

 これで大丈夫ですね。

 身体も治りきり光も収まった村長さんの身体をランちゃんが診察する。

 その間にレンくんは村長さんを休ませてあげられそうな場所を探しに廃屋の中へと踏み入っていく。

 薬で傷は完全に塞がって血色がよくなったとはいえ不安なようで、ランちゃんは村長さんの身体に治癒魔法を施していました。


「ん……これくらいで、いいかしら? いい、わよね?」


 ランちゃんは、こういう魔法は苦手ですからね。

 確信が持てないのでしょう。

 横たわる村長さんの身体にちょろちょろと治癒魔法が掛けられていく。

 治療のため、というよりはランちゃんが安心をするためというのが正しいのかもしれませんね。

 ふふ、ランちゃんったら心配性なんですから。

 少しばかり心が温かくなる。

 これは二人の優しさの顕れのようなものですからね。


 考えようによっては、これでよかったのかもしれませんね。


 二人の安全のために用意した薬がここで消費されてしまったのは残念ですが……ここで村長さんを見捨てていれば二人はそれだけ気に病んだことでしょう。

 心の傷、になっていたことでしょうね。

 そうなれば……気になることが出来たせいで行動しているときも満足に集中することが出来ずに、本来なら問題ないはずのことが致命的なことになってしまったりもする。

 その点で考えればここで使ってしまって正解だったと言えるでしょう。 

 私の用意した薬はしっかりと二人を守ってくれたわけです。

 二人の、心をね。


「ラン、あそこの家ならまだ大丈夫そうだよ。村長さんを移動させよう」


「そう、分かったわ。連れて行きましょ」


 そうこうしている内にレンくんも村長さんが休めそうな場所を見つけたみたいで、二人で村長さんの身体を支えて移動を開始する。

 比較的無事に見えるあの家に向かうみたいですね。

 移動する二人に後ろからしっかりと付いて行く。

 と、二人を見守っているとそこで、私の索敵に引っかかる魔力反応が現れました。

 とても弱い、注意をしなければ分からないほどの微弱な反応。

 いったい誰でしょうか?

 そちらの方を見てみると、厳めしい顔をした男性が驚愕の表情で辺りを見回していた。


「なっ、こ、これは!? っ、あれは……村長っ!」


 真っ直ぐこちらへとやってきました。


「ば、馬鹿なっ!村長は……村は、いったい!?遅かった、ってのか?」


「えと、あなたは?」


 突然現れた男を胡散臭そうに睨み付けるランちゃんに変わってレンくんが問う。

 ただまぁ、無理もないと言える格好でした。

 全体的に薄汚れていますからね。

 服はしっかりと着てはいるのですが、汚く、擦り切れていて、とても村に住んでいた人とは思えない身なり。

 とりあえず臭いがレンくんとランちゃんの方に届かないように私がこっそりと魔法を使って何とかしましたが……この方は村の方ではありませんね。

 認識疎外魔法を使っているので、これ幸いとその男性を様々な角度から眺めていく

 何やら、最近に見た覚えのある身なりですけど……ふむ。


「俺はタルムって言うんだ。その……この村出身の狩人でな。いつもは獲物を狩るためにこの村から離れた小屋に住んで仕事してるわけなんだが」


「狩人さん?なら、この村で何が起こったのかご存じありませんか?」


「……というか、あんた本当に狩人なの?」


 ランちゃんの目は懐疑的でした。

 その身体を上から下まで視線を這わせて、胡散臭そうに。

 その視線にタルムさんはおどけた様子で肩を竦めた。


「あぁ、服装については勘弁してくれよ?男一人で暮らしてるとな、どうしてもそのあたり気が回らなくなってな……それに一人で暮らしてるもんだから、そのあたりを気にする奴も居ないもんでな」


「……そう」


 明らかに納得していない様子のランちゃんに「見苦しくてごめんな」と軽く謝って、レンくんの方へと向き直る。

 その目は真剣みを帯びたものでした。


「あんた……今、俺にこの村で何が起こったのかって言ったよな?なら、あんたらも知らないわけか」


「ええ、僕たちが来たときにはもう、この状態で……」


 周囲を見渡しながらレンくんが言う。

 その言葉に、彼は拳を握り、きつく目を閉じた。


 ふむ……どうやら、この状況には何か思うことがあるみたいですね。


 演技には思えない、その姿だけは納得できるものですが、しかし。


「こうしちゃ、いられねぇっ!」


「待って!どこへ?」


「決まってんだろうがっ!こんなことをした、奴らのところにだっ!」


「こんなことをした、奴ら?」


 駆けだそうとしたタルムさんをレンくんが呼び止めましたが、はて?

 何故このような状況になったのかは分からないと彼自身が言っていたはずですが?

 私の感じている疑問はランちゃんも同じみたいで、その言葉に眉を顰めていました。


「さっき、知らないって言わなかった?」


「ああ、言ったっ!何があったかは分からねぇし、本当のことは分からねぇっ!でも、だ。こんなことになる心当たりがある、犯人の目星があるっ」


「それは、一体?」


「……ああ、それは、な」


 タルムさんがこちらに向き直る。

 そして、レンくんとランちゃんに見せつけるかのように山の一角を指し示して吐き捨てるように言った。


「ゴブリンどもだ。こっちの方に、ゴブリンどもの巣穴があるっ」


「ゴブリン?でも、ゴブリンにこんなことをするほどの力は……っ、まさかっ!」


 ゴブリンスタンピード。

 繁殖をしすぎたゴブリンが巣穴から溢れ出て人々を襲うようになる。

 それが起きたとレンくんは思い至ったみたいでした。

 確かに、ゴブリンというのは本来そう強くはない魔物。

 一対一であれば特に訓練を受けていなくとも武装をした成人男性であれば容易く倒せるような存在ですからね。

 ふむ、それなら私がここに来るまでに追い払ったウルフの数がやたらと多かったことにも一応の説明がつきますか。

 ゴブリンに縄張りを追われて、山を追われたのでしょう。

 ただ、それにしても妙ではあるのですが。


「そうだっ、そういうことだっ!俺は許さねぇ……ゴブリンどもを同じ目にあわせてやるっ!村の敵を取ってやるんだーっ!」


「ちょっと、待っ」


 レンくんが声を掛ける。

 がしかし、タルムさんはもう我慢ならない様子で駆けていきました。

 本当にスタンピードなのだとしたら、一人で行っても犬死するだけだと思うのですが。

 迷いのない足取りで駆けて行って、あっという間にその姿が見えなくなる。

 それを見て、レンくんとランちゃんが顔を見合わせました。


「どうする?ラン」


「ん……そう、ね。私は村長さんの頼みの方を何とかしてあげたいけれど」


「子供たち、かぁ……でもなぁ」


 チラリとその肩で支えている村長さんを二人で見る。

 命は助かりました。

 死ぬ危険はない。

 そうは言っても、ただそれだけ。

 意識を失ったまま、まだまだ目を覚ましそうにはありません。

 今まで倒れていたぶん、無理やり起こすのも気が引ける様子で、どうすればいいか分からない様子で見つめています。


「ま、そうよね。村長さんに話を聞かないことには何ともならないものね」


「うん……その、言われた通りに子供たちを守るにしてもさ。どういうことかは分からないし。うぅん、子供たちのことを考えるんだったら無理やりにでも起こした方がいいんだろうけど」


「それも、ね……今の村長さんには休息が必要だもの」


「だよね」


 二人が家屋に向かって歩き出す。

 先程レンくんが見つけてきた、何とか休めそうな家屋に向かって。

 村長さんの身体の状態を考慮して、二人はゆっくりと慎重に歩を進めていました。

 それは、考える時間を確保する意味もあるようで……二人して思案顔のまま少し歩いて、やがて口を開きました。


「村長さんの安全を確保したら、あっちに行ってさっさと連れ帰ってきましょ。少しくらいなら、時間を使っても村長さんの頼み事にもあまり影響はないはずだもの」


「……そう、だね。村長さんも倒れる直前に言ったんだし、子供たちのところに行くのにも時間がかかることは分かってるはずだし、ね」


「ええ、助けて、戻ってきたら村長さんを起こしましょう。少し寝れば回復もしてるはずだもの」


 方針を決めて、少し軽くなった足取りで壊れかけた家屋へと向かっていく。

 まぁ、頼みごとに時間がかかるのは仕方のないことですからね。

 子供たちを守って欲しい、それが村長さんの願いでしたがそれだけでは動けませんからね。

 その頼みを遂行するのにも情報が必要なのです。

 確実な情報が。

 そのためには回復を待ち、村長さんから話を聞くのが一番早い方法でしょう。

 闇雲に探し回ったところで時間を浪費するだけですからね。

 とはいえ、ふむ。


 あのタルムさんを助けに行くのですか……


 まぁ、放っといたらほぼ確実に死ぬのに放置するのは気が引けるのは分かりますけどね。

 あの人、明らかに山賊だったのですが。

 ゴブリン、山賊、奇妙な村の荒れ具合……どうも、助けてそれで終わりとは思えない状況ではあるのですが、ね。

 いざという時は私が何とかしますか。

 村長さんの休む家に結界を掛けてレンくんとランちゃんが村を出る。

 向かう先は当然、ゴブリンが居ると言っていた洞窟の方向でした。


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