02 まじないじゃないよ のろいだよ
前回のあらすじ
魔王が死ぬ間際に呪いをかけたっぽ
時は流れ、とある国の大聖堂にて、再び勇者召喚の儀式が執り行われていた。
聖歌隊の歌声が響く中、聖堂中央に描かれた召喚陣がまばゆい光りを放つ。
「成功だ・・・」
「ついに勇者が・・・」
歌声がどよめきに変じていく。光の中から現れたのは、うずくまる一人の男。
筋骨隆々、上背も十分あり、頑強な戦士を思わせる体躯だ。
「勇者どの、よくぞ参られた」
大司教の呼びかけに、勇者は立ち上がる。
「夢・・・ではなかったのですね。ここは戦乙女様のおっしゃっていた・・・」
「左様、勇者どのの居られた世界とは異なる、剣と魔法と呪いの世界。どうか我らに力を貸して頂きたい」
異世界から戦士を呼び込む戦乙女により、召喚勇者には事前に説明がなされているため、混乱が起きることは少ない。
大司教は率直に助力を乞うと、かつて勇者ヤマダから伝授され、代々伝わる懇願の礼儀、すなわちDOGEZAを以って相対する。
列席する各国の重鎮や聖教幹部、聖歌隊に至るまで、場の全員によるDOGEZAである。これには勇者も驚いた。
「そんな、土下座なんてやめてください」
「勇者どの、DOGEZA程度では足りぬと!? ぬぬぬ・・・ならば秘伝中の秘伝、YAKI-DOGEZAをお目にかけましょう。どうかワシひとりのYAKI-DOGEZAにてお許しいただきたいが、足りぬとあらばこの場の全員で!」
「いやいやいや、いいから! 戦乙女様から事情は聞いていますから!手伝います!ボクの力を貸しますから!」
慌てる大司教をなだめる召喚勇者。内心、よくあるのと逆だよね、なんて戦乙女にボヤいてしまう。
それからなんやかんやあって、応接間に通され、勇者と大司教、軍服の偉そうな人で自己紹介と現状の確認、これからについて話し合うことになった。
お茶を出してくれたのはメイドさんではなく、優し気な目をした修道士のおっちゃんだった。大聖堂は女人禁制にでもなっているのだろうか、などと益体も無いことを考えつつ席につく勇者。
「では改めて。よくぞ参られた、勇者どのよ。ワシは聖教の大司教、グロリオ12世じゃ。勇者どの、名をお聞かせ願えるか?」
「マコトと呼んでください。こうして戦乙女様から立派な体をいただきましたが、本来はただの凡人です」
軍服の男も口を開く。
「勇者マコトどのか! ドラゴンと相撲を取れそうな、いいカラダではないか! 俺はセントリオ王国の将軍、ビクトールだ! よろしく頼む!」
がははと嗤うビクトールの大声は、まるで獅子の咆哮だ。豪快だが裏のあるような人物には見えない。
マコトは苦笑を浮かべつつ、信用して良さそうだと判断する。
「こちらこそよろしくお願いします、グロリオ殿にビクトール殿。それで、先ほど話のあった『呪い』とは、何なのでしょう。ボクは戦乙女様からは、世界を脅かす魔王を倒し、呪いを解き放つように言われましたが、どんな『呪い』なのかは聞いていないのです」
勇者の言葉に大司教と将軍は顔を見合わせ、大司教が口を開く。
「左様でしたか。ではお話ししましょう。この世界にかけられた恐ろしい『呪い』とは・・・」
立ち上がり、うつむく大司教の纏う雰囲気が重々しくなる。サッと陰が差したようだ。実際、天窓のカーテンが黒子隊によって閉められている。
更にどこからともなくドラムロールがドゥルルルルと鳴り響く。これも黒子隊の仕事だ。
続いてジャン!と鳴るシンバル。当然これも黒子隊が(ry
それに合わせて正面を向き、目を見開く大司教。
「世界中の人間が、オッサンになってしまう呪いなのですじゃ!!!」
「・・・は?」
勇者はそれ以上何も言えず固まった。
窓から聞こえる小鳥の声が、やけに大きく聞こえた。
人類オッサン計画