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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~直樹(帰還者)編第三章~

「準備はいいか?二人とも。」

「お願いします。じゃ、お父さん。お先に。」

 

 アルドラントは低空飛行になった瞬間、飛び降りた。俺の降下ポイントはもう少し先だったが、それでも関係なかった。人が襲われていたのだ。全身を鎧で固めた兵士らしき奴ら4名が市民を襲っていたのだ。それを見過ごすわけにはいかなかった。

 襲われていた市民がやっとの思いで逃げたその目の前に着地してしまい、市民はしりもちをつき、動けなくなってしまった。

 が、背後にいた彼らの注意はこちらに向いたのでその市民が襲われる可能性は排除できたのでほっとしてしまった。


 「貴様は何者だ?」

 「…話しかけるのは危険じゃないかな?普通の人間は空から落ちてきて平然とキミたちと会話しない。それに…指名手配犯の手配書に載ってると思うけど。」


 そのタイミングでやっと剣を抜いた。だけど、遅い。

 俺は黄金の剣を1本、白銀の鏡を3つ、虹色の勾玉を2つ召喚した。

 その件を握りつつ、勾玉から風の槍を放った。槍が直撃し、胸に大穴を開けた隊長格はあいた大穴に手を当てた状態で倒れた。こちらが敵対勢力と感じた残りはすぐこちらを攻撃しようとしたが、召喚した鏡に攻撃を防がれていた。


 「なんだ?この鏡は!」

 「邪魔くさいな!なんとかできないのか?」

 「叩き落してやる!」

 「おい!あいつから目を離すな!うわぁぁぁぁ!」


 断末魔の悲鳴を上げた兵士は俺の魔法ではるか彼方、上空に打ち上げられ、ひもなしバンジージャンプの状態でそのまま地面に叩き付けられた。その有様を見たひとりが半狂乱になってこっちに突撃してきた。そいつには突然地面から生えた土の槍が襲ってきた。ほとんど抵抗らしい抵抗ができず、死んでいった仲間を見た残り1人は一目散に逃げようとしたが、俺はその逃げ道を塞ぎ、右肩から袈裟斬りで致命傷を与えた。


 「こんなもんか…ん?」


 坂の上から見慣れた服装の男がこちらに向かってきていた。しかも、俺に用があるようでまっすぐ向かってくる。一応、剣を残し、他の魔法具は送還した。あいつに『クサナギ』と名付けた剣以外の『ヤタ』という鏡、『ヤサカニ』という勾玉の真髄を見破られたくはなかった。こいつが見破られてしまうと奥の手も予測できてしまう。だから、見せるわけにはいかなかった。


「…よかったのか?こいつらと一緒なら、勝機がもっとあっただろ。」

「そうだろうな。だけど、俺はあいにく、お前を捕えに来たわけじゃない。」


 そう言い終わる前に俺は炎の螺旋を4本。4方向からカーブを描くように放った。だが、奴は左手を左から下に、右手を右から上に移動しつつ、それぞれ2個の水球を放ち、それを無力化した。


 「許してもらおうなんてこれっぽっちも考えていない。殺したいなら、時間はまたあとでやる。今は野々村が危ないんだ。」

 

 俺は詠唱をやめ、勾玉の活動を停止させた。なぜ野々村の名前が出る?一番おかしいのはこいつがここに平然といることだ。こんな火災が起きていれば、こいつはこの国の重鎮の警護に当たるはず。なのに、ここにいて、野々村の話をする。単純な話だ。俺たちが来る前にここを破壊し始めていたのだろう。


 「…この火災はお前らの仕業か?」

 「…どうしても貴族お抱えの騎士団に邪魔されるわけにはいかなかったからな。」

 「これ以上罪を増やすというなら、お前は生かしておけない。」

 「…ドラゴンがいるなら、心配はしてないが、南の正門を破壊してくれたか?そこさえ壊れてくれたら、どの方角にも逃げられるからな。北の方角は生息している魔物が強いし、あちらは貴族ばかりが住んでいるだろうから、誰も逃げないだろうからさ。」


 この会話で俺は気づいた。こいつがギルドに情報を流していたのだと。


 「…そうか、この計画はお前が立てたんだな…お前、この国をどうするつもりだ?」

 「立て直す。いろんな人の力を借りてな。だが、お前らの力は借りたくないんだ。」

 「…独裁者になるつもりか?」

 「ああ。でも、国民に贖罪をするためにだけどな。」

 「信じないぞ。」

 「そうしてほしい。さっきの話だ。ここから西に向かうと監視塔がある。そこから地下道に向えるんだ。きっと、瀬戸はそこから野々村を助け出した杉野を挟み撃ちにするつもりだ。俺を信じて向ってくれるか?」


 うそかもしれないとは思った。それでも、この展開がもし実現すれば野々村と杉野はあいつに殺される。そうさせないためにもこの情報を生かすことのほうがこいつとやり合うことよりも優先されるべきだ。そう考えた俺は背中を向けた。


 「…いいだろう。だけど、忘れんなよ。必ずお前は俺が裁く。」

 「ああ。そのときは…きっとすぐ来るさ。」


 俺はすぐ西の方角に駆け出して行った。確かにアイツの言ったとおり、西側に巨大な塔があった。そのカギは既に開いており、侵入も容易だった。中に警備兵はいないようでその地下にあった地下道へ繋がる道はご丁寧に足跡が残されていた。


 「…あの野郎の思うつぼか…ったく。乗るつもりはなかったが、いいだろう。」


 向かおうとした時、アルドから通信が入った。


 「どうした?」

 「お父さん?ごめん。ここでやらなきゃいけないことができた。一緒には帰れそうにないんだ。だから、あの竜騎士の方と一緒に帰ってくれないかな?」

 「わかった…だが、無茶だけはするなよ?」

 「ああ。お母さんによろしく。」


 それだけ伝え、通信は切れた。俺はなんであいつが残ると言ったのかを考えることなく、通信機をしまい、地下道に下りて行った。


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