~直樹(帰還者)編第三章~
俺は野々村京子を助けに行くため、俺の子どもたちに魔法を教えることにした。
初級クラスの魔法ならば、護身術にもなる。
幸い、レベッカやアリサは魔法が全く使えないわけではなかった。アルドラントはなぜか魔法を使おうとはしなかったが、十分使えるようだった。それにこいつの双剣はこの村の外に出ても通用するレベルだった。
「こら!アルドにぃ!またやんないつもり?」
「いやだって…アリサ。頼むから助けてくれよ。」
アリサは笑って2人を止めなかった。それでも振り払うアルド。レベッカは得意な魔法である風魔法で加速し、アルドを捕まえようとするが、軽快な動きでそれを完ぺきに回避していた。レベッカは風、氷、地、水魔法の順で得意だった。アリサは聖、闇の二つ。彼女たちには二つ以上の魔法を組み合わせることを学ばせていた。そのため、単純技では捕まえられないことにいら立ったレベッカは複合魔法を使おうとしていた。それに気づいたアリサは魔法を打ち消す闇魔法である『ディスペル』を使おうとしたが、構築が間に合いそうになかった。俺は衝撃波でアルドを飛ばそうとしたが、アルドの口元が吊りあがったのを見逃さなかった。直後、巻き起こる過重力場とそれを押しつぶすように組まれた巨大な氷塊。確実にオーバーキルだ。しかし、それが収まった場所にアルドは無傷で立っていた。
「レベッカ。詠唱が遅い。術式に細工を施せるじゃないか。それと、アリサ。『ディスペル』は即時発動させるためにも符の形にするべきだ。お母さんにすぐ習え。ったく…こうなるってわかっていたから、魔法訓練には参加しなかったんだけど。」
驚いている俺を見た。
「お父さんは『マスターアルケミスト』って知ってるでしょ?王国では禁忌と言われた存在。実は『魔剣』を超える武器を作れるから、王国の脅威に簡単になれるんだ。だから、たった一人の存在を残してみんな処刑された。『魔女』としてね。」
「…その生き残りと言いたいのか?」
「実際は処刑されたんだ。お父さんと一緒に。でも、とある友人が逃がしてくれてね。で、この村に奴隷としてやってきたんだ。まさか、アリサが来るとは思わなかったけど。あの男は死にかけた少年少女に劇薬を試すような奴だった。だから、魔法を使っていたんだ。あの日、本当は気配を隠す魔法が使われている部屋にいたんだ。でも、なぜか、気配を隠すことはできなかった。全部、この力のおかげ、いや、小さいころに学んだ魔法の知識のおかげさ。僕に使えない魔法はない。お父さんが使う魔法も大体使える。魔力もお父さんみたいに無尽蔵ではないけど、レベッカとアリサが持っている分を足したぐらいはあるから。」
アルドはそう言って苦笑した。
「まあ…僕が奴隷になって逃げていたことは感づかれていたみたいだけどね。でしょ?その木陰でこちらをうかがっている人。」
そうアルドがそう言うと木陰から雑貨屋のマーサが現れた。
「ああ。その距離だと僕はキミを殺せる。近づくこともできないからさ、その果物ナイフをしまってほしいな。」
「アルド坊ちゃん。あんた、アリサちゃんをどうするつもりだい?」
「…アリサは僕の妹だ。家族を殺そうとする兄弟はいないだろ?それに…許婚という身分はなくなったんだ。幼馴染のほうが心配だから、そっちに集中するよ。」
俺は命を狙われているのにもかかわらず、こうも冷静なアルドが心配になった。
「…マーサのことを知っていたのか?」
「元俺の家の使用人。スパイだった。でも、それを責めるつもりはないんだ。お母さんも責めるのは筋違いだって言っていたからな。もっと問題なのは…まだ本来は処刑されるような奴がのうのうと生きていることさ。そいつは必ず殺す。それが俺のやらないといけないことだ。」
「そいつは今、どこにいるんだ?」
「王国の教会。さすがについてこないでくれよ。」
「行かないさ。だが、数日中にはここを発つ。一緒に来るか?」
「…錯乱目的に僕を利用する魂胆か。でも、それに乗ろうかな?どの道、今の僕にはあの国を脅かすような力は振れないからね。」
「なら、こいつを渡しておく。なにかあったら、こっちに連絡するといい。」
そう言って俺が作った通信機を渡した時、村の住人が俺を呼びに来た。
「飛竜がこの村に向かってきている」と。




