私と兄と夢の話
「我敵機と遭遇せり!繰り返す、我敵機と遭遇せり!救援を!!!」
通信機からは悲痛な叫びが聞こえる。何度も、何度も援軍を求める声が繰り返される。ここは前線。それも、昨日来た新兵が既に誰も居なくなるようなレベルの、だ。
「救援を頼む!!!救え……」
声が途切れ、この声の主が少なくとも無事ではないことは、この場に居る兵たちにもはっきり理解できるだろう。彼は良き友人だった。会ったことも関わりも無かったが、きっとそうだろう。
彼は、狭く暗い、このコクピットでその生に終止符を打たれたのだ。せめてそう思わなければ、誰も報われないだろう。
「にい……隊長、如何なさいますか?」
私は、上官に、……兄に問い掛ける。兄はきっと、救援に向かうと言うのだろう。ほんの少しだけ、怖い、と思う自分がいる。
「勿論、救援に向かうさ。お前たちもわかってるだろう?」
上官になっても、変わることのない兄の声。兄は英雄と呼ばれるようになってからもずっとこうだ。そんな兄を思うと、少しだけ笑ってしまう。
「な、お前、何笑ってるんだ!?おかしいことなんて言ってないぞ!」
少しだけむきになる様子も昔から変わらない。ただ、そんな様子を見て、隊の兵たちも口々に兄をからかう。それに少し勇気付けられたと感じた私が居た。
「皆さん……隊長のことをからかっていないで、真面目にしてください。それに隊長。行くなら行くと、私たちに命令を。征って彼を助けろと、その一言を。」
尻を叩かないといけないのも、昔から変わらない。こんな兄だからこそ、私は付いていくと決めたのだから、変わらないことに安堵もしてしまう。
「……そうだな。皆、征くぞ。助けを求める人の元に。」
応、了解、様々な言葉が皆から発せられる。スロットルをゆっくりと前へと押し倒す。すると機体はバーニアを吹かし、ゆっくりと前へ進んでいく。
「という夢を見たのですけれど、どうです?」
「駄目です。というか、その手にある納豆を今すぐどかしなさい。お兄ちゃんは断固として抗議します。」
兄は納豆が嫌いらしい。せっかく私が練ってあげたにも関わらず、食べるのを嫌がっている。
「私が練った物が食べられないのか?」
「そうじゃないから!起きがけに練った納豆を部屋に持ってくる奴がどこにいる!!!」
目を見開いて怒る兄を見て、少しだけ驚き、しかし負けるのも癪なので言い返す言葉を考えていると、そのまま兄はこう続ける。
「取り敢えず、着替えるから部屋から出てけ。」
「兄さんは「いやーんえっち」と言いたいのだと思っていた。」
言葉のドッジボールを交わし、早々に部屋を退散することにする。これ以上は流石に危険だ。
ねぇ、兄さん。どうして、私を嫌わないのですか?
(個人的に)連続投稿。描写をどうすればいいのかが難しくて悩む今日此頃。




